
三菱商事は8月27日、傘下の三菱商事洋上風力を代表企業とするコンソーシアムが応札していた3つの洋上風力発電プロジェクト全てについて撤退を決定したと発表した。コンソーシアムに参加していたシーテック親会社の中部電力も同日、同様の発表を行った。
【参考】【日本】三菱商事、洋上風力3案件の「事業性を再評価」。国家プロジェクトの事業完遂に暗雲か(2025年2月5日)
【参考】【日本】三菱商事のコンソーシアム、選定された洋上風力プロジェクトで地域等への考え方表明(2022年2月28日)
当該案件は、経済産業省と国土交通省が2021年12月に発表した洋上風力発電オークション第1弾で、「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3海域全てで、三菱商事エナジーソリューションズを中核としたコンソーシアムが選定されたもの。設備容量は合計1.7GW(134基)で、2028年から2030年にかけて商業運転を開始する予定だった。だが、入札価格が1kWh当たり11円台から16円台と競合他社より2割以上安く、当時から入札価格が低すぎることが話題となっていた。
三菱商事の中西勝也社長は同日、記者会見の中で、「新型コロナウイルスの蔓延やウクライナ危機に端を発し、サプライチェーンの逼迫、インフレ、為替、金利上昇」等により、各契約会社との協議によるコスト削減を努力したが、コストが約2倍にまで膨らんだと表明。さらに今後さらに増える可能性もあるとの見立てを伝えた。
また、経済産業省との協議の中で、洋上風力発電オークション制度による固定価格買取制度ではなく、FIP制度への転換(FIP転)も検討したが、それでも収支が赤字になるとの評価結果を伝えた。FIP転しても事業性が確保できないのは「制度の問題」と語った。
中西社長は、今回の事態を受け、地元関係者の期待を裏切る形となり「大変申し訳なく思います」と語った。地元に対する支援については「未来永劫ではないものの」今後も継続していくと伝えた。
同社の財務影響では、すでに2月の時点で、2024年4月から12月までの連結会計で522億円の損失を計上しており、これ以上の影響は軽微とした。一方、中部電力は連結会計で現時点で170億円程度の損失が発生することを見込んでいると発表した。
記者会見の中では、オークションの中で入札した価格が低すぎたのではという意見については、入札審査の中で事業計画の実現性と財務計画の適切性についても評価された上で、事業者に選定されていると説明し、同社には責任はないとの見方を伝えた。原因は応札後の市場環境の変化により、事業の収益性が確保できなくなったことにあるとした。
同社は今回、洋上風力発電を含む再生可能エネルギーは「日本にとって重要な電源であるとの認識に変わりはなく、事業環境を注視しながら、脱炭素社会の実現に向けて引き続き取り組」むと表明。また記者会見の中では、国内外の再生可能エネルギー開発については、重要性を強調しながらも、事業の位置づけについては、今回の会見ではなく、あらためて伝えていきたいという考えを語った。
中西社長は同日、経済産業省を訪問し、武藤容治・経済産業相に経緯を説明。武藤大臣は「信じられないというのが正直な気持ちだ。撤退の判断に至ったことは日本における洋上風力の導入に遅れをもたらすもので大変遺憾だ。地元の期待を裏切るもので、全国の関係者も大変注目している案件であり、洋上風力全体に対する社会の信頼を揺るがしかねない」と語った。
今回、三菱商事のコンソーシアムが撤退した3案件については、今後、事業の後継者を探していくことになる。三菱商事は、後継事業者の支援を行うことも表明しているが、日本政府の洋上風力発電の幕開けとなった第1弾案件のスケジュールが3年以上遅れることとなる。日本政府のエネルギー基本計画の目標達成にも妨げとなった責任は重いと言える。
【参照ページ】国内洋上風力発電事業に係る事業性再評価の結果について
【参照ページ】株式会社シーテックにおける国内洋上風力発電事業の開発取り止めに伴う当社の連結収支への影響
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