Sustainable Japan QUICK ESG研究所

【環境】世界で広がる水不足 〜日本の水は本当に安泰なのか?〜 2014/07/10 体系的に学ぶ

地球と水

地球は本当に水の惑星?

「水の惑星」と呼ばれる地球。地球の表面の3分の2は水で覆われており、約14億立方キロメートルの水があると言われています。一見、潤沢にありそうにみえる水。しかし水資源は今、希少資源として呼ばれるまでになっています。背景にあるのは、人間の生活様式の変化です。生活に欠かせない水。その水の希少資源化は私たちの生活に今後どのような影響を与えていくのでしょうか。

地球の水のうち、水資源はわずか0.01%

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(出所:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)

宇宙から見える地球の青い姿。しかしその中で、私たちの生活に利用可能な水資源は、わずか0.01%しかありません。地球上の水の多くは塩分を含む海水で、その割合は97%。残りの淡水も、多くは氷雪、氷河の形態で存在しており、利用はできません。さらに、残りの液体状の水のうち、ほとんどは地下水として地中深くに浸透しており、人間が利用可能な淡水はたったの0.01%しかないのです。この0.01%しかない貴重な水資源も、汚染してしまえば当然、利用ができなくなります。これが、「水の惑星」地球で、水不足が発生する基本的な構造なのです。

世界人口の増加とともに進む水不足

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(出所:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)

水不足を招いている最大の要因は人口増加。日本国内では人口減少という言葉も耳にしますが、世界全体では依然人口は増加していきます。人口増加と人間の水利用量の間には高い相関関係があり、2025年までの数値予測でも人口と水利用量はともに急増する見込みです。

地域ごとの水資源利用量

(出所:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)

著しく水利用量が増加している地域は、経済発展めまぐるしいアジア。1950年には860億tだった使用量は、2025年には3,104億tまで3.6倍に拡大する見通しです。さらに、2025年の段階では水使用量が少ないアフリカ、中南米も、将来的に水使用量が増えていく可能性が高い予備軍です。

生活が豊かになるに連れ、人々が利用する水資源量は増加します。生活の豊かさそのものを抑制するという考え方も過去数十年の間に叫ばれましたが、その試みは成功したとは言えません。人々が自分の生活の豊かさを犠牲にするのは簡単ではないからです。結果的に描けてしまうのは、今後数十年は水資源の需要が増加していくという道筋です。

気候変動も水資源可能の上での大きなリスク要因

気候変動と水資源

(出所:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)

人口増加で水利用量増加が確実に見込まれる上に、気候変動もさらなるリスク要因となります。気候変動により降水量は増えも減りもするかもしれませんが、人間が利用可能な淡水は減ります。まず、気候変動で地球の温度が上がり、海水面が上昇すると、海水の量は増え淡水の量は減ると言われています。結果的に、人間が利用可能な淡水の量は減ります。また、気候変動で気温や降雨量の変動幅が拡大すると、それに対応するための社会インフラや貯水技術などが必要となり、水に対して社会はより脆弱になります。その上、上の図にあるように、気候変動は生態系の変化ももたらし、水資源利用可能量を減らす恐れもあります。気候変動は水資源にとって大きなリスク要因なのです。

先進国でも悪化している水ストレス

水ストレス

(出所:World Resources Institute “AqUEDUCT GLOBAL MAPS 2.0″)

では、それぞれの地域でどのぐらい水資源は深刻化していくのでしょうか。水資源の枯渇化を示す代表的な尺度に「水ストレス」があります。水ストレスとは、「人口一人当たりの利用可能水資源量」のことで、図の濃い赤の地域は、その地域の水資源供給量に対して需要が多く、需給が逼迫している状況を示しています。反対に、赤色が薄い地域は、供給量に対する需要が少ない状況を示しています。世界の中で水ストレスが高い地域は、人口密度の高い東アジアや米国西部及び東海岸、また水供給の少ないアフリカ・中東アジアから南アジアにかけて。水消費量の増加が著しいアジア地域では、急速に水インフラ整備プロジェクトが進行していますが、豊かさの上昇にまだインフラは追いつけていません。ちなみに、この図の中で、日本も水ストレスが高い地域と認識されています。しかしながら、日本に住む人々にとってそこまでの深刻感は感じてはいないでしょう。では、どうして日本は比較的水資源に困らない生活ができているのか。そのカラクリは、後述するように、日本は他国から水資源を大量に輸入しているからです。

