製薬大手9社のCEOは9月8日、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発において、高い倫理基準と健全な科学原則に基づき実施することを再確認する共同宣言を発表した。米国政府が、ワクチン開発を急ぐあまり科学的な開発・臨床試験プロセスを省略することも辞さない表明が出ている中、製薬企業としての倫理と科学を重視する考えを国際的に宣言した。
共同声明を発表したのは、ジョンソン・エンド・ジョンソン、メルク・アンド・カンパニー(MSD)、ファイザー、アストラゼネカ、サノフィ、グラクソ・スミスクライン(GSK)、モデルナ、BioNTech、ノヴァヴァックスの9社。9社が開発している新型コロナウイルス・ワクチンは合計70種以上にも上る。
今回の共同宣言の背景には、米食品医薬品局(FDA)のステファン・ハーン長官の発言がある。同氏は8月30日、英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューにおいて、公衆衛生リスクを上回る便益があると判断した場合、フェーズ3臨床試験の完了を待たず、新型コロナウイルス・ワクチンの緊急使用許可(EUA)を認めると公言。さらにスティーブン・ムニューシン財務長官とマーク・メドウズ大統領首席補佐官も7月30日に、フェーズ3臨床試験の完了前の認可に言及しており、ロシアや中国を意識した過渡な政治的競争意識による科学軽視との懸念が噴出していた。
今回の共同宣言では、9社のCEOは、FDAは医薬品の安全性を確保するために必要な科学を重視した当局としてのガイダンスと認可基準を策定していることを強調。特に無作為化二重盲検プラセボ対照の高水準の臨床試験を大規模に実施した上で認可することを再確認し、恣意的な判断で認可を急ぐ米国政府の姿勢に暗に懸念を示した。
その上で、今回の9社がコミットとすることとして、
- ワクチン接種者の安全とウェルビーイングを常に最優先する
- 臨床試験や製造プロセスにおいて高い科学・倫理基準の遵守を継続する
- FDA等の当局が定めているフェーズ3臨床試験を満了し安全性と効力を実証する前にEUAや使用認可の申請をしない
- 世界的な医薬品アクセスの観点を踏まえ、十分な供給体制とワクチン種類を確保する
FDAは、フェーズ3臨床試験の省略に言及している理由について、政治的理由ではなく、データに基づく判断と説明しているが、医薬品大手から適切な臨床試験を経ないワクチンについてはEUAも含め当局にワクチン使用許可を申請しないという立場が示された。
【参照ページ】Biopharma Leaders Unite To Stand With Science
【参照ページ】https://www.merck.com/news/biopharma-leaders-unite-to-stand-with-science/
【参照ページ】BIOPHARMA LEADERS UNITE TO STAND WITH SCIENCE
【参照ページ】Biopharma Leaders Unite to Stand with Science
【参照ページ】Biopharma Leaders Unite to Stand with Science
【参照ページ】Biopharma Leaders Unite to Stand with Science
【参照ページ】FDA leader says agency could consider authorization for Covid-19 vaccine before Phase 3 trials are complete, Financial Times reports
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら