EUの欧州保険・企業年金監督局(EIOPA)は12月20日、欧州経済領域(EEA)における保険及び企業年金基金について「2018年12月 金融安定レポート(FSR)」を発表した。リスクアセスメントの中で、新たな金融リスクとして、気候変動リスクとサイバーセキュリティリスクを取り上げ、保険・企業年金基金当局として監督を強化していく考えを表明した。
EIOPAの金融安定レポートは、半期に一回発表され、保険及び企業年金の金融安定に向けた当局の現状認識や監督の方向性を示している。今回のレポートでは、低金利と急速なリスクプレミアムの上昇という2つのファクターがもたらす運用難が発生していると認識。リスクプレミアム要因としては、貿易摩擦に関する政治的不確実性、持続可能な負債政策における懸念、金融緩和政策の段階的な正常化を挙げた。また、保険業界が不動産投資へのエクスポージャーが高まっていることにも関心を示した。
その上で、新たなリスク要因として、気候変動リスクとサイバーセキュリティリスクを提起。気候変動は、投資運用及び保険事業の双方で保険業界にとってリスクとなりつつあり、現在気候変動リスクの大きい業界へのエクスポージャーは12.9%。特に不動産業界が7.1%と大きい。不動産業界が気候変動リスクに脆弱な業界として扱った理由としては、二酸化炭素排出量削減の観点から不動産価値の変動が起こりうることや、気候変動に物理的リスクを背負っている等のポイントを挙げた。
サイバーセキュリティについては、保険と企業年金基金が業務のデジタル化を進める中でリスクエクスポージャーも高まっている指摘。企業年金基金に対しては、今後のストレステスト中でサイバーセキュリティリスクの観点も組み入れていくとした。
EIOPAは、これらのESG観点を今後のストレステストに反映させていく方針。
【参照ページ】EIOPA OUTLINES KEY FINANCIAL STABILITY RISKS
【レポート】EIOPA Financial Stability Report December 2018
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