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【インド】モディ政権、再エネへの電源転換を加速。米国立研究所の研究結果も後押し

 米国エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所は12月9日、インドのモディ首相が掲げる野心的な再生可能エネルギー拡大目標を実現した場合、電力価格を劇的に削減できるとの研究結果を発表した。インドでも再生可能エネルギー導入でのコスト増が懸念する声があったが、前提が大きく覆される形となった。

 インドは、すでに世界第3位のエネルギー消費国だが、2030年までに人口増と経済成長で電力需要が倍増すると予測されている。それと同時に、モディ首相は2021年11月、2022年までに再生可能エネルギーの設備容量を現在の100GWから175GWに、2030年までに非化石電力の設備容量を500GWにまで増やす政策を発表している。

 そこで、ローレンス・バークレー国立研究所は今回、最新のコンピュータモデルとシミュレーションを用いて、2030年までのインドの電力需要を確実に満たすための最小コストの投資経路を分析。インドが2030年までに500GWの非化石電源を導入するという目標を再生可能エネルギーと蓄電バッテリーで達成した場合、電気料金を8%から10%削減できるとの結果が得られた。同時に2020年比で、2030年までに発電からの原単位の二酸化炭素炭素排出量を43%から50%削減することができる。

 非化石電源のうち大きく伸長するのは、太陽光発電と風力発電。太陽光発電で385GW、風力発電で147GWとした。原子力発電は現状より増えるが19GWにとどまった。再生可能エネルギーの増強では、農業での電力消費を太陽光発電が可能な日中の時間帯にシフトしたり、バッテリーを使って1日の4時間から6時間分のエネルギーを夜間に蓄電することや、既存の火力発電所に調整機能をもたせることが最適とした。


(出所)Barkley Lab

 コスト削減が実現できる背景は、今後10年間で太陽国発電、風力発電、蓄電バッテリーのコストが大幅に削減される予測になっているため。但し、インドが、最低コストの電源ミックスを実現するためには、政策・規制の枠組み整備が重要との強調した。具体的には、州間での電源共有、電力会社の計画・調達における信頼性と費用対効果の統合、電力市場の拡大と深化、蓄電の適切な評価と補償、既存のガスパイプラインとガス発電資産を効率的に利用するための電力部門とガス部門の調整等を挙げた。

 既存の発電所への影響では、2030年時点で電力部門の石炭消費量と温室効果ガス排出量は、ほぼ2020年の水準を維持。そのため、電力需要を満たすために再生可能エネルギーに移行しても、近・中期的には石炭採掘や輸送関連の雇用が失われることは考えにくく、インドには長期的な移行計画を立てる時間が与えられることも示した。

 今回の研究プロジェクトは、米国務省エネルギー資源局(ENR)から、米印クリーンエネルギー金融タスクフォースの「柔軟な資源イニシアチブ」から資金が出た。バイデン政権のエネルギー外交の方針を伺わせる内容となっている。

 インドではすでに、電力省の委員会が、新たな石炭火力発電所の増設を中止するよう勧告する内容をまとめたことも12月に報じられた。同勧告では、既存の石炭火力発電所に関しても、非化石電源での発電が不足する場合のみ、更新を検討すべきとしているという。インド政府も1月6日、送電網の整備で、5年間で16億1,000万米ドル(約1,900億円)の予算も閣議決定した。7州での再生可能エネルギープロジェクトを系統連系させる。

 また、インド国営水力発電NHPCも、オディシャ州で500MWの浮体式水上太陽光発電所建設で、Green Energy Development Corporation of Odisha(GEDCOL)との契約も締結。完成すると世界最大の浮体式水上太陽光発電所となる。プロジェクトは、NHPCが74%、GEDCOLが26%を出資する。場所は、水力発電の貯水池。第一期では2000万インドルピー(約3億円)で、まず300MW分を建設する。

 インドのCEEW Centre for Energy Financeの調査によると、2020年の再生可能エネルギープロジェクトの格付では、90%以上がBBB以上の投資適格評価を取得。2015年時点では50%以下だったことと比べると、政策の後押しもあり、大幅にインドの再生可能エネルギーの投資環境は良くなっている。

【参照ページ】India’s Clean Power Target Will Double Electricity Supply Economically if Low-Cost Storage is Deployed

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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