
国連食糧農業機関(FAO)と経済協力開発機構(OECD)は7月2日、2033年までの農業・食料の見通しを示した最新報告書「OECD-FAO農業見通し2024-2033」を発行した。
【参考】【国際】FAOとOECD、2031年までの食料見通し発表。人口増加と気候変動が巨大リスク。貿易不安定も拍車(2022年7月6日)
同報告書は、農業と水産業の需要と供給を分析し、市場の中長期的な見通しを予測したもの。20回目の報告書となる。今後10年間で、インド、東南アジア、サブサハラアフリカでの需要が増加し、中国での需要の伸びが鈍化すると報告した。
食料、飼料、肥料、燃料等を含む世界の農業と水産業の総消費量は、今後10年間で年間1.1%増加すると予測。これまでは世界の農業・水産業の消費増加分の28%を中国が占めていたが、2033年までの追加需要に占める中国の割合は11%に低下すると予測。代わりに、都市人口の増加が原動力となり、世界の消費増加分の31%をインド、東南アジアが占め、サブサハラ・アフリカも18%を占めると予測した。
農業の生産量の増加は、耕作面積の増加よりも、既存の農作地の収量向上の影響が大きいとし、農作物生産からの温室効果ガスの原単位排出量は減少していく。畜産業と水産業でも生産性は向上していく見通し。一方、温室効果ガス排出量の多い家畜の頭数も増加するとした。全体では、2033年までに温室効果ガス排出量を5%押し上げる見込み。
生産性の向上が見込まれているものの、低中所得国であるアフリカとアジアの生産性の低い国との間で、生産性の格差が続くと予測した。農家所得の減少や、食料安全保障リスクの増加により、各国の食料輸入が増加するため、農業・水産業関連の輸出入が十分に機能することは世界の食料安全保障にとって重要と強調した。今後10年間のコモディティ農産物の国際基準価格は、2022年のピーク時から、横ばい、もしくはわずかに下落していく傾向にあると予測した。但し、小売価格では価格下落とはならない可能性もあるという。
サプライチェーンにおける食品ロスと小売店と消費者における食品廃棄量が2030年までに半減できた場合、世界の農業・水産業における温室効果ガス排出量は4%程度抑制できる。加えて、食料価格が下落すると、低中所得国での食料摂取量が最大10%増加し、2030年までに栄養不良人口が約1.5億人、26%減少する可能性も示唆した。消費と環境への潜在的な利益がある一方で、生産者が得る利益の低下の課題も指摘した。
これまでと同様に、主要な食品毎に予測をまとめた。具体的には、パーム油、菜種油は収穫量に課題、生乳生産量は今後10年間で年間1.6%の増加、魚類生産量の増加の85%は養殖にとなり2033年には世界の魚介類生産量の55%が養殖となる等を報告した
【参考】【国際】魚介類の養殖量が漁獲量を史上初めて上回る。FAO年次報告(2024年6月14日)
【参照ページ】OECD-FAO Agricultural Outlook: Emerging economies will continue driving agricultural markets
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