【アメリカ】オバマ前政権の環境規制の経済効果は大きい。コロンビア・ロースクール論文 2017/08/21 最新ニュース

 コロンビア大学ロースクールの気候変動関連法の研究機関「サビンセンター(Sabin Center)」に所属するジェシカ・ウェンツ氏とナディア・ラフマン氏は今年8月、オバマ前政権時代の気候変動規制強化による経済利益が年間3,000億米ドル以上あったとする論文「The Price of Climate Deregulation」を発表した。トランプ現政権は、オバマ前政権時代の環境規制は経済活動に有害だとし規制撤廃を進めているが、今回の論文では、むしろ環境規制が大きな経済効果があったことを示す内容となっている。

 ウェンツ氏とラフマン氏は、主に二酸化炭素とメタンに関する主要な規制の経済影響を分析。分析対象としては、米環境保護庁(EPA)による「クリーンパワープラン」、土地管理局(BLM)のメタン・廃棄物防止規制、EPAの2016年の石油・ガス分野の新たな供給源による実績基準、EPAの軽量自動車と中型・大型車の排出基準に焦点を当てた。経済影響分析では、EPAとBLMの規制効果がもたらす経済効果に懐疑的な見方を示す他の研究者らの先行研究も参照した。

【参考】【アメリカ】オバマ政権、クリーンパワープランを公表。2030年までに発電所のCO2排出を32%削減へ(2015年8月19日)

 分析の結果からは、2030年までに二酸化炭素を9億8,000万t削減できることによるプラスの影響と、窒素酸化物(NOx)等の汚染物質削減による健康上の利点を含め、3,700億米ドルの経済効果が得られることが明らかになった。一方、これらの規制実施には840億米ドルの費用がかかると算出され、効果は費用の4倍以上だとした。また、単年度ベースでも、経済利益は実施費用を大幅に上回るか最低でも一致するレベルという結果となった。とりわけ、経済効果に大きく寄与したのは、クリーンパワープラン導入や中型・大型車の排出基準規制から得られるものだった。

クリーンパワープラン

 EPAの見積もりによると、規制の経済利益は2020年に約70億米ドルになり、2030年には460億米ドルに上昇すると試算。これらの数値には、コンプライアンスコスト(規定遵守に関連するコスト)、2020年のCO2排出量の推定減量7,400万tおよび2030年の3億7,500万tの削減分が含まれる。また、二酸化硫黄などや窒素酸化物(NOx)等汚染物質の削減分も算定に含まれている。しかし、環境汚染による早すぎる死亡の回避、危険な汚染物質への暴露の低下、生態系への影響等は含まれていない。

自動車の排出ガス

 軽量乗用車の燃費向上だけで、自動車の排出ガス規制を実施するコストを相殺することができる。2012年から2016年のモデル年の燃費基準の経営利益は、2020年に347億米ドル、2030年には1,004億米ドルになると予測。一方、2017年から2025年のモデル年の燃費基準は、2020年には1,680億米ドル、2030年には814億米ドルの経済利益を創出するとした。EPAのデータを基に計算した場合、中・大型車の排出ガス規制の第1段階である2014年から2018年のモデル年の燃費基準は、2020年に100億米ドル、2030年に273億米ドルの純利益をもたらす可能性がある。第2段階の2019年から2028年のモデル年の基準は、2020年に315億米ドル、2030年には744億米ドルの経済利益が見込まれる。

石油・ガス分野の新たな供給源によるパフォーマンス基準

 クリーンパワープランの場合と同様に、炭素量の社会的コストを使用して、新規または改善された供給源から排出されるメタン、揮発性有機化合物、および有毒な大気汚染物質の管理にかかる経済利益を計算した。規定の経済利益は、2020年には3,700万米ドル、2025年には1億8,000万米ドルとなる可能性がある。これらの数字には、コンプライアンスコストおよび2020年のメタン排出削減量30万トン、2025年の削減量51万トン分が含まれる。

メタンおよび廃棄物防止規則

 このBLMの規定は、公共用地および先住民族の土地でメタン放出、燃焼および漏出を削減することを目的としている。強力な温室効果ガスの排出を防止することにより、経済利益は、2020年には1億2,600万米ドル、2025年には1億9,700万米ドルとなる可能性がある。この金額は、2020年には約17万7,000t、2025年には17万9,000tの削減量を基にして算定された。回収された天然ガスの再販価額およびコンプライアンスコストが含まれている。

 今回の経済効果分析には、雇用創出にプラス影響や健康悪化によるマイナス影響は計算に含まれておらず、これらを含めることで、さらに経済効果が大きくなると考えられる。

【参照ページ】Obama Emissions Rules Could Yield $300 Billion Annually by 2030
【論文】The Price of Climate Deregulation

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