英政府の食料政策の独立レビュー機関「国家食料戦略」は7月15日、包括的な食料政策の提言をまとめた答申書を発表した。全部で14の提言で構成されており、食料・小売大手に対する栄養を含むサステナビリティ報告の義務化も盛り込んだ。
国家食料戦略は、英政府が初めて設置した食料政策のレビュー機関。英レストラン大手「Leon」の共同創業者であり、2018年3月から環境・食料・農村地域省の非常勤参与となっているヘンリー・ディンブルビー氏が委員長を務め、包括的な戦略を検討してきていた。新型コロナウイルス・パンデミックが始まった直後の2020年6月には、パンデミック関連の緊急政策をまとめた「パート1」報告書を先行して発表。そして今回、本編をまとめた答申書が発表された。
答申書が示した14の提言は、
- 糖分と塩分の成分変更税を徴収し、歳入を低所得者向けの青果摂取支援に活用
- 従業員250人以上の食品・外食・小売・デリバリー等に栄養関連の報告を義務化。内容には、糖分・脂肪分・塩分の含有量の多い食品・飲料品、たんぱく質食品の各種別、野菜、果物、主要栄養素に関する売上と販売数量、及び食品廃棄物量が含まれる。
- 学校での「食事・学習」イニシアチブの実施
- 無償給食支給の対象者を年間世帯所得7,400ポンド(約110万円)から20,000ポンド(約300万円)に拡大
- 休日の無償給食支給プログラム「Holiday Activities and Food」を今後3年間延長
- 年間所得20,000ポンド(約300万円)未満の妊婦と5歳未満の児童を対象とした食事支給プログラム「Healthy Start」の対象を、18歳未満の全妊婦にまで拡大
- 低所得者層向けの食事支援「Community Eatwell」を実証導入
- 農家の土地利用サステナビリティへの転換を支援するため、農業補助金を2029年まで延長
- 農村地域の土地推奨区分を策定。土地を「準自然地区」「低収量農地」「高収量農地」に区分。また経済開発と宅地の適地も区分。政府がマップを公表し、自発的な活用を促す。
- 食料売買での最低基準の設定。基準には、動物福祉、環境、健康、二酸化炭素排出量、薬物耐性、動物媒介感染症(人獣共通感染症)の観点を含める。
- 食料システムの改善でのイノベーションに10億ポンド(約1,500億円)投資
- 国家食料システム・データ・プログラムを創設。データには、収量、環境保全ポテンシャル、炭素隔離量、大気と水質の汚染レベルを含める。
- 政府の食料公共調達での健康とサステナビリティ基準の設定
- 具体的な政策定量目標の設定と法定化
英環境・食料・農村地域省は、答申書に応じた政策を今後検討していく。国家食料戦略は、答申書発行の1年後に政府の進捗状況をレビューする権限も与えられている。
これを受け、英機関投資家9機関は7月15日、食料・小売大手に対する栄養を含むサステナビリティ報告の義務化を支持し、英ボリス・ジョンソン首相に政策実行を要求する共同書簡を送付した。参加した9機関は、リーガル&ゼネラル・インベストメント・マネジメント(LGIM)、Aviva Investors、ニュートン・インベストメント・マネジメント、キャッスルフィールド・インベストメント・パートナーズ、フェデレーテッド・ハーミーズEOS、Rathbone Greenbank Investments、Guy’s & St Thomas’ Foundation、The Food Foundation、ShareAction。参加機関の運用資産総額は2.8兆ポンド(約420兆円)。
機関投資家の共同書簡では、砂糖税等の短期的な施策だけでなく、業界全体の長期的なサステナビリティへの転換のための、あらゆる政策手段を動員すべきと伝えた。
【参照ページ】National Food Strategy
【参照ページ】letter
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