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【環境】2016年 CDPレポート 〜気候変動・ウォーター・フォレストとAリスト入りした日本企業〜 2017/02/21 体系的に学ぶ

 環境分野で企業の情報開示を促す国際NGOのCDPは、2016年後半に、「気候変動」「ウォーター(水)」「フォレスト(森林)」分野での2016年度レポートを続々と公表しました。この報告書には、各分野の最新動向、世界的な企業動向、各企業の評価が発表されています。

【参考】CDPとは・意味(2016年2月20日)

 CDPは世界から年々大きな注目を集めています。2015年から2016年にかけて、世界では持続可能な社会に向けた2つの大きな動きがありました。一つはSD国連持続可能な開発目標(SDGs)の誕生、そしてもう一つは気候変動枠組条約パリ協定の発効です。SDGsでは企業の自発的なコミットメントが求められ、パリ協定で定められた2℃目標に向けた気候変動緩和や気候変動適応は、企業経営にとって新たなリスクと機会を生み出しています。

 CDPは、機関投資家と企業の対話を促すために発足しています。機関投資家はそれぞれのプログラムに署名をし活動を支援しており、気候変動では827機関、ウォーターでは643機関、フォレストでは365機関が署名をしています。

 CDPが送付してくる質問書に回答することは、企業自身にとっても大きなメリットがあります。気候変動や水、森林の分野での自身のインパクトを測定することにより、現状を正しく認識することができます。また、CDPの質問書は規格化されていて認知度も高いため、自社のレベルと他社との比較も容易に行うことができます。もちろん、情報公開を行い高い評価を得ることで、機関投資家に大きなプラスの判断材料を提供することもできます。

 今回は2016年度の各レポートの要点とAリスト入りした日本企業を見ていきます。

CDPレポートの要点

CDP気候変動レポート2016

 2016年度の気候変動調査では、企業からの質問書回答は世界1,089社に達し、回答企業の時価総額を合計すると35兆米ドル(約4,000兆円)に達します。また1,089社の温室効果ガス排出量の総計は、世界全体の12%を占める量です。署名している機関投資家数は827、運用資産総額は100兆米ドルに上ります。日本企業の回答社数は261社。日本の回答率は52%。米国の67%、欧州の88%、英国の67%には及びませんが、中国の10%、韓国の38%、インドの24%よりは高い回答率です。


(出所)CDP Climate Change Report 2016(日本語版)

 世界全体では、回答企業のうち85%がすでに総量や原単位ベースでの二酸化炭素排出量削減目標を立てています。日本でも海外でも、大企業に対しては、排出量のスコープ1、スコープ2を測定、報告することは義務化されてきています。その上で国際的に新たな取組事項となってきているのが、SBT(科学的根拠に基づく目標設定)とスコープ3の測定、報告です。

 SBT設定は、本来、SBTイニシアチブ(SBTi)に申請した後、目標設定内容についての審査を経て、正式に承認される必要があります。しかし、CDPの質問書の回答では、SBTiによる厳密なものだけでなく、自己申告で「科学的根拠に基づく目標設定」としている企業も含まれています。世界全体では、19%の企業が「科学的根拠に基づく目標設定をしている」と回答、また40%の企業が「2年以内に科学的根拠に基づく目標設定をするつもりだ」と回答しています。実際に、SBTiに申請されている排出目標は現在世界全体で85社、そのうち15社のみがSBTiから承認されています。

 日本企業に絞ったSBT設定状況では、総量目標設定企業では30社(10%)、原単位目標設定企業では44社(14%)と少数でした。しかし、2年以内にSBT設定する予定とした企業は、総量目標設定企業で147社(51%)、原単位目標設定企業では110社(36%)があり、既にSBT設定している企業と合わせると、2年以内には半数を超えそうな状況で、世界平均よりも高いペースです。SBTiの申請ベースでは、レポート発表時点では19社が申請し、今のところソニーと第一三共のみが承認されています。

 SBTiで申請から承認に至らない大きなハードルとなっているのが、スコープ3の測定、報告です。質問書に回答した日本企業のうちスコープ3を測定、報告している企業は、総量目標設定企業で57社(20%)、原単位目標設定企業で54社(18%)ありました。

 SBTやスコープ3への対応が比較的早い日本企業ですが、遅れている分野は排出量の外部検証・保証です。外部検証・保証を受けている企業の割合は、日本は61%。世界では、北米63%、欧州70%、アジア71%であり、日本は企業内独自の測定、報告が多いことがわかります。

 また同レポートでは、企業が設定している目標がパリ協定の2℃目標に則しているかも分析されています。企業の努力により2030年までの自主目標ベースで二酸化炭素排出量を10億t削減できる見通しです。しかし、2℃目標を達成するには40億t削減の削減が必要と言われており、企業の目標は必要量の4分の1しかありません。より一層の削減努力が求められていきそうです。レポートでは、内部的カーボンプライシングや再生可能エネルギー発電目標設定が、一つの対策例として挙げられています。

