
欧州リサイクル業界団体EuRICのプラスチックリサイクル部門(EPRB)は12月3日、EUのプラスチックリサイクル業界の現状を調査し、EUの第2次フォン・デア・ライエン欧州委員会に向けた提言報告書「ロードマップ」をまとめた。
同団体は、プラスチック、金属、紙、繊維、タイヤ、自動車、電気廃棄物、建材の領域をカバーし、サーキュラーエコノミーを提唱。政府やメーカーとの協働も行っている。
同報告書は、第1次フォン・デア・ライエン欧州委員会では、EUのプラスチック廃棄物の環境への影響を低減し、サーキュラー型のプラスチック経済への移行を加速させるための政策が実施されてきたが、欧州のプラスチックリサイクル業界は依然として、再生ポリマーの需要が低いという喫緊の課題があると指摘。低迷する需要、再生プラスチックの低価格化、第三国からの不当かつ不正な再生素材輸入の3つを構造的に解決する必要があるとした。
その上で、プラスチックのサーキュラーエコノミー化は、第2次フォン・デア・ライエン欧州委員会が重要な3つの柱として掲げる「脱炭素化」と「経済安全保障」の2つに資するとし、具体的な5つの提言を示した。
【参考】【EU】ライエン欧州委員長、2期目施政方針演説。イノベーション、脱炭素、経済安全保障を柱(2024年12月7日)
まず、プラスチックの再生素材含有率に関する実用的な義務的目標を迅速に導入すること。これによって、再生材料の需要を刺激し、欧州におけるリサイクル能力の拡大に向けた投資を確保できるとした。また、第三国からの輸入が増加しているため、再生ポリマー検証制度、トレーサビリティのための強力なメカニズム、EU同等性ルールの適用を求めた。
2つ目が、バージンプラスチックと再生プラスチックの価格差を埋めるためのインセンティブ。具体的には、再生プラスチック製品に対するVAT税率の引下げや、拡大生産者責任(EPR)賦課金の環境調整といった財政的インセンティブを挙げた。
3つ目は、義務的な廃プラスチック収集目標とリサイクル設計基準の導入。これにより、リサイクルプロセスへの投入物の収集量確保と、リサイクル可能品質を高めることができるとした。
4つ目は、廃プラスチックの輸出に対する新たなルールの導入。プラスチックの最終廃棄に関するEU統一基準を確立し、高品質なリサイクル製品がEU域内で循環させる必要があるとした。
最後が、有害化学物質に関する予防措置と責任あるリスクマネジメントの適切なバランス。有害化学物質の閾値が、リサイクル業界が利用可能な量産規模の分析ツールや品質管理方法で法令遵守を証明できないレベルにまで引き下げられた場合、リサイクル工場が停止するリスクがあると強調。廃棄物中の有害化学物質の管理を、予防原則に基づく厳格なアプローチから、実際のリスクに基づくリスクベースのアプローチへと変更するよう要請した。
今回の方向所では、欧州のプラスチック再生量は2023年に54Mtに達したが、そのうち消費者使用後プラスチックに由来するものはわずか13.4%しかないと分析。また、2022年に回収された推定3,230万tの使用済み廃プラスチックのうち、リサイクルされたのはわずか26.9%で、焼却が49.6%、埋立処分が23.5%もあると伝えた。
工業用プラスチックでは、EUの自動車産業はEU全体のプラスチック需要の約10%を占め、年間510万tを消費。一方、使用済み車両から発生するプラスチックのうちリサイクルされているのは19%のみ。電子廃棄物からのプラスチックのリサイクル率も20%、建材用プラスチックのリサイクル率も17.4%といずれも低水準にある。
再生プラスチックのセクター別の需要状況では、農業関連が37.5%、建材が22.7%、プラスチック容器・包装が9.5%、自動車関連が4.6%、電気製品が3.2%。
【参照ページ】EU Plastics Recyclers’ Roadmap: For a competitive & innovative industry
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