
世界資源研究所(WRI)は8月14日、銀行世界大手25社の「ネットゼロ」コミットメント達成に向けた進捗状況を調査した結果を発表した。達成の目処が立っていないことを明らかにした。
対象となった25社は、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、シティグループ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴ、アマルガメーテッド銀行、ゴールドマン・サックス、HSBC、バークレイズ、BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、クレディ・アグリコル、ラ・バンク・ポスタル、BPCE、サンタンデール銀行、ドイツ銀行、ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)、トロント・ドミニオン銀行、中国工商銀行(ICBC)、中国銀行(BOC)、中国建設銀行(CCB)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループ、KB金融グループ、インテサ・サンパウロ。
WRIは今回、25社の進捗分析ツール「Financial Institutions Net Zero Tracker」をリリース。CDP、Banking on Climate Chaos、Forest 500、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、Transition Pathway Initiative(TPI)からデータを収集し、17指標に整理した。
各指標の状況では、石炭ダイベストメント、政策エンゲージメント、取締役会の監督、カーボンクレジット戦略、森林破壊防止、ジャスト・トランジション(公正な移行)については、比較的進展していた。一方、融資先へのエンゲージメント、石油・ガスダイベストメント、TNFD、経営陣への報酬指標への統合では不十分さがみられた。国別では、フランスが最も進展。他に、英国、日本、米国が続き、その後にスペイン、カナダ、ドイツ、イタリア等がきている状況。中国では、グリーンファイナンスと化石燃料ファイナンスの対比のみが大きく進展しており、化石燃料を減らす前に、巨額のグリーンファイナンスをしていることがわかった。数値は2023年11月時点。
サステナブルファイナンスの実行額では、JPモルガン・チェースが断トツ首位。グリーンファイナンス単独ではICBCが首位。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループは、首位の20%から25%程度の状況。実行額が全体の資産に占める割合では、ゴールドマン・サックスが8.6%で首位。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)、みずほフィナンシャルグループは1%程度台で下位。
石油・ガスに対するセクターポリシーの厳格さでは、HSBC、BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、BPCE、ラ・バンク・ポスタル、アマルガメーテッド銀行が比較的厳しい方針を設定済み。三菱UFJフィナンシャル・グループは、熱帯雨林や世界遺産での採掘に関するポリシーがあると認識された。三井住友フィナンシャルグループとみずほフィナンシャルグループは、中国の銀行と同様に、ポリシーなしの判断となった。
WRIは、今回の調査結果を踏まえ、高排出セクターに対する目標設定が緩く、目標水準を引き上げる必要があると指摘。また原単位と総量の双方のセクター排出量を開示すべきとした。さらにグリーンファイナンスが資産全体に占める割合が小さすぎるとし、割合を大幅に引き上げるよう求めた。現状のグリーンファイナンスと化石燃料ファイナンスの比率1.3:1を、10:1にすべきとした。さらに、グリーンファイナンスの定義が各社で差異があるため、横比較できるよう定義を共通化すべきとした。
【参照ページ】Banks Have Committed to Net Zero, but Aren’t on Track to Reach It
Sustainable Japanの特長
Sustainable Japanは、サステナビリティ・ESGに関する
様々な情報収集を効率化できる専門メディアです。
- 時価総額上位100社の96%が登録済
- 業界第一人者が編集長
- 7記事/日程度追加、合計11,000以上の記事を読める
- 重要ニュースをウェビナーで分かりやすく解説※1
さらに詳しく
ログインする
※1:重要ニュース解説ウェビナー「SJダイジェスト」。詳細はこちら