14カ国の首脳で構成される「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」は3月3日、共同首脳声明を発表。2030年までに沿岸・海洋での観光でサステナブル・ツーリズムに転換するためのアクションにコミットした。
同ハイレベル・パネルは、ノルウェー主導で2018年に発足。ノルウェーとパラオが共同議長を務めている。参加国は、日本、ノルウェー、パラオ、オーストラリア、カナダ、チリ、フィジー、ガーナ、インドネシア、ジャマイカ、ケニア、メキシコ、ナミビア、ポルトガルの14ヶ国。2022年12月には、「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル」を開催し、首脳文書「持続可能な海洋経済のための変革 保護、生産及び繁栄に関するビジョン」を採択している。今回のコミットもその一環。
【参考】【国際】日本含む14ヶ国政府、持続可能な海洋経済で2030年ビジョン合意。漁業、海運、観光、エネルギー等(2020年12月7日)
同会議は今回、沿岸・海洋の観光地の長期的な存続とサステナビリティのためには、今から自然環境再生アプローチに投資し、将来のレジリエンスを向上させることが重要との考えを披露。パリ協定と昆明-モントリオール国際生物多様性枠組、国連持続可能な開発目標(SDGs)とも接続していくことが重要とした。
【参考】【国際】生物多様性条約COP15、昆明-モントリオール生物多様性枠組を採択。ポスト愛知目標も確定(2022年12月20日)
今回の共同首脳声明では、優先事項として5つを特定し、行動にコミットした。
- 観光が依存する生態系を再生し、沿岸地域社会と先住民族のレジリエンスを高め、機会均等と利益の公平な分配を促進することで不平等を減らし、気候変動と公害に対処するサステナブル・ツーリズムに投資する。
- 環境、社会、経済の優先事項を推進するサステナブル・ツーリズム・マネジメント戦略を実施し、沿岸地域社会と先住民の完全な参加によるモニタリングと透明性のある報告を実現する。
- 観光収入の地元・先住民への再投資を増加させるメカニズムを導入し、観光における地元雇用の増加、経済機会の多様化、沿岸・海洋の再生・保護のための資源増加のためキャパシティとスキルを開発する。
- サステナブル・ツーリズムのインフラに自然を軸としたソリューション(NbS)を統合するための資金インセンティブを加速させる。
- 沿岸・海洋観光のための下水道・廃水インフラに投資し、沿岸コミュニティの健康を改善し、沿岸・海洋生態系へのインパクトを軽減する。
また今回同パネルは、専門家に委託して作成した報告書「沿岸・海洋観光の変革のための機会」も発行。沿岸・海洋観光は、世界の観光全体の50%以上を占め、多くの島嶼開発国や沿岸国にとって最大の産業となっていると紹介。各国政府や幅広いステークホルダーに対し、アクションを促した。「ネイチャー・ポジティブ・ツーリズム」も標榜した。
同分野では、ニューヨークの国連本部で開催されている「BBNJ(Biodiversity Beyond National Jurisdictions)」会議で国際条約制定に向けた交渉が行われている。今回の声明も、交渉協議の最終日に発表された。
【参照ページ】Joint Leaders Statement on Sustainable Coastal and Marine Tourism: Supporting Climate, Biodiversity and Sustainable Ocean Economies
【参照ページ】RELEASE: Ocean Panel Countries Call for a Shift Towards Sustainable Tourism to Safeguard the Ocean and Future of the Tourism Industry
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