EU上院の役割を担うEU加盟国閣僚級のEU理事会とEU下院の役割を担う欧州議会は11月29日、産業排出指令(IED)に基づく環境報告義務対象セクターに、大規模畜産場と、非エネルギー資源採掘及び加工場を加える同指令改正案で政治的合意に達した。今後、双方での立法手続きに入る。
IEDは、産業施設から、二酸化炭素、メタン、アンモニア、窒素化合物(NOx)、水銀等の汚染物質が排出されることを規制している。対象となる施設は、利用可能な最善の技術(BAT)を基準とし、各国当局からの許可に従って操業することが義務付けられている。
今回の指令改正では、まず、畜産農場については、家畜単位(LSU)を指標とし、豚は350LSU、家禽は280LSU(産卵鶏は300LSU)、混合農場は380LSU以上であれば規制対象となる。適用は2030年からで大規模畜産場から段階的に適用される。
次に、鉄、銅、金、ニッケル、プラチナ等、工業規模で生産される非エネルギー資源の採掘と処理の施設もIED規制の対象となる。主にバッテリー関連の原料に主眼が置かれているが、その他の工業用鉱物にも拡大される可能性がる。
さらに同指令改正では、EU加盟国当局が施設の設置・運営を許可する際に設定する規制基準として、新たに「環境パフォーマンス限界値(EPLV)」という概念を導入。すでに規制目標水準が設定されている水資源を除き、すべてのエネルギー資源についてEPLVの範囲に抑える法定基準を設定することでも合意した。
排出物の報告では、現行のE-PRTR規則に代わり、産業排出物に関する情報ポータル(IEP)を新設するEU規則を制定することでも合意。IEPは、登録データを一般公開をさらに進め、消費者に対する透明性レベルを引き上げる。同ポータルには、サーキュラーエコノミーを促進するため、水、エネルギー、主要原材料の使用に関するデータも含まれる予定。
加えて、規制対象物質や、付属書I(設定された閾値以上の報告が必要な活動に関する)及び付属書II(設定された閾値以上の報告が必要な汚染物質に関する)に適用される閾値を評価するための一般的なレビュー条項も導入。ジコホールと、パーフルオロオクタン酸(PFOA)及びパーフルオロヘキサン-1-スルホン酸(PFHxS)の2つのPFASに関しては、附属書IIに追加することでも合意した。欧州委員会は付属書IIの見直しを行い、これらの物質の測定方法に関する指針を2026年までに固めなければならない。
これらの新ルールの導入時期は2028年に設定。そのため、2026年までに畜産施設に対する評価手法を確立する。また同指令のレビューを2028、及びそれ以降は5年毎に行い、新技術や新たな汚染防止対策等に対処していくことでも合意した。
違反に対しては、各EU加盟国が罰則規定を設け、行政罰の他、最も深刻な違反にはEU域内の事業者の年間売上の3%以上の罰金を科すことも決める。
【参照ページ】Industrial emissions: Council and Parliament agree on new rules to reduce harmful emissions from industry and improve public access to information
【参照ページ】Commission welcomes provisional agreement on modernising management of industrial emissionsEU
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