 27 【エネルギー】世界各国の発電供給量割合[2026年版](火力・水力・原子力・再生可能エネルギー) 27](https://sustainablejapan.jp/wp-content/uploads/2026/07/electricity.jpg)
世界の電力部門が、歴史的な転換点を迎えた。2026年に公表された2025年実績の最新統計によると、太陽光発電の記録的な増加を中心に、再生可能エネルギーと原子力による発電量の増加が、世界の電力需要の増加量を上回った。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の発電量は2025年に850TWh以上増加したが、化石燃料発電はわずかに減少。英エネルギーシンクタンクEmberも、再生可能エネルギーと原子力を合わせた低排出電源の増加によって、新たな電力需要の全量が賄われたと分析している。
但し、世界の発電部門が直ちに化石燃料から脱却したわけではない。石炭と天然ガスは現在も世界の発電量の半分以上を占め、電力需要の増加、天候、燃料価格、原子力発電所や送電網の稼働状況に応じて、化石燃料発電が増える国もある。2025年の変化は、化石燃料発電の終焉ではなく、電力需要の増加を低排出電源で吸収できる段階に世界全体が近づいたことを示している。
世界全体の発電供給量割合
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
Emberの集計では、2025年の世界全体の発電供給量の割合は、以下となった。
- 石炭 :33.0%
- 天然ガス :21.8%
- その他 化石燃料 : 2.7%
- 原子力 : 8.9%
- 太陽光 : 8.7%
- 風力 : 8.5%
- 水力 :14.0%
- バイオエネルギー : 2.2%
- その他再生可能エネルギー : 0.3%
太陽光、風力、水力、バイオエネルギー、その他再生可能エネルギーを合計した再生可能エネルギーの割合は33.8%、発電量は1万730TWhとなり、石炭火力の33.0%、1万476TWhを約100年ぶりに上回った。太陽光発電も8.7%となり、風力発電の8.5%を初めて上回った。
IEAの集計では、再生可能エネルギーと石炭火力はいずれも世界の発電量の約34%で、再生可能エネルギーが石炭に「ほぼ並んだ」と整理している。両者の表現は異なるが、これは数値の丸め方、使用データ、バイオエネルギーや廃棄物等の分類方法の違いによる。世界の電源構成が、石炭を最大電源とする構造から、再生可能エネルギーと石炭が並ぶ構造へ移ったという点では一致した。
(出所)IEA「Global Energy Review 2026」
IEAによると、再生可能エネルギーと原子力を合わせた低排出電源の割合は43%となり、過去50年間で最高水準に達した。再生可能エネルギーは2015年の23%から2025年には34%へ拡大。太陽光と風力だけでも、同期間に約5%から17%へ上昇した。
設備容量でも、再生可能エネルギーは2025年末時点で世界全体の49.4%に達した。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2025年に新設された世界の発電設備容量の85.6%を再生可能エネルギーが占めた。設備容量と実際の発電量の割合に差があるのは、太陽光や風力の設備利用率が火力や原子力より低いことや、送電網、蓄電、出力抑制等の制約があるためだ。
世界全体の電源構成はどう変化したか
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
電源構成を全体で見ると、石炭、天然ガス等の化石燃料による発電割合の低減ペースはなだらかだ。しかし、太陽光発電は急拡大している。世界の発電量に占める割合は2017年の1.8%から2025年には8.7%へと5倍近く上昇し、2025年には風力発電を初めて上回った。
2025年の太陽光発電量は前年比30%、636TWh増加し、世界の電力需要増加量の約4分の3を単独で賄った。IEAの推計でも、太陽光発電量は約600TWh増加し、約2,700TWh、世界の発電量の8%超に到達。危機後の反動増を除けば、一つの電源が1年間で増加させた発電量として過去最大となった。風力発電量も約8%増加し、太陽光と風力を合わせた割合は17%に達した。
(出所)IEA「Global Energy Review 2026」
