【エネルギー】RE100と現在の加盟企業 〜再生可能エネルギー100%を目指す企業経営〜 2017/02/01 体系的に学ぶ

 「RE100」という国際イニシアチブをご存知でしょうか。RE100とは、事業運営を100%再生可能エネルギーで調達することを目標に掲げる企業が加盟するイニシアチブで、「Renewable Energy 100%」の頭文字をとって「RE100」と命名されています。2014年に発足したRE100には、2018年1月28日時点で、世界全体で122社が加盟。この122社には、食品世界大手スイスのネスレ、家具世界大手スウェーデンのイケア、アパレル世界大手米NIKEなど、日本でもよく知られれている企業が数多く含まれています。

 事業運営を100%再生可能エネルギーで行うなんて話は、日本では一笑に付されてしまうかもしれません。日本では、東京電力や関西電力など、電力事業者によって差はあるものの、大半の電力は天然ガスや石炭などの化石燃料を電源としています。化石燃料の削減のための方策として日本の産業界から話題に上がるのも、再生可能エネルギーより原子力。再生可能エネルギーを推進しようという勢いは、まだ経済界で強くはありません。


(出所)経済産業省データをもとに、ニューラル作成

 この夢物語に聞こえそうな「100%再生可能エネルギーでの事業運営」を、実現に移そうとしているのがRE100です。電力を再生可能エネルギーに切り替えることで、二酸化炭素の排出量を削減し、低炭素社会への移行を実現することを目指しています。RE100の加盟企業には、「事業電力を100%再生可能エネルギーにする」というコミットメントが求められます。それでも、RE100に加盟する企業は増加し続けており、今日では欧米にとどまらず、中国やインドの企業にも広がりを見せています。その上、多くの加盟企業は、達成目標年も宣言しています。

RE100プロジェクトの経緯

 RE100は、国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)が2014年に開始したイニシアチブです。The Climate Groupは2004年に、当時の英国ブレア首相の支援を受け、英国ロンドンに設立されました。The Climate Groupは今では、英国の他、米国、インド、中国、香港などの支部を置き、世界中から数多くの企業や州政府、市政府が参画しています。The Climate Groupが、国連総会の時期に合わせ毎年9月に開催している年次報告会が「Climate Week NYC」です。そして2014年の「Climate Week NYC」の中で、RE100プロジェクトが発足しました。Climate Week NYCの各イベントは、参加企業の代表がRE100プロジェクトへの新規参入を表明する場ともなっています。

RE100の参加条件

 RE100プロジェクトには、現在122社が加盟しています。この数は年々増加しています。RE100プロジェクトに加盟するには以下の要件があります。

再生可能エネルギー100%に向けた宣言

 RE100プロジェクトに加盟するには、事業運営を100%再生可能エネルギーで行うことを宣言しなければなりません。多くの現加盟企業は、合わせて100%達成の年を同時に宣言しています。100%達成は、企業単位で達成することが要求され、世界各地に事業所等がある企業は、その全てで100%を達成しなければなりません。また、ここで定義される「再生可能エネルギー」は、水力、太陽光、風力、地熱、バイオマスを指し、原子力発電は含まれません。

 100%達成に向けては2つのオプションがあります。

(1)自社施設内や他の施設で再生可能エネルギー電力を自ら発電する
  自社の再生可能エネルギー発電所で発電された電力の消費は、電力系統に連系されたものでも、そうでないものでも構いません。

(2)市場で発電事業者または仲介供給者から再生可能エネルギー電力を購入する
  再生可能エネルギー電力の購入は、再生可能エネルギー発電所との電力購入契約(PPA)、電力事業者とのグリーン電力商品契約、グリーン電力証書の購入のいずれの方法でも可です。

毎年の報告書提出

 2つ目の要件は、報告書での進捗報告です。RE100の加盟企業は、毎年「CDP気候変動」の質問票のフォーマットで報告書を作成し、進捗状況をRE100事務局に提出しなければなりません。また、報告書に記載する再生可能エネルギー電力発電や消費の情報は、第三者監査を受けなければなりません。報告された情報は、RE100のホームページや年次報告書の中で公開されます。

