
英労働・年金省の「社会的要因タスクフォース(TSF)」は3月7日、年金基金のESG投資判断に関する「S」ファクターの考慮ガイドを発行。35の提言をまとめた。
【参考】【イギリス】労働・年金省の社会的要因タスクフォース、年金向け35の提言発表。パブコメ募集(2023年10月23日)
TSFは、2023年2月に発足。政府、年金基金、運用会社、データプロバイダー、NGO等の委員で構成されている。Sファクターには、労働者、サプライチェーン労働者、コミュニティへ・エンゲージメント、消費者保護の4つの分野が特定されている。
今回発行したガイドは、5つの文書で構成。具体的には、Sファクターの考慮の在り方を示したガイド、データソース、スチュワードシップ、事例集、提言の5つのドキュメントがある。Sファクターの考慮の在り方ガイドでは、「社会的要因と年金基金」「年金ポートフォリオにおける社会的要因への対処」「マテリアリティ評価フレームワーク」「社会ファクターデータ」の4つのセクションで構成されている。
同ガイドは、SファクターはESG全体の中でもあまり注目されない傾向にあり、要因にはSファクターの測定が困難な場合が多いことや、考慮するフレームワークに関し共通認識がないこと等をあげている。Sファクターのマテリアリティ評価では、国レベルのリスクから始まり、セクターを検討し、さらにリスクを企業レベルまで絞り込んで分析する手法を提唱した。
Sファクターの考慮では、個別プロジェクト毎に社会的インパクトを測定し管理するアプローチは、インパクト評価のモデル化の難易度が高いという理由で推奨しなかった。それ以上に、幅広いポートフォリオを持つユニバーサルオーナーとして、各Sファクターの状況を見通したシナリオ分析やストレステストの手法が有効とした。
発行体単位のデータソースについては、人権、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)、健康・メンタルヘルス関連が一般的に利用可能なデータとなっており、多くの情報プロバイダーも情報提供していることをまとめた。
提言では、年金基金の運営理事会がSファクターに関する目標を設定することや、運用会社へのマンデートでSファクター要件を定めること、規制当局が年金基金にSファクターの統合を制度化すること等を提示した。
【参照ページ】Considering Social Factors in Pension Scheme Investments: a guide from the Taskforce on Social Factors
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