【国際】食品、建設、アパレル企業は奴隷労働との関連性強い。RepRisk特別報告書 2016/05/09 最新ニュース

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 ESGリスクコンサルティング世界大手のRepRisk(本社はスイス・チューリヒ)は4月20日、イギリスの「現代奴隷法」制定1周年を機に、強制労働に関する報告書「RepRisk Special Report : Forced Labor」を発表した。「奴隷労働」とも呼ばれるこの労働慣行について、違法な実態として問題となるケースが多いのは、国別ではタイ、ブラジル、米国、カタール、中国。業界別では飲食料、消費財、建設・建築資材、ハードウェア機器、小売業だという内容をまとめた。とりわけ、移民労働者、先住民、水産漁業、パームオイル、密猟などの分野で強制労働が多いという。

 今回の報告書では、経済界やNGOに対してあらためて強制労働の実態を伝えるとともに対応を検討するよう促している。2014年に国際労働機関(ILO)の調査によると、世界中すべての地域で合計で2,100万人の強制労働者がおり、その約半数が移民労働者。約90%は企業の経済活動によって搾取され、強制労働を通して違法に得た収益は年間1,500億米ドルに相当するという。収益の3分の1はアジア・太平洋地域で生まれているが、およそ同額がEUを含む先進国の経済活動とも関連しているという。

 RepRiskは報告書の中で、強制労働に間接的にも関連している企業名を具体的に上げ、強い対応を求めている。食品・衣料品分野では、ウォルマート(米国)、カーギル(米国)、ネスレ(スイス)、ハーシー(米国)、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(米国)と米国企業が多く、サステナビリティ領域で著名なウォルマートやネスレもさらなる対応が必要であることが明らかにされた。衣料品分野のトップ5は、ウォルマート(米国)、GAP(米国)、ZARAを運営するインディテックス(スペイン)、ZARA International(スペイン)、H&M(スウェーデン)と、衣料品生産量そのものが多い世界大手が名を連ねた。建設分野では、国際サッカー連盟(スイス)、MRVエンゲンハリア(ブラジル)、BK Gulf(アラブ首長国連邦)、現代建設(韓国)、ヴァンシ(フランス)が挙げられた。

 これらの企業が直面している事態の正しい理解のため、今回の報告書では事例の詳細報告が共有された。例えば、食料・飲料業界では、タイの水産業には、カンボジアやミャンマーからの移民労働者として毎年数千人が仕事を求めて来ており、サプライチェーン全体で人身売買・強制労働を基にした売上は年間80億米ドル(約8,600億円)に達するという。移民労働者は、ブローカーを通して仕事を斡旋され、船長の下で奴隷のように働かされており、拷問、レイプ、暴行、奴隷状態、人身売買そして殺人までが多発していることも報告された。

 これに関連した内容としては、AP通信社は2015年3月、インドネシア・ベンジナ島で659人の船員が奴隷状態にあるとして国際移住機関(IOM)に保護されたと報じた。タイ人が419人、ミャンマー人が202人、カンボジア人が38人だったという。雇用していたのはプサカ・ベンジナ・リゾーシーズ(Pusaka Benjina Resources)社で、インドネシアで獲れた魚介類はタイに持ち込んでいた。事件の数ヵ月後に同社は業務停止処分、関係者は実刑判決を受けた。その時点でIMOは、4,000人ほどの人身売買・強制労働の犠牲者がベンジナ島付近で拘束されていると推察していた。同年8月には1,000人以上の船員がパプア・ニューギニアの海岸でタイの漁船から解放されるという事件もあった。中には10年以上にわたって拘束されていた人もいたという。その他、国際NGOのグリーンピースも、インドネシアのアラフラ海で合計189隻のタイのトロール船が約5,000人の奴隷船員を酷使していたことを報じている。

 RepRiskの報告書では、これらタイの水産漁業における強制労働の現状について、小売業者にも責任の一端があると分析した。最も関与が深い企業としては、アルディ(スイス)、ミグロス(スイス)、ウールワース(オーストラリア・ニュージーランド)、ウォルマート(米国)等を挙げている。世界最大級の食料・飲料企業であるネスレも、タイに所在する自社の水産関連サプライヤーの従業員が奴隷状態を余儀なくされていたことを認めた。

 また、RepRiskは同報告書の中で、強制労働分野での有力NGOのトップ5として、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、International Labor Rights Forum、China Labor Watch、アムネスティ・インターナショナル、Institute for Global Labor and Human Rightsを挙げた。

 英国で2015年10月29日に施行された「現代奴隷法(Modern Slavery Act 2015)」は、英国内に本部を置く企業に対し、企業およびサプライチェーンによる奴隷的な労働や人身売買に関する監視の方法を年ごとに報告するように要請している。企業報告は取締役会で承認し、経営トップが署名しなければならず、ホームページ上での掲載が定められている。

【報告書】RepRisk Special Report : Forced Labor
【機関サイト】RepRisk

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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