
米証券取引委員会(SEC)は11月1日、投資運用世界大手米バンガードに対し、人権関連で提出された株主提案2件を却下することを容認する見解を公表した。
米国では、1934年証券取引法に基づき、企業経営の具体的詳細に踏み込む内容に関する株主提案は「マイクロマネジメント」とみなすことができ、株主総会での株主提案から除外することができる。除外の当否の判断は、発行体がSECに申告し、SECが見解を述べる制度が用意されている。
今回の事案は、同社が運営する会社型ファンドに対し、ファンド持分保有者から提出された株主提案に関するもの。具体的には、2つのファンド群の取締役会に対し、経営陣の判断により、最も深刻な人権侵害であるジェノサイドまたは人道に対する罪に実質的に寄与していると思われる企業の保有または投資推奨を回避するための透明性のある手続きを導入するよう要求していた。
同社は、同社運営のファンドに対し、同様の株主提案を2018年にも受けており、SECは、トランプ政権時代の2020年に株主提案却下の判断をすでに下している。その際には、ファンドが保有する中国石油天然気集団(CNPC)の子会社で、スーダンの石油パートナー最大手になっている中国石油天然気(ペトロチャイナ)が、スーダンのジェノサイドの資金源になっていると指摘していた。
しかし、SECはバイデン政権移行後の2021年にマイクロマネジメント却下制度の解釈を変更しているため、変更後の解釈においても、却下が容認されるか否かに注目が集まっていた。
【参考】【アメリカ】証券取引委員会SEC、気候変動対応株主提案をマイクロマネジメントとし除外できるとの見解発表(2018年10月31日)
【参考】【アメリカ】SEC、株主提案の法律意見を変更。気候変動や社会テーマでの議決権行使活発化へ(2021年11月9日)
バンガードは、株主提案されたファンド群のうち、提案したファンド持分保有者が、当該ファンド持分を継続して保有していることを確認できない群を「第1ファンド・グループ」とし、1934年証券取引所法規則14a-8(f)(1)の規定を理由に、株主総会議案から除外しうると主張。また、継続保有が確認できる「第2ファンド・グループ」については、同法規則14a-8(i)(7)に基づくマイクロマネジメントを理由に、株主総会議案から除外しうると主張していた。
今回SECは、バンガード側の主張には正当な根拠があるとの見解を示した。
【参照ページ】Vanguard Funds , et al.
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