現在の加盟企業一覧

RE100には、現在(2017年1月28日時点)下記122社が加盟しています。

製造業 18社

  • BMWグループ(ドイツ)
  • GM(米国)
  • タタ・モーターズ(インド)
  • HP(米国)
  • ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(米国)
  • フィリップス(オランダ)
  • フィリップスライティング(オランダ)
  • シュナイダーエレクトリック(フランス)
  • リコー(日本)
  • スチールケース(米国)
  • キングスパン(アイルランド)
  • DSM(オランダ)
  • アクゾノーベル(オランダ)
  • ダルミア・セメント(インド)
  • テトラパック(スイス)
  • Elopak(ノルウェー)
  • ヴェスタス(デンマーク)
  • レゴ(デンマーク)

医薬品 4社

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン(米国)
  • アストラゼネカ(英国)
  • ノボノルディスク(デンマーク)
  • バイオジェン(米国)

食品・消費財 21社

  • P&G(米国)
  • ユニリーバ(英国・オランダ)
  • レキットベンキーザー(英国)
  • エスティローダー(米国)
  • ロクシタン(フランス)
  • ネスレ(スイス)
  • ダノン(フランス)
  • ケロッグ(米国)
  • コカ・コーラ・ヨーロピアン・パートナーズ(英国)
  • ABインベブ(ベルギー)
  • カールスバーグ(デンマーク)
  • スターバックス(米国)
  • ディアジオ(英国)
  • マース(米国)
  • ジボダン(スイス)
  • IFF(米国)
  • カリフィアファームズ(米国)
  • Clif Bar(米国)
  • Organic Valley(米国)
  • Corbion(オランダ)
  • Hatsun Agro Products(インド)

アパレル 5社

  • NIKE(米国)
  • バーバリー(英国)
  • H&M(スウェーデン)
  • VFコーポレーション(米国)
  • インターフェース(米国)

小売 5社

  • ウォルマート(米国)
  • マークス&スペンサー(英国)
  • テスコ(英国)
  • イケア(スウェーデン)
  • Colruyt Group(ベルギー)

金融 26社

  • ゴールドマン・サックス(米国)
  • モルガン・スタンレー(米国)
  • バンク・オブ・アメリカ(米国)
  • シティグループ(米国)
  • JPモルガン・チェース(米国)
  • ウェルズ・ファーゴ(米国)
  • HSBC(英国)
  • クレディ・アグリコル(フランス)
  • UBS(スイス)
  • ヘルヴェティア(スイス)
  • INGグループ(オランダ)
  • コメルツ銀行(ドイツ)
  • トロント・ドミニオン銀行グループ(カナダ)
  • DBS(シンガポール)
  • ダンスケ銀行(デンマーク)
  • DNB(ノルウェー)
  • ノルデア銀行(スウェーデン)
  • バンキア(スペイン)
  • CaixaBank(スペイン)
  • Amalgamated Bank(米国)
  • ボヤ・ファイナンシャル(米国)
  • Bank J. Safra Sarasin(スイス)
  • アクサ(フランス)
  • AVIVA(英国)
  • スイス再保険(スイス)
  • ジュピター・アセット・マネジメント(英国)

建設・不動産 7社

  • 積水ハウス(日本)
  • British Land(英国)
  • ランド・セキュリティーズ(英国)
  • カナリー・ワーフ・グループ(英国)
  • alstria(ドイツ)
  • BROAD Group(遠大科技集団)(中国)
  • Mace(英国)

IT 17社

  • マイクロソフト(米国)
  • アップル(米国)
  • グーグル(米国)
  • フェイスブック(米国)
  • ブルームバーグ(米国)
  • Adobe(米国)
  • セールスフォース(米国)
  • SAP(ドイツ)
  • eBay(米国)
  • Workday(米国)
  • VMware(米国)
  • Autodesk(米国)
  • エクイニクス(米国)
  • ラックスペース(米国)
  • IHS Markit(米国)
  • YOOX Group(イタリア)
  • インフォシス(インド)

通信・メディア 7社

  • BT(ブリティッシュ・テレコム)(英国)
  • Sky(英国)
  • ピアソン(英国)
  • 電通イージス・ネットワーク(英国)
  • KPN(オランダ)
  • プロキシマス(ベルギー)
  • テレフォニカ(スペイン)

ロジスティクス 6社

  • SAVE S.p.A. Group (イタリア)
  • Swiss Post(スイス)
  • La Poste(フランス)
  • アスクル(日本)
  • ロンドン・ヒースロー空港(英国)
  • ロンドン・ガトウィック空港(英国)

その他 6社

  • レレックス・グループ(英国)
  • SGS(スイス)
  • Vail Resorts(米国)
  • Vaisala(フィンランド)
  • Elion(中国)
  • FIA Formula E(英国)

