欧州委員会は1月27日、化学業界の気候変動トランジション・パスウェイを発表した。EU加盟国政府、化学業界、NGO等のステークホルダーと共同作成した。
同ロードマップは、2050年までの計画を示したもの。産業競争力、投資・資金調達、技術開発、法規制、エネルギー・重要資源へのアクセス、インフラ、スキル、社会的側面の合計8つの要素を検討。それを基に、アクション、テクノロジー、法規制の3カテゴリーのロードマップを提示した。全体では、26分野で150以上のアクションリストをまとめた。
アクションのカテゴリーでは、「協働・イノベーション」「クリーンエネルギーへのアクセス」「重要資源へのアクセス」の3つのロードマップを作成。協働・イノベーションでは、サプライチェーンの分析から始まり、サプライチェーンリスクを低減するための重要分野への投資や、最終的には自由貿易協定(FTA)等へとつなげていく。新たな産業でのクラスター化も進めるため、ターミナルの建設等も進める。
クリーンエネルギーへのアクセスでは、EUがエネルギー政策として掲げている「REPowerEU」を基軸とすることを確認。競争力のある化学業界を築くためにも、クリーンエネルギーの供給増を図る。
【参考】【EU】欧州委、REPowerEU採択。ロシア産天然ガス依存度低下へ28兆円。原発も言及(2022年5月20日)
重要資源へのアクセスでは、サーキュラーエコノミー化による廃棄物資源やバイオマス資源の確保を柱とし、重要資源の確保を加速するためのEUタクソノミーの検討にも言及した。
テクノロジー・ロードマップでは、電化、水素、バイオマス、廃棄物、炭素回収・利用・貯留(CCUS)、プロセス効率化の6つを挙げた。それぞれEUの既存政策との位置づけを確認した。
法規制では、REACH規則やCLP規則の改正を行い、2025年から2030年の間に施行を開始。PFASを含めた規制物質も順次展開していく。産業排出指令(IED)の改正も目下進めており、2025年頃から施行する考え。
【参考】【EU】欧州委、工場と畜産農場の汚染物質削減強化でEU指令改正案発表。Fガス規則改正案も(2022年4月11日)
今回のロードマップについて、EUの企業業界団体のIndustriAllは、「このロードマップが化学産業のトランジションを導く鍵となる」と語りつつ、スキルや社会的側面から公正な移行(ジャスト・トランジション)を進めるための立法措置の必要性を強調。さらに未来のために今日から大規模投資を展開していくことが重要とした。
また、気候債券イニシアチブ(CBI)も、「EU化学産業トランジション・パスウェイは、短期、中期、長期の化石燃料からのデカップリングを達成するために、主要な政策手段やスケールアップが必要な主要技術について有用な概要を提供している」と評価した。
【参照ページ】Transition pathway for the chemical industry
【参照ページ】Transition Pathway for the EU chemical sector published
【参照ページ】The EU Chemical Industry Transition Pathway: A good kick-off for the transition of European chemicals towards net zero
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