欧州中央銀行(ECB)と欧州システミックリスク委員会(ESRB)は7月26日、気候変動リスクが欧州の金融システムに与える影響を分析した共同報告書を発行した。直接的なリスクだけでなく、波及効果も分析した。
今回の分析では、まず、金融システムの気候変動リスクへのエクスポージャーを分析。銀行ローンでの原単位排出量は有意な減少傾向がまだ確認できず、気候関連損失へのエクスポージャーは、潜在的損失の20%以上が、ユーロ圏の銀行の5%の保有資産に集中したままと結論づけた。但し、気候変動リスクの認識が広がるにつれ、個別の銀行でのエクスポージャーのリスクマネジメントについては対策が強化されている可能性があると付言した。
次に、影響が波及的に拡大する程度も分析した。移行リスクに関しては、直接的に大きな影響を受ける排出量の多いセクターの企業だけでなく、カーボンプライシングの水準が引き上がることで、幅広いセクターの信用リスクに影響が出ると見立てた。その結果、リスクアセット(RWA)が規制上限水準の5倍にまで達する可能性があるという。
また、物理的リスクでも、災害等で直接的な打撃を受ける企業だけでなく、災害で不安心理に陥いることで、資産全体が投げ売られる効果があるとした。その結果、資産価格に非常に短期間の暴落が発生する可能性を指摘した。その結果、保険会社ではストレステスト対象資産の3%、運用会社ではストレステスト対象資産の25%の市場損失がでるおそれがあるという。銀行の信用リスクでも、着実な削減しなければ、2050年にはデフォルトリスクが13%から20%高まるとした。但し、企業単位での影響度は大きく異なるとした。また現状では分析スコープが限られることから、今回指摘した以上の波及効果が出る可能性が大きいことも示唆した。
【参照ページ】Climate shocks can put financial stability at risk, ECB/ESRB report shows
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