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【国際】CBD COP16、時間切れで後日再開へ。カリ基金創設、遺伝子組換え生物リスク評価等で大きな進展

 国連生物多様性条約第16回カリ締約国会議(CBD COP16)は11月2日、当初の予定を1日延長し協議が続けられたが、全てのアジェンダでの合意を取り付ける前に時間切れとなった。11月2日午前9時頃、締約国会議は定足数を失い、最後の数項目の承認を前に中断。後日、会場を変えて再開されることとなった。

 CBD COP16では、2つの大きな合意がなされている。まず、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)の利用から得られる利益をより公平かつ衡平に配分するための世界基金を含む多国間メカニズムを設置することについて、前回のCBD COP15で合意していたが、CBD COP16では通称「カリ基金」を創設することで交渉が成立した。

 カリ基金では、DSIの利用によって商業的利益を得ている大企業やその他の主要事業体は、利益や収益の割合に応じ、「カリ基金」に資金を拠出することになる。同モデルは、DSIに最も依存している大企業を対象としており、アカデミア、公的研究機関、その他DSIを使用しているが直接利益を得ていない団体は資金拠出が除外される。拠出された資金は、遺伝資源の出所となる発展途上国を支援するもととなる。さらに、資金の少なくとも半分は、先住民族や地域コミュニティ(コミュニティ内の女性や青少年を含む)が自ら認識したニーズを、政府を通じて、あるいは先住民族や地域コミュニティが特定した機関を通じた直接支払いで支援することが期待されている。

 合意の2つ目は、国連生物多様性条約8条j項等が規定する先住民および地域コミュニティに関連する新たな作業プログラムの採択。生物多様性の保全、生物多様性の持続可能な利用、利益の公正かつ衡平な配分に対する先住民族と地域コミュニティの有意義な貢献と、昆明・モントリオール生物多様性枠組の実施を確保するための具体的な課題を定めた。同プログラムを通じて、先住民族と地域社会の権利、貢献、伝統的知識が、グローバル・アジェンダにさらに組み込まれることになる。8条j項のための新たな常設補助機関を設立することでも合意し、今後2年をかけ活動方針を策定していくこととなった。

 一方、昆明・モントリオール生物多様性枠組の目標の一つとして掲げられている2030年までに毎年2,000億米ドルの資金動員を実現する「資源動員戦略」と、生物多様性に害を及ぼす補助金年間5,000億米ドルを2030年までに削減する目標については、交渉がまとまらず、CBD COP16の再開後に採択を目指すこととなった。

 資金動員に関するここまでの成果としては、政府、民間セクター、慈善団体からの拠出を受け入れ、発展途上地域におけるインパクトの高いプロジェクトに資金を提供する「世界生物多様性枠組基金(GBFF)」が設立。現在までに、11のドナー国とケベック州政府がGBFFに約4億米ドルを拠出しており、COP16では1億6,300万米ドルの拠出コミットメントが得られた。また、中国政府から2億米ドルの拠出を受け、「昆明生物多様性基金(KBF)」も創設された。

 生物多様性と健康の関係では、「ワンヘルス・アプローチ」を強化するため、締約国が人獣共通感染症の発生を抑制し、非感染性疾患を予防し、持続可能な生態系を促進するための「生物多様性と健康に関する世界行動計画」を採択した。同計画では、公衆衛生専門家の関与を促し、生物多様性と健康に関する国のフォーカルポイントを指定することで、農業から都市計画まで幅広い分野の政策に生物多様性と健康の視点を統合するよう各国に求めている。さらに、世界保健機関(WHO)を含む国際機関と緊密に協力し、生物多様性と健康の進捗状況を評価するためのモニタリングツールや評価指標を開発することも求めた。

 遺伝子組み換え技術に関しては、カルタヘナ議定書の強化を求める声が大きくなり、遺伝子組換え生物(LMO)がもたらすリスク評価に関する新たな自主的ガイダンスが承認された。同ガイダンスは、環境リスク評価のために利用可能な最良の科学的資源とガイダンス資料をまとめたもので、同時に予防的アプローチも強調している。

 他には、注目を集める合成生物学の分野での発展途上国の遅れを支援するため、国及び先住民族や地域コミュニティのキャパシティビルディング、技術移転、知識共有のニーズに対応するための新しいテーマ別行動計画も採択。侵略的外来種については、新たなデータベース、国境を越えた貿易規制の改善、Eコマースプラットフォームとの連携強化を含む管理ガイドラインの策定についても議論が及んだ。議論が8年以上停滞していた生態学的または生物学的に重要な海洋地域(EBSAs)を特定するためのプロセスについても、仕組みを構築していくことで合意に達した。

 各国での動きでは、昆明・モントリオール生物多様性枠組の目標達成のための生物多様性国家目標を事務局に提出した国は、締約国196カ国中119カ国に達した。さらに、国別目標の実施を支援する政策文書として、現在までに44カ国が生物多様性国家戦略と行動計画を提出済み。

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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