参議院本会議は6月13日、脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案(改正建築物省エネ法)を全会一致で可決。同改正法が成立した。政令で2025年までの施行日を設定する。
改正法では、まず、現行法では2000m2以上の大規模建築物にのみ適用されている省エネ基準適合義務を、全新築建築物及び全新築住宅へと拡大する。具体的には、断熱材の厚さを85mm、透明複層ガラスの導入等を義務化する。
2017年度の省エネ基準適合の実態では、300m2の中規模建築物で91%、小規模建築物で75%、2000m2以上の住宅で60%、300m2の中規模建築物で62%、小規模住宅で62%だった。このため、特に住宅側で大きな水準引上げを狙う。
また、大手事業者に適用するトップランナー制度を拡充。省エネ基準を上回る新築建築物及び新築住宅を供給する責務の基準を引上げることで、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)及びZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)へと誘導する。
さらに、販売・賃貸時における省エネ性能表示の努力義務を課す。
既存物件に関しては、省エネ向上に向けた修繕で住宅金融支援機構が低金利融資できる制度を新設。市町村が定める再エネ利用促進区域内では、建築士から建築主へ再生可能エネルギー導入効果の説明義務を課す。省エネ改修や再生可能エネルギー設備導入に支障となる建築物構造上の制限も緩和する。
今回の改正では、木造利用の促進も盛り込んだ。建築基準法を改正し、大規模建築物について、大断面材を活用した建物全体の木造化や、区画を活用した部分的な木造化が可能となる。また、防火規制上、低層建屋の別棟扱いを認め、低層部分の木造化を可能とする。建築士の取扱範囲でも、二級建築士でも行える簡易な構造計算で建築可能な3階建て木造建築物の拡大。高さ13m以下の基準が16mへと引き上げた。
同改正法は、前菅政権時代に掲げられた2050年カーボンニュートラル、2030年度二酸化炭素排出量の2013年度比46%減に向け、不動産分野の排出量削減のために検討が開始。しかし、一度は今国会での審議入りが廃案になり国会提出が先送りされる決定もあったが、その後、与党内の有志議員が巻き返し、国会提出が再決定。最終的には全会一致での可決となった。
【参照ページ】「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」を閣議決定
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