ロンドン議会経済委員会は7月23日、ロンドンの気候変動対策状況に関する最新レポート、"Weathering the Storm: The Impact of Climate Change on London’s Economy"を公表した。同レポートでは気候変動がロンドンの経済に与える影響について、リスクと機会の双方の観点から分析したものだ。レポートの主な要点は下記の通り。
- ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄(FTSE100)企業のうち、54%は何の気候変動適応戦略も持っていない。
- 中小企業の60%が、異常気象への対処策を持っていない。
- ロンドンの化石燃料依存度の高い投資はリスクを増大させており、責任ある投資のために、投資先を石炭から移行すべきときが来ている。
- 国際都市としての地位が、ロンドンの気候変動に対する脆弱性を高めている。ロンドンは国内の洪水、干ばつ、熱波などの異常気象に直面するだけではなく、保険セクターや海外投資、グローバルサプライチェーンを通じて海外からリスクの「輸入」もしている。
同レポートの著者で前経済委員長のJenny Jones AM氏は「気候変動への潜在的リスクに関する理解・備えはほとんど進んでいない。サプライチェーンそして経済全体が異常気象に襲われたときの状況はロンドンでは未知数だ。例えば2011年にIT部品が製造されていたタイで発生した洪水による被害は、ロンドンを含む世界全体のIT産業に多大な損害を与えた。あのとき非常に多くの作物を収穫できなかったとしたら、我々の食料供給に影響を及ぼし、状況は更に悪化していただろう」と語る。
また、同氏は「ロンドンの経済的繁栄のためにはきめ細やかな対策が欠かせない。経済の多様性やグリーンエコノミーへのより多くの投資が必要だ。そうすることでロンドンは地球温暖化のレベルに関わらず強靭さを保つことができるだろう」と付け加えた。
ロンドンの現状を踏まえ、同レポートは更に下記のような提言をしている。
- ロンドンのサプライチェーンにおける異常気象への対策はほとんどなされていない。「ロンドン気候変動パートナーシップ」はロンドン経済の主要なサプライチェーンの脆弱性について明確に記述するべき。
- 市長はレジリエントな低炭素経済に向けたかじ取りをすべきであり、該当分野のスキル開発を促進し、グリーン経済におけるイノベーションを推進するべき。
- 気候変動適応策を市長の経済成長戦略に統合するべき。
国際金融都市ロンドンは、グローバル経済のハブとして世界全体の気候変動リスクを背負っている。英国自体のリスクはもちろん、英国以外の国家や地域が抱える気候変動リスクについても、金融システムなどを通じて影響を受けやすい経済なのだ。一方で、それは逆にロンドンの気候変動対応・適応策は世界全体の経済に大きな影響力を与えうるということでもある。世界経済の中心としてロンドンがどのようにイニシアチブを発揮していくのか、今後の取り組みに期待がかかる。
【レポートダウンロード】Weathering the Storm: The Impact of Climate Change on London’s Economy
【参照リリース】London’s economy at risk from extreme world weather
【団体サイト】London City Hall
【参考サイト】London Assembly Economy Committee
(※写真提供:elenaburn / Shutterstock.com)
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