世界経済フォーラム(WEF)は11月28日、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)に先駆け、報告書「ネットゼロ産業トラッカー2023」を発行。鉄鋼、セメント、アルミニウム、アンモニア、石油・ガス、航空、海運、トラック輸送の8業種について、カーボンニュートラル化に向けた進捗状況を分析した。分析対象となった8業種は、削減難易度が高いと呼ばれる業種で、世界全体の二酸化炭素排出量の41%を占める。
同報告書では、8業種の状況について、「テクノロジー」「インフラストラクチャー」「需要」「政策」「資本(投資リターン)」の5つの観点から5段階で評価している。比較的好調の上からの2番目の評価だったのがアルミニウムの需要と、石油・ガスのテクノロジー。低炭素アルミニウムの需要に関しては、すでにアップル等の企業が積極購買しているとした。石油・ガスのテクノロジーでは、メタン漏出削減、ガスフレア防止、電化、クリーン水素、炭素回収・利用・貯留(CCUS)の5つの分野で先端技術が確立してきているとした。
一方、資本に関しては、8業種全てで最も低い評価となった。8業種のカーボンニュートラル化に必要な投資額は2050年までに13.5兆米ドル(約2,000兆円)と見積もられ、いずれも電化や水素への燃料・原料転換等が重要分野となる。投資額は、太陽光発電、洋上・陸上風力発電、原子力発電、地熱発電の発電コスト、またクリーン水素生産用の電解槽コスト、炭素輸送コスト、炭素貯留コストから算出された。内訳は、クリーン電力45%、クリーン水素37%、二酸化炭素輸送・貯留が5%、バイオ燃料2%、その他11%。サーキュラーエコノミー技術も重視されたが、必要投資額にはまだあまり織り込まれていない。
同報告書では、カーボンプライシング、税制補助金、公共調達、強力な事業事例の開発が重要な支援策となるとした。また、リスクの高い分野での資金調達は難易度が高くなるため、機関投資家や国際開発金融機関が低コストの資本を提供していくことが重要とした。また、様々な産業や地域ニーズに金融モデルを適合させるべきとした。
【参照ページ】Net-Zero Industry Tracker: $13.5 Trillion Investment Needed to Fast-Track Decarbonization of Key Hard-to-Abate Industry Sectors
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