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【国際】G7プーリア・サミット、首脳コミュニケ発表。GHG2035年60%以上減を目標

 G7首脳は6月14日、イタリアのプーリア州でサミットを開催。「G7プーリア首脳コミュニケ」を発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領の他、アルジェリア、アルゼンチン、ブラジル、インド、ヨルダン、ケニア、モーリタニア、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)の首脳、フランシスコ・ローマ教皇も同席した。

 今回のコミュニケは、世界各地域での安全保障に関する記述が多い。ウクライナに対しては、G7は「ウクライナ向け特別歳入加速融資(ERA)」を開始し、年末までにウクライナに約500億米ドルの追加資金を提供することで合意。EU等の域内に保有されているロシア国債資産は、ロシア政府がウクライナ政府に損害賠償するまで凍結することを確認し、凍結したロシア国債から得られる将来の臨時収益を融資の返済等に充てる方法を整備することでも合意した。ロシアの金融システムへのアクセスを続ける中国等の事業体についての経済制裁を課し、ロシアへの物質的支援を直ちに停止しない個人・法人への経済制裁を強化することも表明した。ロシアがシャドーフリート(影の船団)を使ってG7の経済制裁を回避している「代替海運慣行」についても対抗措置を執るとした。

 イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区攻撃については、国連安全保障理事会決議(S/RES/2735(2024))を歓迎し、ハマスに対し、停戦提案を完全かつ明確に受け入れ、実施するようあらためて求めた。同時に、ハマスに影響力を持つ国々に対してもハマスが停戦を受け入れるよう求めた。イスラエルに対しては、国際人道法を遵守し、ラファ関門を含むすべての関連する陸路、アシュドド港を含む海路、そしてガザ全域を通じて、あらゆる形で完全、迅速、安全かつ妨げのない人道的アクセスを確保することを求めた。さらにイスラエルに対し、イスラエルによるパレスチナ入植地の拡大や入植地前哨基地の「合法化」等、二国家間解決の見通しを損なう一方的な行動を止めることも求めた。

 紅海に関しては、イエメンのフーシ派に対し、国際人道法上の義務を遵守し、紅海、アデン湾およびその周辺海域における攻撃を停止するよう求めた。G7は、EUの海上作戦「アスピデス」と米国主導の作戦「プロスペリティ・ガーディアン」をあらためて支持した。

 イランに関しては、核エスカレーションの中止・撤回と、民生に無関係な継続的なウラン濃縮活動を停止することを求めた。ロシア戦争を支援することを止め、弾道ミサイル及び関連技術を移転しないようにすることも求めた。MSCアリエス号とその乗組員及び積荷の即時解放も求めた。イラン国内での女性、少女、マイノリティーグループを中心とした人権侵害についてもあらためて深い懸念を表明した。

 中国に関しては、国際の平和と安全を促進するための努力を強化し、気候変動、生物多様性、汚染の危機への対処、合成麻薬の不正取引との闘い、世界的なマクロ経済の安定の確保、世界的な健康の安全保障の支援、脆弱な国々の債務の持続可能性と資金調達の必要性への対処のために、G7と協力することを求めた。また、中国政府の過度な産業補助政策が、グローバルな波及効果、市場の歪み、有害な過剰生産能力をもたらし、G7の労働者、産業、経済のレジリエンスと安全保障を損なっていると表明した。中国に起因するサイバー攻撃、台湾政府の世界保健総会(WHO)等の国際機関への参加支持、海洋秩序の一方的な現状変更、ロシアのウクライナ戦争でのウクライナ支持、チベット自治区、新疆ウイグル自治区、香港での人権状況にも言及した。

 北朝鮮に関しては、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や弾道ミサイル技術を用いた宇宙発射体の発射を含め、複数の国連安保理決議に違反して弾道ミサイル開発を継続していることや、ロシアに弾道ミサイルを輸出していることを強く非難。すべての大量破壊兵器及び弾道ミサイルの完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄をあらためて求めた。

 その他、ハイチ、リビア、スーダン、サヘル地域、ベネズエラ、ベラルーシにもG7としての立場を示した。

 気候変動に関しては、世界の温室効果ガス排出量を2019年比で2030年までに約43%削減、2035年までに60%削減することを「目標」と表現。昨年の「緊急性が高まっている」との表現から格上げされた。また国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)COP28で合意された、2030年までに世界の再生可能エネルギー容量3倍、エネルギー効率改善率を世界平均年率2倍にするコミットメントを歓迎。2030年までに電力部門に1,500GWの蓄電設備を導入する国債目標にもコミットした。

 原子力発電所に関しては、重視する国と重視しない国があるとの認識は昨年と同様だったが、核融合型原子力発電については、開発と実証を加速させ、民間投資と国民の関与を促進するために、国際協力を推進するとの考えで一致した。

 アフリカでのエネルギー転換では、コートジボワール、エチオピア、ケニア、モザンビーク、ナイジェリア、コンゴ共和国、南アフリカとともに、「アフリカにおける成長のためのエネルギー」イニシアチブを発足することで合意。クリーンエネルギー投資を促進していく。

 生態系に関しては、2030年までに世界全体で森林減少と森林・土地の劣化を食い止め、再生させることにコミット。生物多様性に有害な補助金を含むインセンティブを、2025年までに転換もしくは撤廃しつつ、2030年までに生物多様性の保全と持続可能な利用のための積極的なインセンティブを拡大し、遅滞なく初期措置を講じることもあらためて確認した。2024年末までに可能な限り高い野心を持ったプラスチック汚染に関する国際条約が採択されることを支持するとともに、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにしながらプラスチック汚染を撲滅することにもコミットした。

 一方、昨年盛り込まれていた、陸上交通でのカーボンニュートラルを2050年までに達成し、2035年までに乗用車の新車販売を100%電動車にすることと、2035年までにG7の保有車両からの二酸化炭素排出量を2000年比で50%以上削減することなどは削除された。米大統領選挙や欧州各国での選挙を前に、政治的にセンシティブな内容は控えたとみられる。

 AIに関しては、AIに関するグローバル・パートナーシップ(GPAI)や経済協力開発機構(OECD)等の動きを重視した。米労働省が5月に発表した「職場のAI原則」に関しても支持し、G7で行動計画を立ち上げることでも合意した。発展途上国でのAI支援では、国連開発計画(UNDP)と共同で「持続可能な開発のためのAIハブ」を設立するというイタリア議長国の決定を歓迎した。また出席したフランシスコ・ローマ教皇は、人間中心のAIという概念を遵守し、致死型自律兵器の禁止や、武器の発動を政府が判断すべきと強く主張した。G7首脳コミュニケでは、「AIの軍事利用は責任あるものであり、適用される国際法、特に国際人道法を遵守し、国際安全保障を強化するものである」とした。

【参考】【国際】OECD、AI原則改訂。生成AIリスクに対処。AI関係者に遵守呼びかけ(2024年5月5日) 【参考】【アメリカ】労働省、「職場のAI原則」発表。インディードとマイクロソフトの2社が早速コミット(2024年5月20日)

【参照ページ】G7 Apulia Leaders’ Communiqué

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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