
内閣官房GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループは11月22日、第4回会合を開催し、2026年度から開始する二酸化炭素排出量取引制度では、一定規模以上の排出を行う事業者を対象に、キャップ&トレード型の義務適制度とする考えを示した。
日本政府は2023年2月、「GX実現に向けた基本方針」を閣議決定。その中で、化石燃料輸入者等のみを対象とした「化石燃料賦課金制度」を2028年度から、発電事業者に対する排出量取引制度「有償オークション」を2033年度から導入するとともに、2023年度からGXリーグで試行的に始めた自主的な「排出量取引制度」を、2026年度から本格稼働するとしていた。
【参考】【日本】政府、GX実現に向けた基本方針を閣議決定。国際的な理解が得られない場合、絵に描いた餅(2023年2月10日)
【参考】【日本】政府、GX実行会議で重点予算分野設定。重工業、モビリティ、エネルギー等に2.4兆円(2023年12月20日)
しかし、9月3日に設置されたGX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループは、GXリーグに自主的に参画している企業割合が業種間で大きなばらつきがあることを課題視。例えば、排出量ベースで、鉄鋼業が98%自主参画しているのに対し、水運業では41%にとどまっている。そのため、2026年度からの本格稼働後の制度については、一定規模以上の排出を行う企業については制度の対象とすべきという声が企業からも出ていた。
また、EU等で導入された炭素国境調整措置(CBAM)等の国際的な議論への対応も含め、制度の実効性をさらに高める観点から、目標達成のための規律性の高い制度にすべきという声も出、こうして一度は「自主的」とされていた2026年度以降の制度の議論が、「義務的」に転換していくこととなった。
今回の発表では、二酸化炭素の直接排出量が10万t以上の法人を対象に、毎年度、排出実績と等量の排出枠の償却を求めることを義務化する。違反時には相応の罰金を科す。これにより、制度の対象事業者数は300社から400社程度となり、カバー率は我が国における温室効果ガス排出量の60%近くとなる見込み。
毎年の無償割当に関しては、主要な産業分野を対象に業種特性を考慮した基準を設定することを想定している。一方、カーボンリーケージリスクや制度開始前の排出削減努力、研究開発投資の促進影響、設備の新増設・廃止等の影響も加味するとした。年々の無償割当縮小については、目指すべき原単位排出量に基づく「ベンチマーク方式」を主としつつ、毎年の削減率を設定する「グランドファザリング方式」も副として想定した。
排出量取引市場の設計では、義務遵守コストの高騰を回避する観点から、排出枠の上限価格を設定。また、市場価格が下限を下回って低迷する場合には、排出枠の流通量を調整するための措置を講じる。これらは先行しているEU、英国、韓国等でもすでに導入されている。
排出枠の売買については、相対取引を容認しつつも、取引所での売買を原則とするような考え方を示した。また取引所での価格形成を促進するため、制度対象外の事業者も一定の基準を満たせば参加を認めるという方向性も出した。
【参照ページ】GX実現に向けたカーボンプライシング専門ワーキンググループ
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