欧州環境庁(EEA)は6月22日、欧州で拡大する少子高齢化社会に向け、サステナビリティを損なわない形でテクノロジーを活用していく対策の方向性をまとめた提言レポートを発表した。欧州委員会やEU加盟国が採るべき財政・金融政策を整理した。
今回のレポートは、6月に欧州委員会が発表した「The impact of demographic change in Europe」に続くもの。EUは、「欧州グリーンディール」の一環として、カーボンニュートラルな社会への移行を積極的に進めており、その実現に向けて重要な役割を果たすのが「財政・金融政策」。しかし、金融システムは、少子高齢化や技術革新による社会的・経済的変化に伴い、多くの課題に直面するとの懸念がある。
そこでEEAは今回、人口動態の推移と技術革新が「環境に直接与える影響」と「財政・金融システムを通じて、サステナブルな移行に間接的に与える影響」を分析。EUのグリーン政策目標達成に関わる影響について、包括的にまとめた。
人口動態の推移による影響については、先ず社会の消費のあり方が変わっていくことを説明。高齢化社会では、住宅サービスの需要が増し、交通関連の消費活動が減るため、エネルギーの消費や排出に変化が生じる。また、社会保障や医療分野に充てる公的予算が膨らむ一方、労働力不足に起因する課税ベース浸食は拡大していくため、結果的にサステナビリティ転換を支える財政運営にも影響をもたらすとした。
一方で、技術革新については、急速な発展により資源効率や経済の脱炭素化への向上は見込まれるとの考え。特にサーキュラーエコノミーやシェアリングエコノミーと組み合わせることで、環境面での効果は期待できると予想した。但し、自動運転や情報共有プラットフォームで活用されるAIおよび自動化技術の増加は、大量の追加エネルギーを要する等の理由から、期待されるほどの環境効果を伴わない可能性があると指摘。また、こちらもテクノロジーの発展により労働代替が生じ、税収減少の可能性があるため、財政運用に影響を及ぼすとした。
これらを踏まえ、EEAは、今回のレポートの中で、「少子高齢化」「技術革新」「持続可能な財政運営」における相互作用のモデリングを詳細に紹介している。なお、今回のレポートは、新型コロナウイルス・パンデミックの前に作成されていたため、パンデミックの影響には触れていない。
(出所)EEA
【参考】【戦略】EU欧州委が定めた「欧州グリーンディール政策」の内容。〜9つの政策骨子を詳細解説〜(2019年12月12日)
【参照ページ】Ageing population, emerging technologies and fiscal sustainability can influence EU’s path to sustainable future
【参照ページ】The impact of demographic change in Europe
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