CDPウォーターレポート2016

 2016年度のウォーター調査では、企業からの質問書回答は世界672社。署名機関投資家数は643、運用資産総額は67兆米ドルです。日本企業の回答社数は261社。日本の回答率は63%。この回答率はカナダの66%に次いで世界2番目に高く、米国は48%、英国50%、フランス46%、ドイツ54%、韓国38%を上回っています。日本の非上場企業への質問書回答社数41は、米国の27社を大きく引き離し断トツの世界1位です。


(出所)CDP Water Report 2016

 世界全体では、回答企業のうち、水使用量削減に関する目標を設定している企業は54%に留まっています。気候変動の85%と比べるとかなり低い取組率だと言えます。この背景には、二酸化炭素排出量と異なり妥当な目標設定手法が確立されていないということがあるため、CDPは今後妥当な設定方法の開発に取り組んでいきたいとしています。業界別に見ると、食品や消費財メーカーの取組が進んでいることが分かります。

 また日本企業は、回答率は高いものの、取組状況に課題が多いのが実状です。水リスクが企業にもたらす影響度合いを報告している企業の割合では、南アフリカが65%と最も高く、韓国47%、カナダ37%、英国36%、オーストラリア35%、フランス32%、米国29%、トルコ21%、ドイツ20%、日本13%と、調査10ヶ国の中で最低です。世界的に企業は水リスクのインパクト定量化を進めており、水リスクがますます経営判断の中に取り込まれるようになってきています。

CDPフォレストレポート2016

 2016年度のウォーター調査では、企業からの質問書回答は世界201社。署名機関投資家数は365、運用資産総額は22兆米ドルです。日本企業の回答社数は32社です。CDP Forestsの質問書は、森林破壊の主たる要因として「木材」「パーム油」「畜牛」「大豆」の4つを定め、それぞれについて調査、分析を行い、企業評価を行っています。

 レポートからは、72%の企業が将来に渡り4品国の安定供給に自信を示した一方、42%の企業しか今後5年から10年の森林リスクインパクト評価をしておらず、自信が極めて脆弱なことがわかります。実際に81%の農業関連企業は過去5年間の間に森林リスクが経営に影響を及ぼしたとも回答しています。回答企業全体の売上のうち24%は、上記4品目で占められており、早急なリスク評価への取組を求めています。

Aリスト入りした日本企業

気候変動

 世界193社。日本企業は22社。

  • 住友林業(製造業)
  • ソニー(製造業)
  • トヨタ自動車(製造業)
  • 日産自動車(製造業)
  • 横浜ゴム(製造業)
  • 小松製作所(製造業)
  • 東芝(製造業)
  • ナブテスコ(製造業)
  • 三菱電機(製造業)
  • キヤノン(製造業)
  • コニカミノルタ(製造業)
  • アサヒグループホールディングス(食品・消費財)
  • キリンホールディングス(食品・消費財)
  • 日本たばこ産業(食品・消費財)
  • SOMPOホールディングス(金融)
  • 第一生命ホールディングス(金融)
  • 大東建託(不動産)
  • 鹿島建設(建設)
  • 大成建設(建設)
  • 戸田建設(建設)
  • 川崎汽船(サービス)
  • セコム(サービス)

ウォーター

 世界25社。日本企業は6社。

  • ソニー(製造業)
  • トヨタ自動車(製造業)
  • 三菱電機(製造業)
  • 花王(食品・消費財)
  • キリンホールディングス(食品・消費財)
  • サントリー食品インターナショナル(食品・消費財)

 ソニー、トヨタ自動車、キリンホールディングス、三菱電機の4社は、気候変動とウォーターの双方でAリスト入りを果たしています。

フォレスト(木材)

 世界8社。日本企業は0社。

フォレスト(パーム油)

 世界2社。日本企業は0社。

フォレスト(畜牛)

 世界1社。日本企業は0社。

フォレスト(大豆)

 世界1社。日本企業は0社。

 フォレスト4品目では、日本企業のAリスト入りはなりませんでした。世界でフォレスト4品目全てでAリスト入りを果たしたのはユニリーバです。
 
 A-リストでは、花王が木材、パーム油の2分野で、大日本印刷が木材で、マツダが木材で、味の素がパーム油でそれぞれA-リスト入りを果たしています。

【報告書】CDP気候変動レポート2016
【報告書】CDP Climate Change Report 2016
【報告書】CDP Water Report 2016
【報告書】CDP Forests Report 2016

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル 代表取締役社長兼サステナビリティ研究所所長

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