業界別の動向


(出所)RE100のデータをもとに、ニューラルが独自に業界分類を行い、作成

RE100には、すでに幅広い業界からの加盟が集まっていますが、とりわけ多いのが金融、IT、製造業です。

国別の動向


(出所)RE100のデータをもとにニューラル作成

 加盟企業の本社所在地で国別に集計すると、米国が4抜きん出て多く、次いで英国、スイス、オランダ、北欧諸国の企業が多いことがわかります。欧米以外では中国とインドの企業が合計6社加盟しています。日本企業は3社加盟しています。

 このように、業界や地域を超えて広がりを見せるRE100。各加盟企業は目標を設定し再生可能エネルギーでの事業運営に向けて取り組んでいますが、企業は完全にフリーハンドで電力目標を決定することができるわけではありません。企業の決定には、その企業が事業所を置く国や地域のエネルギー政策が大きく影響します。再生可能エネルギーの活用や二酸化炭素排出量の削減は、各国政府がそれぞれの自主目標を定めており、それにより再生可能エネルギー調達の難易度は変わります。そのため、工場やデータセンターなどの設置国検討においても、再生可能エネルギーを利用しやすい国を敢えて選定するということも実施され始めています。

日本企業への示唆

 多くの日本企業にとって、エネルギーや電力は自らの話ではなく、電力会社の話だと捉えられているところがほとんどです。すなわち、関東地方であれば東京電力、関西地方であれば関西電力から電力を購入するのが普通のオペレーションであり、電源構成は企業が選択したり目標設定したりする話ではなく、契約している電力会社の電源構成比に従わざるをえないという考え方です。冒頭で紹介したように、日本の電力事業者10社は、化石燃料をメインの電源としており、再生可能エネルギー割合は数%から十数%。この状況下で、企業自身が「再生可能エネルギー100%」を掲げるなどは理想論であって、企業経営の範疇ではないと考えることはこれまでは自然なことだったのかもしれません。

 しかし海外では事情が異なります。欧米では先んじて電力小売事業が自由化されており、企業はどの電力会社から電力を購入するのかをいち早く選択できる立場となりました。このような制度の下では、再生可能エネルギーで100%発電を行う電力事業者が存在したり、再生可能エネルギー発電所からの電力のみを「グリーン電力証書」という形で販売することも一般的に行われています。また、再生可能エネルギー推進のFIT制度や助成金制度が早かった欧米では、企業が自社施設等に自前の再生可能エネルギー発電所を建設するという行為も普通になされてきました。この動きは、今や欧米から中国やインドなど新興国にも波及し、企業が自前の再生可能エネルギー発電所を持ったり、電力事業者と共同で再生可能エネルギー発電所建設に投資を行うことが、新興国でも年々活発化しています。こうして、企業経営者は、電力需要、電力価格とともに、電源構成の問題も意識しながら、どのような電力を誰から買うのかということを経営課題として意識するようになっていったのです。

 国外で大きな事業所を持つ日本企業にとっても、どのような電力を誰から買うのかということは、すでに経営の意思決定の問題となっています。そしてついに2016年4月1日、日本国内でも電力小売事業が全面自由化されました。つまり、日本国内においても同様に、どのような電力を誰から買うのかが経営の意思決定の問題になってきたということです。もちろん、新電力事業者の財務体質やオペレーションが依然として不安定なこともあり、大規模事業者にとって、今すぐ既存の電力事業者以外と契約することは大きな決断となります。ですが、徐々に「なぜ石炭電源の電力を購入するのか」「なぜ原子力電源の電力を購入するのか」「なぜ自ら再生可能エネルギー発電所を造ろうとしないのか」という問いへの回答を、株主や他のステークホルダーから求められる時がやってきます。

 RE100は、再生可能エネルギー100%の目標を掲げるためだけのイニシアチブではありません。RE100の事務局と参画企業が協働しながら、高い目標である「再生可能エネルギー100%の事業運営」を達成していくことに大きな意義があります。現在加盟している企業も、2030年や2050年など数十年という長期計画の中でこの「RE100」を実現していこうとしています。世界的にますます多くの賛同が集まるこのRE100に、多くの日本企業が加盟することを期待しています。

※2018年1月28日:記事更新

【報告書】RE100 Annual Report 2017
【加盟条件】RE100 CRITERIA
【プログラム】RE100
【機関サイト】The Climate Group

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役社長兼サステナビリティ研究所所長

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