原子力発電量は2025年に過去最高を更新したものの、世界の総発電量も増加したため、発電割合は8.9%とほぼ横ばいだった。水力発電は依然として世界最大の再生可能エネルギー電源だが、干ばつや降水量変動の影響を受けやすく、割合は2021年の15.2%から2025年には14.0%へ低下した。
一方、世界の石炭火力発電量は2025年に約0.5%減少した。新型コロナウイルス・パンデミックによる需要減少が生じた2020年を除けば、2015年以来の減少となる。天然ガス火力は約0.5%増加したものの、石炭の減少を補うほどではなく、化石燃料発電全体ではわずかな減少となった。
地域別で異なる化石燃料依存構造
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
石炭火力を中心とする構造から、再生可能エネルギーと原子力を組み合わせた構造への転換速度は、地域別に大きく異なる。アジアでは石炭火力が51.6%と過半を占め、世界の石炭火力削減を左右する中心地域となっている。一方、中東では天然ガスが73.2%、その他化石燃料が18.4%を占め、石炭ではなく天然ガスと石油への依存が課題となる。アフリカでも天然ガスと石炭を合わせた割合は6割を超えるが、北アフリカ、南アフリカ、サブサハラ・アフリカでは電源構成が大きく異なる。
低排出電源の割合が高い地域でも、その構成には差がある。欧州では原子力、水力、風力、太陽光が比較的分散しているのに対し、中南米・カリブ諸国では水力が40.2%を占める。中南米・カリブの電源構成は、水力発電稼働時の温室効果ガス排出量が少ない一方、渇水時には天然ガス火力等の発電量が増加しやすい。
北米では天然ガス火力が37.2%で最大電源となり、原子力が16.8%を占める。石炭火力の割合はアジアより低いものの、天然ガス火力への依存度は高い。データセンターや製造業等による電力需要が増加する中、太陽光、風力、原子力等の低排出電源の増加量が需要増加を上回らなければ、天然ガス火力の発電量は減少しにくい。
国別で見ても、2025年には中国とインドで石炭火力が減少した一方、米国では天然ガス価格の上昇に伴うガスから石炭への燃料転換が発生した。欧州でも水力発電量と風力発電量が天候要因で低下し、天然ガス火力への依存が一時的に高まった。
(出所)IEA「Global Energy Review 2026」
北米:米国は需要増と政策転換、カナダは水力・原子力中心
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
北米全体では、2025年の発電量に占める天然ガスの割合が37.2%と最大で、原子力16.8%、石炭14.8%、水力11.4%、風力10.0%、太陽光7.7%と続いた。但し、この地域平均は、天然ガス中心の米国と、水力・原子力中心のカナダという異なる電力システムを合算したものだ。
米国の2025年の電源構成は、天然ガス40.0%、原子力17.4%、石炭16.3%、風力10.3%、太陽光8.6%、水力5.4%。風力と太陽光の合計は18.9%となり、石炭を上回った。一方、電力需要は前年比約2%増加し、過去10年間の平均増加率の3倍以上となった。建築物部門が需要増加量の約8割を占め、データセンターだけで全体の約半分を占めた。天然ガス価格の上昇によるガスから石炭への燃料転換もあり、石炭火力発電量は増加。低排出電源が増えても、その増加量が需要増加を上回らなければ、化石燃料発電は減少しないことを示した。
連邦政府のエネルギー政策は2025年に大きく転換した。第2次トランプ政権は1月、国家エネルギー緊急事態を宣言し、国内のエネルギー生産、輸送、精製、発電能力の拡大を指示。同年7月には、同年成立した歳出・税制法による風力・太陽光向け税額控除の終了・変更を厳格に実施するとともに、関連する規則、指針、許認可慣行を見直すよう関係省庁に指示する大統領令を発出した。
一方、州政府レベルでは、28州とワシントンD.C.が再生可能エネルギー導入基準(RPS)を持ち、11州がクリーン電力基準(CES)または同様の目標を設定している。23州とワシントンD.C.は、2050年以前の再生可能エネルギーまたはクリーン電力100%の義務または目標を掲げた。米国の電源投資は、連邦政策だけでなく、州政策、電力市場、電力会社及び企業の電力需要にも左右される。
カナダでは、水力が52.8%、原子力が13.1%を占め、風力と太陽光を含む低排出電源は77.0%に達した。ケベック州、ブリティッシュコロンビア州、マニトバ州等では水力が電力供給の中心であり、オンタリオ州では原子力の割合が高い。