国内でミネラルウォーターの需要は急増。輸入にも依存。

ミネラルウォーターの国内供給量

(出所:日本ミネラルウォーター協会「ミネラルウォーター類 国産、輸入の推移」)

国内の水状況を知る上で、最初に水資源の代表選手「飲料水」から見てみましょう。国内のミネラルウォーター市場は2000年代から急拡大。特に、2006年の健康ブーム、2011年の東日本大震災でミネラルウォーターの需要と供給は急増しました。日本人が安全な水を買い求めるようになった行動変化に対応して、日本人に人気の高い国産ミネラルウォーターの増産が急ピッチで進んでいますが、それでもニーズに追いついてはいません。不足量は海外からの輸入(エビアン、ボルビック、クリスタルカイザー)で補われています。高コスト体質の国産ミネラルウォーターの増産は今後ペースダウンするとも言われており、将来急激な需要増がある場合には輸入で賄わざる得ない状況となりそうです。ですが全体的には、日本の飲料水の輸入シェアはわずか10数%と高くはありません。このように、日本が大量に輸入している水資源は、飲料水ではありません。

仮想水換算では日本は世界最大の水資源輸入国

世界の水利用用途

(出所:Aquastat)

こちらは世界の水利用の用途を示したものです。飲料水を含む生活用水(トイレ、風呂、選択、料理など)は全体の8%でしかなく、その他は70%の農業用水と22%の工業用水です。人間は水資源を生活用水としてではなく、食糧や工業製品の生産用途で使っているのです。すなわち、水不足によって打撃を受けるのは、直接口にする飲料水ばかりか、人間生活を支える生産活動全般なのです。

それでは、日本はどのような水資源を大量に輸入しているのでしょうか。水資源の分野には「仮想水(バーチャル・ウォーター)」という考え方があります。食糧や工業製品の生産には、食糧を栽培するのに必要な水、家畜の飼育に必要な水、さらにその家畜の肥料を育てるのに必要な水、工業生産の加工や洗浄に必要な水など大量の水資源を必要とします。仮想水とは、その食糧や工業製品を輸入している国において、もしその輸入食糧や輸入工業製品を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。

日本の仮想水輸入量

(出所:JICA)

日本の仮想水輸入量は2005年時点で約804億t、世界最大の仮想水輸入国です。つまり、日本は水そのものの輸入はそれほど多くはありませんが、食糧や工業製品の輸入国として、本来国内で生産したら必要であったはずの水資源を他国で支給してもらっているのです。これが、日本は水ストレスが高い国であるにもかかわらず、水不足に苦しまないでいられるカラクリです。

日本の仮想水輸入量804億tはとても膨大です。国内の実際の水利用量は下図のように800億t超。すなわち、日本は国内の実際の水利用量とほぼ同量の水を仮想輸入している計算になるのです。

日本の水利用量

(出所:国土交通省)

日本の未来と世界の未来

2003年 世界の水消費量マップ

(出所:Pennsylvania State University)

日本は高い経済力のおかげで、他国から水資源を仮想水という形で調達し、世界の中でも豊かな生活を送ってきました。水資源を大量に必要とする牛肉や電化製品に囲まれた日本は、上の図にもあるように、お腹いっぱいに水を含んで、消費ができる幸せな環境です。ところが、これからはそうもいきません。冒頭で見たように、アジア諸国を始め、世界各国では水の消費量が増えてきています。これまでは、日本が世界からかき集めてこれた水資源も、世界の水資源の総量が増えなければ、確実に減少していきます。今、日本国内と海外の両面において、淡水の効率的な利用を追求する大きな必要性があります。飲料水が豊富にある日本といえども、生活の豊かさを維持していくためには、世界の水不足と向き合っていかなければならないのです。

文:サステナビリティ研究所所長 夫馬賢治

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