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【国際】PCAF、証券会社向けの有価証券発行仲介排出量算定基準を発行。主幹事証券が対象

 投融資カーボンフットプリント算出基準策定機関Partnership for Carbon Accounting Financials(PCAF)は12月1日、証券会社・投資銀行向けの新たな二酸化炭素排出量算定・報告基準(パートB)を発行した。証券会社・投資銀行向けの算定基準は今回が初。

 有価証券の発行に関するスコープ3の算定基準では、発行体はGHGプロトコルが、投資家は既存のPCAF基準(パートA)が存在しているが、仲介する証券会社や投資銀行についてはこれまで基準が存在していなかった。仲介金融機関の排出量は「Facilitated Emissions(ファシリテーティド・エミッション)」と呼ばれている。一方、パートAでカバーされている投融資での排出量は「Financed Emissions(ファイナンスド・エミッション)」と呼ばれている。

 今回のパートBは、仲介金融機関の中でも「主幹事証券会社」向けの基準として設計。共同主幹事証券会社やその他の引受会社は対象としていない。また商品区分では、債券発行、普通株式発行、優先株式発行、未公開企業の株式及び債権の仲介の他、シンジケートローンの組成も含めた。またプライマリー市場のみを対象としており、セカンダリー市場は対象としていない。また、国債、仕組債、カバードボンド、金融派生商品(デリバティブ)、M&Aアドバイザリーについても対象外。

 ファシリテーティド・エミッションの算定は、基本的な構造はファイナンスド・エミッションに似ている。発行体が上場企業の場合には、発行体の二酸化炭素排出量をベースに、時価総額に対する有価証券発行額の比率で当該発行に関する排出量を算定。次に、発行体が支払う報酬のうち、当該証券会社(投資銀行)が受け取る報酬の比率を掛け合わせ、各社の割当排出量を算定する。その後に、ファシリテーテード・エミッションには、一律係数として33%を掛け、最終的な排出量が決定する。

 一律係数の33%については、ファイナンスド・エミッションに対し、仲介金融機関の金融システム上の影響度が小さいことから設定された特殊なルールと言える。33%の根拠については、バーゼル銀行監督委員会での「グローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)」の決定プロセスを援用しており、仲介事業からの売上に関しては一律の係数をかけて金融上の影響度を算出する手法を採用した。現在のG-SIB決定のプロセスでは係数として最大17%とされているが、2018年に提案された新たなアプローチで最大33%とすることが提唱されており、PCAFは33%を最終的に採用した。

 算定の出発点となる発行体の排出量については、スコープ1と2は必須とした。同時にスコープ3についてもセクター毎に順次必須としていく考え方を採用した。2021年からは石油・ガス及び資源採掘が対象、2023年からは輸送、建設、不動産、素材、重工業も対象。2025年以降は全セクターを対象とする。ファシリテーティド・エミッションでは、読者にわかりやすいよう、発行体のスコープ1・2と、スコープ3をわけて記載することが求められる。発行体の排出量データの収集では、発行体の開示データ(プライマリーデータ)と、他の第三者情報プロバイダーからのデータ、もしくは金額や事業活動量を素にした推計のいずれでも可とした。但し、原単位ではなく、総量の排出量を考慮することが強調されている。活用すべきデータの優先順位表も掲載された。

 投融資と仲介の双方を行っている金融機関に関しては、ファシリテーティド・エミッションとファイナンスド・エミッションを分けて報告することを義務化。また、削減貢献量(Avoided Emissions)や炭素除去量も分けて開示することが求められる。削減貢献量や炭素除去量の分をカーボンクレジット化し購入している場合は、削減貢献量や炭素除去量の報告では算定せずに、カーボンオフセット分として分けて開示することが求められる。

【参照ページ】PCAF launches a new Accounting and Reporting Standard for Capital Markets

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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