Skip navigation
サステナビリティ・
ESG金融のニュース
時価総額上位100社の97%が
Sustainable Japanに登録している。その理由は?

【イギリス】1990年比でGHG53%削減。再エネ発電比率42%でコストも約50%低減。IEAレビュー

 国際エネルギー機関(IEA)は8月28日、英国のエネルギー・気候変動政策に関する報告書を発表した。IEAは加盟国のエネルギー・気候変動政策のレビューを定期的に行っており、英国を対象としたレビューは5年ぶり。

 同報告書は、IEAが2023年11月20日から24日にかけて実施したレビューをまとめている。エネルギー転換を積極的に展開しており、今後も強固な法的枠組みにより、成長するクリーンエネルギー経済の恩恵を享受する可能性が高いと評価。特に、クリーンエネルギーの導入、洋上風力発電の世界的なリーダーだと強調した。

 英国は、2008年に制定した気候変動法に基づき、独立行政機関として気候変動委員会(CCC)が設置され、独立的な立場から、政府と議会に対し気候変動面での政策勧告を実施している。政府は勧告に基づき、「カーボン・バジェット」という名の5年毎の削減目標を設定することが義務付けられている。

【参考】【イギリス】ジョンソン首相、2035年CO2削減目標を1990年比78%に設定。世界をリード(2021年4月21日)

 英国政府は、2019年に2050年カーボンニュートラルを宣言。温室効果ガス排出量を2030年までに1990年比で68%削減することを目標として設定。2008年から2012年、2013年から2017年、2018年から2022年までの3期に渡るカーボン・バジェットをすべて達成しており、2023年の温室効果ガス排出量は、1990年比で53%減少する見通し。

(出所)IEA 

 英国のGDPは、2005年以降、成長を続けており、人口も2015年の6,500万人から2022年には6,800万人に増加。一方で、温室効果ガス排出量は減少し続けている。EUと同様に、経済成長と温室効果ガス排出量削減を切り離す「絶対的デカップリング」が実現できている。

(出所)IEA 

【参考】【EU】GHG排出量、2005年比47%減達成。再エネ発電量比率50%。欧州委年次報告(2024年9月15日)

 電力セクターでは、石炭火力発電の大幅な削減と再生可能エネルギーの導入が進展。電力セクターのカーボンニュートラルを2035年に達成することを目標として設定。電源では、2030年までに洋上風力発電を最大50GW、太陽光発電を70GW、2050年までに最大24GWの原子力発電の新規設備容量を目標としている。

【参考】【イギリス】政府、ネットゼロ戦略発表。2035年までに全電力で脱炭素化。農業イノベーションも(2021年10月20日)

 石炭火力発電の割合は、2012年の40%から2022年には2.2%にまで大幅に減少。2022年の発電量全体に占める風力発電の割合は全体の25%を占め、再生可能エネルギーの割合は2012年と比較して3倍の42%にまで増加した。

(出所)IEA

 風力発電の設備容量は陸上風力発電が15GW、洋上風力発電が14GWとなり、2013年以降、発電コストは約50%低下。洋上風力発電の世界的リーダーであり、25GWの浮体式洋上風力発電を含む77GWの洋上風力発電のプロジェクトが進行中だとした。

(出所)IEA

 2015年から導入された差金決済契約制度(CfD)の導入についても、事業者の再生可能エネルギーへの投資リスクを軽減し、普及を促したと評価。固定価格買取制度(FIT)が予め政府により電源種別毎に買取価格が長期間固定で設定されるのに対し、CfDは発電事業者と電力の買い手と成る政府系企業との間で契約により長期間の固定価格(ストライク・プライスと呼ばれる)を設定する制度となっている。

 今後の課題では、系統連系の急速な増加を支えるための送電網インフラの大規模な整備が、エネルギー転換を支えるための重要な優先分野になるとした。この点に関し、英政府はすでに、送配電会社を国有化し、中央集権で一体的な系統連系計画を策定する決断を下している。

【参考】【イギリス】政府、電力系統事業を国有化。中央集権で脱炭素エネルギーグリッドを一体計画(2024年9月17日)

 建築セクターでは、既存の建築物のエネルギー効率の向上、化石燃料の暖房システムの電化を優先分野として継続的に対応することを提言。英国の最終エネルギー消費量の29%が住宅部門、12%がオフィスや病院等のサービス部門、合計41%を建築セクターが占めている。住宅部門のエネルギー消費の暖房システムが約62%を占め、そのうち74%を天然ガス、9%を石油で賄っている。

(出所)IEA

 英国内のエネルギー関連の温室効果ガス排出量のうち、輸送セクターは36%を占める。現状は輸送セクターのエネルギー消費量のうち90%を化石燃料に依存しており、引き続き政策の強化を提言した。英国では、2030年までに新車販売の80%を、バンでは同70%をゼロエミッション車両にすることを義務化。短期的には2024年に新車販売の22%と設定しており、2035年までに100%達成を目指す計画。2023年のゼロエミッション車両は、2022年から67%増加し、新車販売台数の16.5%となっている。

【参考】【イギリス】政府、EV新車販売比率を2030年に自動車で80%、バンで70%に義務化(2023年9月30日)

 産業部門は、エネルギー消費の約5分の1、エネルギー関連のGHG排出量の14%を占める。短期的なエネルギー効率の最適化を行いつつ、長期的な技術開発への投資も同時に行う必要性を訴えた。特に、送電網の拡充を行い産業の電化を支援するよう提言した。また、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)や水素等の新技術の商業化と導入も重要とした。

【参照ページ】IEA policy review highlights UK leadership on climate policy and emission reduction efforts

author image

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

この記事のタグ

Sustainable Japanの特長

Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。

  • 時価総額上位100社の96%が登録済
  • 業界第一人者が編集長
  • 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
  • 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく ログインする

※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら

"【ランキング】2019年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能な企業100社」"を、お気に入りから削除しました。