【国際】CEO気候リーダーズ同盟、グリーン市場では「先行者利益大きい」。今後の急拡大見通し

　世界経済フォーラム（WEF）事務局が主導する「CEO気候リーダーズ同盟（Alliance of CEO Climate Leaders）」は1月12日、今後、セクターを超えた「大規模なグリーン市場」が急速に現実味を帯びてきているとするレポートを発表した。ボストンコンサルティンググループがとりまとめた。同イニシアチブには、世界大手120社以上のCEOが参画している。

　今回の報告書は、グリーン市場では、先行者利益が大きいとし、今後10年間で巨大になるグリーン市場では、いち早く市場に参入することで成功を収めることができると強調。初期コストが高くても、早く市場に参集すべきとした。

　同報告書は、グリーンソリューションと既存の製品とのコスト比較を実施。すでにエネルギー分野では化石燃料を下回り、プラスチック、コンクリート、ガラスの市場でも、既存の製品をコストで下回るものも出始めていることを伝えた。さらに別のページでは、グリーン市場のコストが今後、先進国と発展途上国の双方で急速に減少していく道筋を示した。

　さらに、政府によるインセンティブで、さらにコスト構造は変化する。例えば、米国では、政府の補助金により、2022年時点でもグリーン水素のコストはグレー水素と同程度にまで減少。また、EUでは排出量取引制度（EU-ETS）により、輸入天然ガスのコストは、太陽光発電を上回る状況となっている。さらに今後、同様のインセンティブ設計をする国が増えていくとした。

　売上面では、消費者向け製品の市場成長率のデータを掲載。2016年からの5年間で、年成長率（CAGR）は、既存製品が3.1%なのに対し、サステナビリティ重視製品は7.8%と2.5倍を誇った。消費者向けのサステナビリティ製品市場はまだ未成熟だが、過去のアンケート調査の結果を踏まえ、今後大きな市場拡大が見込まれるとした。

　また、B2B市場では、スコープ3排出量の削減が、市場拡大の大きな要因となると紹介。スコープ3の削減目標を設定する企業は、2022年だけでも大幅に増えた。同市場では、すでに売上プレミアムが発生しており、欧米では高くても買うという構造が生まれてきている。同アライアンスのCEO調査では、「高くても買う」と答えたCEOが50%に達していた。むしろ、今後、順調に供給が拡大しなければ、需給バランスが逼迫し、供給不足に陥ると警鐘を鳴らした。

　同レポートでは、グリーン市場に参入するためのステップも解説。まず、カーボンニュートラル需要に対応するためのターゲット市場を特定し、次に、製品の価値提案を企画する。価値提案には、環境面だけでなく、健康や使いやすさ等の幅広い面を含めて行う必要がある。3番目には、狙った市場での有望な顧客の特定で、多くの場合、単なる販売先としてでなく、パートナーシップを通じて、顧客との体制を構築すべきとした。4番目は将来的な市場拡大を踏まえた中長期的な価格戦略。5番目が、サプライヤー、顧客、同業他社、政府と協同したルール形成や障壁撤廃。最後に、事業をスケールさせるための社内のガバナンス、人、モノ、カネの投下となり、部門を超えた社内協力体制が必要とした。

　また、CEO気候リーダーズ同盟は別途、気候変動適応に関するレポートもPwCと共同で発表。企業が、政府、国際機関、地域コミュニティと協力し、直面している気候変動による危険にどのように適応できるかを示した。

　適応の分野での、売上拡大機会では、関連データサービス、関連データソリューションサービス、保険、環境へのエクスポージャーを軽減するための環境フットプリント削減に関するソリューションを挙げた。

　またコスト削減機会では、自社として、環境へのエクスポージャーを軽減するための環境フットプリント削減に関するソリューションを導入することで、コスト削減や災害被害軽減につながるとした。

【参照ページ】Climate CEOs: Green Demand Is Fast Outpacing Supply, Opportunity for Early Movers to Build Market Share

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所