金融庁は7月15日、中部電力が50.03%出資する日本エスコンの子会社エスコンアセットマネジメントに対する行政処分を発表した。忠実義務違反の事案。
今回の事案では、エスコンアセットマネジメントは、エスコンジャパンリート投資法人の運用資産の取得に関し、複数の親会社からの取得物件の不動産鑑定評価を低く操作していた。具体的には、不動産鑑定を依頼する際、親会社の売却希望価格を上回る鑑定評価額を得ることを企図し、複数の不動産鑑定業者から不動産鑑定評価に係る概算額を聴取。そのうち最も高い概算額を提示した不動産鑑定業者の鑑定報酬額が、概算額を聴取した他の不動産鑑定業者と比して最も廉価になるよう、当該不動産鑑定業者と交渉していた。
さらに、同社は、当該不動産鑑定業者による概算額が最も高かったことを伏せたうえで、当該不動産鑑定業者の鑑定報酬額が最も廉価であることを理由に、当該不動産鑑定業者を鑑定評価の依頼先として選定していた。これは、親会社の売却希望価格で本投資法人に取得させることを最優先とした不適切な不動産鑑定業者選定プロセスであると認められる。
また、親会社等の利害関係者が保有する不動産を本投資法人に取得させる際には、第三者である不動産鑑定業者に対して、取得させようとする不動産の鑑定評価を依頼し、算定された鑑定評価額を上限として当該不動産の取得価格を決定していたが、同社は、不動産鑑定業者から提示された鑑定評価額に係る中間報告または概算額が親会社の売却希望価格に満たなかった3物件の不動産に関し、親会社の売却希望価格を優先し、親会社の売却希望価格を伝達する。鑑定評価額が当該売却希望価格を上回るものとなるよう、算定を依頼した不動産鑑定業者に対し、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていた。
これらの行為は、親会社の利益を優先し、運用ファンドの利益を毀損する「忠実義務」に違反すると認定された。証券取引等監視委員会が6月17日に行政処分を勧告し、金融庁が勧告に基づき行政処分を下した。
行政処分では、まず7月15日から10月14日まで、新たな資産運用委託契約の締結禁止及び不動産の取得に関わる運用指図を禁止する業務停止命令を発出。加えて、投資法人に投資主に行政処分の内容を伝えることと、業務運営方法を見直す業務改善命令も出した。社内プロセスの明確化、再発防止策の策定、経営陣の所在明確化に関しても8月15日までに金融庁への書面提出が要求される。
【参照ページ】株式会社エスコンアセットマネジメントに対する行政処分について
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