
国連食糧農業機関(FAO)は11月8日、農業・食料の年次報告書「世界食料農業白書(SOFA)」の2024版を発行した。内容面で、栄養観点を大幅に増強した。
今回の報告書では、2023年版をベースとし、食料システムに関する「隠れたコストと便益」の分析を深堀りした。2023年版では、食料システムがもたらす外部コスト(外部不経済)として、環境インパクト、社会インパクト、健康インパクトの経路を特定。154カ国を対象とした外部コストの定量化では、2020年に合計12.7兆米ドルに達し、そのうち健康コストが73%の9兆米ドルを占めていた。
今回の2024年版では、健康コストを精緻化するため、定量化手法を改良している。1つ目は、高体重指数(BMI)由来の隠れたコストは、農産物システム以外の要因によって引き起こされる可能性があるため除外。次に、BMIとのダブルカウントを防ぐため、以前は除外していた砂糖入り飲料の多い食生活の隠れた健康コストは追加した。3つ目は、NCD(非感染性疾患:生活習慣病)に関連する食事リスク要因で分類した。
その結果、2024年版での隠れたコストは、世界156カ国で11.6兆米ドルとなり、隠れた健康コストは約13%減少し、全体の7割を占める8.1兆米ドルとなった。NCDの13分類では、全粒穀物の摂取不足が18%、食塩の過剰摂取、果物の摂取不足が各々16%と高かった。
(出所)FAO
さらに、食料システムの類型として6つのカテゴリーに分類した。日本の隠れた健康コストは、米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランド等と同様に「工業化」型となっている。「工業化」型では、不健康な食事パターンが最も高い隠れたコストを生み出す食品システムで、不健康な食事パターンに対処するための介入が優先行動となる。その結果、隠れた環境コストのかなりの部分にも対処することができる。
(出所)FAO
他方、隠れた環境コストは、「多様化」カテゴリーで最も多く、7,200億米ドルを占める。次いで「正規化」「工業化」の順。GDPに占める割合で見ると、「機器長期化」カテゴリーが隠れた環境コストの負担が最も大きく、20%を占める。
隠れた社会コストでは、栄養不足と貧困が課題となっており、発展途上国では占める割合が高い。生計を向上させ、人道・開発・平和のネクサスを橋渡しすることの重要性が強調されている。
FAOは今回の報告書の中で、食料サプライチェーンに沿った持続可能な慣行の採用を促進し、農産物システムのステークホルダー間の力の不均衡を抑制するために、財政的・規制的インセンティブを提供することや、アフォーダブルで栄養価の高い食品へのアクセスを改善することを提唱。ラベリングや認証、自主基準、業界全体のデューデリジェンス・イニシアチブを通じ、温室効果ガス、有害な土地利用変化、生物多様性喪失を削減するインセンティブ付けを図っていくべきとした。
【参照ページ】FAO publishes the 2024 State of Food and Agriculture in the World report on 8 November
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