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【イギリス】政府、ネットゼロ戦略発表。2035年までに全電力で脱炭素化。農業イノベーションも

 英ボリス・ジョンソン首相は10月19日、英国の新たなカーボンニュートラル政策「ネットゼロ戦略」及び不動産エネルギー戦略「熱・不動産戦略」の2つを発表した。2020年11月に発表した「10ポイントプラン」をさらに具現化。11月から始まる第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議(COP26)に向け、率先して野心的な包括計画を策定した。

【参考】【イギリス】首相、2030年ガソリン・ディーゼル新車販売禁止方針表明。脱炭素に向け10重点施策も発表(2020年11月19日)

 今回掲げた政策では、2030年までに最大900億ポンド(約1.4兆円)の民間投資を実現させ、グリーン産業で新たに44万人の高所得雇用を創出する。これにより企業は、最新の低炭素技術で英国の競争力を高める。

 電力では、再生可能エネルギーと原子力発電が柱となる。未来の技術開発のために5億ポンド(約800億円)を追加で投じ、総額15億ポンド(約2,400億円)の予算を用意。別途、未来原子力実現基金を通じ、1.2億ポンド(約190億円)の予算を用意。また「先進原子力基金」を通じ、小型モジュール炉(SMR)開発に2.15億ポンド、先進モジュール炉(AMR)に1.7億ポンドを投じる。これにより、2050年の電源構成では、着床式と浮体式の洋上風力を含む風力発電が最大電源となり、次いで原子力発電となる計画。これらにより、英政府は2035年までに全電力を全てカーボンニュートラル型に転換する。

【参考】【イギリス】ジョンソン首相、「2035年までに英国全電力を再生可能エネルギーに転換」(2021年10月7日)

 産業分野では、1億4,000万ポンドの産業・水素収益支援スキームを用意。産業用炭素回収と水素を促進し、ガスと水素による産業用エネルギーコストのギャップを埋め、グリーン水素プロジェクトの立ち上げを支援する。北西イングランドと北ウェールズのハイネット工業地帯と、ティーサイドとハンバーのイースト・コースト工業地帯での2つの炭素回収を、技術のモデルケースとし、北海の産業を活性化する。

 交通・輸送では、英国の自動車およびそのサプライチェーンの電動化を支援するため、すでにコミットした最大10億ポンドの予算に加え、新たに3.5億ポンドを追加。加えて、電気自動車(EV)とEV充電ステーションの普及に別途6.2億ポンドを用意する。

 航空燃料では、家庭ゴミ、産業界から出る排ガス、大気中から回収した炭素、余剰電力等を活用し、持続可能なジェット燃料(SAF)の商業化で、1.8億ポンドを用意。2030年までに10%のSAF実現を目指す。

 不動産分野では、新たに39億ポンドの予算を用意。そのうち4.5億ポンドは、3年間のボイラー省エネ修繕計画に投ずる。

 吸収では、「気候のための自然基金」に1億2,400万ポンドを拠出。2050年までにイングランド地方で約28万haの泥炭地を回復し、イングランド地方で森林造成を3倍に拡大する。

 英政府は、昨年の10ポイントプランの発表以来、グリーンプロジェクトへの海外からの投資が58億ポンド以上となったと表明。新たに56,000人分の雇用も生まれ、当初想定した成果が出てきていることを強調した。

 また英環境・食糧・農村地域省は10月20日、農業イノベーション助成プログラムの「農業イノベーション・パスウェイ」の採択企業を発表。同プログラム予算は1,450億ポンド(約23億円)。果実収穫ロボット、ハエを原料とした飼料、農薬不要の新農法等が採択された。

 さらに同省は、追加の助成プログラムとして「農業イノベーション・プログラム」を創設。第1弾公募を開始した。今回の募集は、「産業主導型研究開発パートナーシップ基金」で、農家、生産者、林業者、企業が、AIや低排出ガスの機械を使って生産プロセスを最適化したり、気候変動に強い作物を開発する等に支援する。予算規模は1,750万ポンド(約28億円)。

 同プログラムの第2弾「農業未来R&D基金」は2021年初頭に発表し、農業による環境影響を軽減することで気候変動に対処することを目的とする。3つ目の基金は「実践促進プロジェクト基金」で、2022年後半に創設。新しいイノベーションを実践する農家主導のプロジェクトを支援する。

 英国では、地方公務員年金基金の業界団体「地方自治体年金基金フォーラム(LAPFF)が10月2日、英政府に対し、英国の大企業にカーボンニュートラル・トランジションに関する開示を義務化するよう要請。さらに10月7日には、サラシン&パートナーズ及びTCIファンド・マネジメントと合同で、英国の全ての上場企業に対し、2022年の株主総会で気候変動戦略に関する諮問的決議を議案化する「Say on Climate」を実行する声明も発表している。

【参照ページ】UK's path to net zero set out in landmark strategy
【参照ページ】Farming Innovation Programme launched to boost the future of farming
【参照ページ】Pension fund investors warn of climate failure if government fails to plan for a just transition to net zero.
【参照ページ】LAPFF, TCI Fund Management and Sarasin & Partners write to the FTSE All-share calling for a Say On Climate resolution at every 2022 AGM

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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