国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)で開催されたパリ協定第5回締約国会議(CMA5)では、パリ協定第6条で規定されている市場メカニズムの運用ルールについても議論されたが、意見が対立し、進展がなかった。
【参考】【国際】パリ協定6.4条メカニズムの詳細ルール調整が大詰め。苦情処理やCDR評価手法で進展(2023年9月25日)
パリ協定第6条では、パリ協定締約国の国別削減目標(NDC)の達成について、自国での削減以外の手法として、削減成果を二国間で移転する協力的アプローチ共通ガイダンス(6.2条)、高品質のカーボンクレジットを用いた国連管理メカニズム(6.4条)、削減成果の移転を伴わない機会創出型の非市場アプローチ(6.8条)の3つが設けられている。
今回のCOP28では、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)が12月6日までに、6条の運用ルールについて議論。しかし、そこで決着がつかず、CMA5の場で交渉が継続されたが、まとまらなかった。CMAでの承認が必要な作業については、少なくとも2024年のCOP29まで承認が延びる形となる。
6.2条に関しては、国際的に移転された緩和成果(ITMO)の承認手続きや移転取引の毎年の報告、国際登録簿の詳細ルール等を議論したが、EUが、二国間及び多国間の移転取引により発生リスクのある二重計上防止等で集中的なモニタリングを国連が行うべきと主張したのに対し、過度な手続きを嫌う米国が反発した。
日本のJCMも対象となる6.2条ルールについては、すでに複数の国で実証運用が始まっており、6.2条ルールの完成が待たれている。しかし、今回妥結できなかったことで、引き続き実証運用のまま継続する形となった。
6.4条に関しては、すでに運用を担う「6.4条監督機関」が創設されており、2024年以降の監督機関の作業や実際の運用フローを固める議論が行われた。特に、カーボンクレジットの創出メソドロジーについての議論が多く残っており、方法論ガイダンスがCMAで採択されれば、6.4条メカニズムの下で新たなメソドロジーが提出できるようになる予定だった。二酸化炭素除去(CDR)についての方法論についても勧告ガイダンスの作成作業が続けられた。しかし、CDRクレジットのメソドロジーに関し意見の隔たりが大きく、COP28の会期中に妥結できなかった。
6.2条と6.4条の運用に関しては、カーボンクレジットの活用を伴いながら二国間で移転されるケースもあるため、相互を包括したルール形成が必要になっている。そのため、6.2条の登録簿と6.4条の登録簿の相互作用についての議論も重要な状況。そのため、どちらかが固まらなければ、双方ともに固まらない状況にある。
6.8条に関しては、すでに2023年のCOP27で大筋合意できており、今回はウェブベースのプラットフォーム開発の最終決定に向けた議論が中心となった。6.8条については、2024年6月のボン会合まで引き続き実施作業の議論が続く。
6条メカニズムの詳細が遅れるほど、パリ協定締約国は自国での削減でNDCを達成する必要が出てくる。
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