【イギリス・インド】首脳会談開催。英印FTAに向け貿易額倍増で合意。気候変動・コロナ対策でも

　英ボリス・ジョンソン首相と、インドのナレンドラ・モディ首相は5月4日、オンライン首相会談を開催。将来的な英印自由貿易協定（FTA）に向け、2030年までに両国間の貿易を現在の230億ポンド（約3.5兆円）から倍増させ、新たに両国間で10億ポンド（約1,500億円）の通商・投資を実現させることで合意した。他にも気候変動や新型コロナウイルス・パンデミック対策でも合意に達した。

　今回の10億ポンドの通商・投資では、まず、インドから英国内への投資分が5.33億ポンド。そのうち、アストラゼネカ/オックスフォード大学製の新型コロナウイルス感染症ワクチンを生産するセラム・インスティチュート・オブ・インディア（SII）が英国内でワクチン事業や営業所を設置する資金が2.4億ポンド。SIIの英国営業所では10億ポンドの売上を見込み、そのうち2億ポンドは英国内に再投資される。SIIは、すでに1回接種型のコロナワクチンの開発をCodagenix INCと共同で開始している。他にもインドIT大手インフォシスやウィプロ、MPhasisも英国で各々1,000人の雇用を増やす。これらにより、英国政府は英国内で全体で6,000人の雇用創出を見込む。

　また、英企業は、インドに対し、新たに4.46億ポンドの輸出を実行する。具体的には、外科手術ロボット「Versius」だけで2億ポンド。他にも医療やテクノロジー領域での輸出を強化。これら輸出拡大策で英国内に400人の雇用創出を見込む。

　気候変動の分野では、グリーン成長の分野で2億ポンド（約300億円）の投資分野で合意した。具体的には、洋上風力発電、送配電や蓄電の改善、電気自動車（EV）の発展、グリーン水素等のエネルギー転換の分野での協働で合意した。また、インド政府が進める再生可能エネルギー電力の国際連系ビジョン「One Sun One World One Grid（OSOWOG）」を英国政府も支援し、国際的な「グリーン・グリッド・イニシアチブ」を11月の第26回気候変動枠組条約グラスゴー締約国会議（COP26）で立ち上げることにした。また、英国とインドの両政府が共同議長を務める「災害レジリエント・インフラ連合（CDRI）」で、島嶼国でのインフラ整備を行うための支援を行うことでも合意した。

【参考】【インド】政府、東南アジアからアフリカまで140ヶ国以上の太陽光発電連系構想発表。提案書募集（2020年6月14日）

　両政府はまた、インドのエネルギー計画を検討するための「インド・エネルギー安全保障シナリオ計算」イニシアチブでも協働し、英政府としてインドのエネルギー計画に関与する大きな足がかりを得た。その上で、官民のブレンデッド・ファイナンスを推進することでも一致した。生物多様性のための森林保護プログラムでも合意している。

　インドで深刻に拡大している新型コロナウイルス・パンデミックでは、英ジョンソン首相は、官民財団のブリティッシュ・アジアン・トラストが4月末に160万ポンド（約2.4億円）の義援金を集め、必要な機材等を送ることを報告。4月には英政府から、人工呼吸器200台と、酸素濃縮器495台もインドに寄付した。さらに英政府は5月7日、18t級の酸素製造機3台、人工呼吸器1,000台を追加寄付したことも発表した。

【参照ページ】Prime Minister announces £1 billion of new UK-India trade
【参照ページ】UK and India announce ambition to double trade by 2030
【参照ページ】UK and India deepen work on climate change on the road to successful COP26
【参照ページ】More life-saving support for India on its way from UK

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