欧州委員会は12月7日、動物福祉規則を改正する政策を発表した。同時に、ペットとして飼育される犬や猫の動物福祉とトレーサビリティに関する新たなEU規則を制定する政策も打ち出した。実現すると約20年ぶりの大改正となる。今後、EU理事会と欧州議会との調整に入る。
今回の動物福祉規則の改正では、動物の輸送時の動物福祉について規定している。まず、輸送時間の短縮と、輸送時間が長時間に及ぶ場合の動物の休息、給餌、給水についてルールが設けられる。また、食肉用の動物や、離乳していない子牛や妊娠中の動物等の弱い立場にある動物には特別なルールが適用される。
次に、極端な気温の中での輸送では、気温が30度を超える場合は夜間のみに限定する等、厳しい条件が課される。さらに、気温が0℃を下回る場合は、輸送中に動物の風邪疾患リスクを抑えるため、道路運送車両にカバーをかけ、動物区画の空気循環を管理することも義務化。加えて、気温が-5℃を下回る場合は、前述の措置に加え、輸送時間が9時間以内に制限される。
一方、輸送中の動物のために確保しなければならないスペースについては、要件を緩和する。また当局の監督を強化するため、車両のリアルタイム測位や中央データベースの構築等も政策に盛り込んだ。
動物の輸出でも、EU域内からの生きた動物を輸出する場合には、EU域内と同等の基準を満たすよう、第三国での管理を強化する等、ルールを強化する。輸送規則の執行を容易にするため、デジタルツールを最大限に活用する(例:車両のリアルタイム測位、中央データベース)。
犬・猫ペット規則では、ブリーダーやペットショップ、保護施設で繁殖または飼育されている犬や猫の動物福祉で新たなEU統一ルールを設ける。まず、動物の繁殖、飼育、ケア、取扱に最低基準を設ける。また、販売までの厳格なトレーサビリティ要件を課す。EU加盟国政府には、ペット事業者に対する研修の実施を行い、規制を周知させることも求める。犬や猫の輸入でも同等の動物福祉基準を課す。
さらに、EUが権限を持つ政策分野について、EU加盟国7カ国以上から計100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案することができる「欧州市民イニシアチブ」を通じて提案されていた「毛皮フリー欧州」の要望について、欧州委員会は、欧州食品安全機関(EFSA)に対し、毛皮のために養殖される動物の福祉に関する科学的意見を2025年3月までに提出することも指示した。欧州委員会は、経済的および社会的影響の評価を踏まえ、最終的な政策を決定する。
欧州市民イニシアチブの提案では、欧州委員会に対し、毛皮の生産を唯一の目的、または主な目的として動物を飼育、殺処分することの禁止と、養殖動物の毛皮及びそのような毛皮を含む製品をEU市場に流通させることを禁止ことを求めている。
動物福祉に関しては、EUは農業・食料基本戦略「Farm to Fork戦略」の中での重要分野の一つとして扱っており、今回もその一環として政策が肉付けされている。
【参照ページ】Commission proposes new rules to improve animal welfare
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