
米証券取引委員会(SEC)は3月6日、採択した上場企業に対する気候関連情報開示規則に関し、声明を発表。有効性が不十分と判断されれば、開示規則の引上げを検討していくとの考えを示した。
【参考】【アメリカ】SEC、気候関連情報開示ルール最終決定。スコープ3撤回、小型株企業はCO2開示免除(2024年3月8日)
今回の声明は、SEC委員の一人、キャロライン・クレンショー氏の名前で発表された。同規則の制定過程では、数多くの賛否の声が寄せられ、最終的には原案から大幅に内容を緩和した内容となった。これに対しクレンショー委員は、「私たちの提案の真の目的から対話が遠ざかっていく傾向が見受けられる」とし、SECは、投資家の利益のための同規則の制定を進めてきたが、目的を誤認したり、目的を偽って喧伝している人が多くいたことを示唆した。
同委員は、「私たちのルール作りについて私が耳にした批評は、私たちの権威をそうでないものに偽装しようとしている。私たちは環境保護団体ではないし、環境保護に関するアジェンダを支援したり、汚染基準を設定したりすべきではないと言われている。その通りだ。私たちは一般企業に対してリスクに関する情報開示を要求する仕事をしている」と伝え、あくまで投資家の利益のために、資本市場の透明性の強化をしてきているとの見解をあらためて表明した。
その上で、スコープ3排出量が報告義務から除外されたり、スコープ1と2についても「マテリアル」と判断した企業のみが報告義務を負うことになる形でルールが最終決着したことについては、「気候変動リスクを適切に評価するのに十分な情報が得られないと判断した場合には、投資家が十分な情報を得た上で投資判断を下し、苦労して稼いだ資金を適切な方法で配分するために必要な手段を確保するために、ガイダンス、21A報告書、FAQ、その他の委員会の措置を検討することができる」と延べ、実効性レビューを行ったうえで、規則内容を引上げるとの考えを示した。
さらに、今回決定した規則の遵守を満たすような「代替制度」を許容する命令をSECが発出する可能性があることも伝えた。IFRS財団の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)のような他の規制機関の基準設定主体が、独自の気候リスク報告制度を導入していることを指摘するパブリックコメントも多かったことから、国際基準の米国での適用についてSECが別途ルールを作る可能性があるという。
SECの決定は、連邦政府政権の影響を大きく受ける。そのため、今回クレンショー氏が伝えた見解の見通しについても、11月に行われる米国大統領選挙次第と言える。
【参照ページ】A Risk by Any Other Name: Statement on the Enhancement and Standardization of Climate-Related Disclosures
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