カナダ政府は2024年12月、クリーン電力規則を最終決定した。同規則は、原則として25MW以上でNERCの基準対象系統に接続する化石燃料発電設備を対象とし、設備の運転開始時期等に応じて2035年以降に年間排出上限を適用する。柔軟措置を設けながら、2050年までの温室効果ガス排出量ネットゼロ電力システムへの移行を目指す設計となっている。
アジア・太平洋:世界の需要増を担う一方、石炭・ガス依存が残る
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
アジア・太平洋地域は、世界の電力需要増加と再生可能エネルギー設備増加の双方を牽引している。一方、急増する電力需要を賄うため、石炭火力と天然ガス火力も大規模に残っている。IEAによると、2025年の石炭火力割合は中国で約55%、インドで約71%、東南アジア全体で約48%だった。
中国では、2025年の石炭火力発電割合が54.4%となった。依然として世界最大の石炭火力発電国だが、水力13.2%、太陽光11.1%、風力10.7%、バイオエネルギー2.0%を合わせた再生可能エネルギーも37%に達した。原子力を含む低排出電源は41.6%。石炭火力の絶対量が大きい一方、太陽光と風力の新規導入でも世界最大であり、水力と原子力も大規模に拡大しているという二重構造にある。
中国の電力需要は、製造業、電気自動車、データセンター、空調、産業電化等を背景に増加している。そのため、再生可能エネルギーを大幅に増やしても、直ちに石炭火力を廃止できる構造にはない。今後の焦点は、新規設備容量だけでなく、広域送電網、蓄電池、石炭火力の調整電源化、再生可能エネルギーの出力抑制削減に移る。
インドでは、石炭火力が70.8%を占め、世界の主要国の中でも石炭依存度が高い。一方、太陽光9.4%、風力5%、水力8.6%を中心に、再生可能エネルギーは24.1%まで上昇した。インド政府は2030年までに非化石燃料発電設備容量を500GWに拡大する目標を掲げており、2025年11月時点では非化石燃料発電設備容量が262.7GW、国内総設備容量の51.5%に達した。
日本の2025年の発電量割合は、天然ガス32.8%、石炭32%、太陽光9.8%、原子力9.1%、水力7.2%、バイオエネルギー5.3%、風力1.3%。低排出電源は32.7%に留まり、欧州や北米と比べて化石燃料依存度が高い。
日本政府は2025年2月、第7次エネルギー基本計画を閣議決定した。2040年度の電源構成の見通しは、再生可能エネルギー40%から50%、原子力約20%、火力30%から40%。再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、原子力等の脱炭素電源も最大限活用する方針を示した。背景には、データセンターや半導体工場による電力需要増加、エネルギー安全保障、脱炭素電源確保の必要性がある。
韓国では、石炭31.1%、原子力29.6%、天然ガス28.0%で、低排出電源は40.0%となった。韓国政府が2025年2月に最終決定した第11次電力需給基本計画では、2038年の発電量割合を原子力35.2%、再生可能エネルギー29.2%、石炭10.1%とする方向性を示し、大型原子炉2基と小型モジュール炉(SMR)1基の建設を盛り込んだ。
台湾では、2025年の天然ガスが48.8%、石炭が36.3%、その他化石燃料が1.6%を占め、化石燃料依存度は約87%に達した。再生可能エネルギーは12.4%、原子力は1.1%。2025年5月には、最後まで稼働していた馬鞍山原子力発電所2号機が運転免許の満了によって運転を終了し、台湾の商業用原子力発電所は全て停止した。同年8月には同発電所の再稼働を問う住民投票が行われ、賛成票が反対票を上回ったものの、成立に必要な有権者総数の25%に届かなかった。半導体やAI関連産業による電力需要増加を背景に、天然ガス依存、再生可能エネルギー拡大、原子力再稼働を巡る議論は継続している。
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
その他アジア・太平洋地域では、タイが天然ガス65.5%、マレーシアが石炭44.6%と天然ガス33.8%、インドネシアが石炭61.5%、フィリピンが石炭58.7%と、化石燃料への依存度が高い。インドネシアのみ2024年時点のデータとなる。各国とも太陽光や風力の導入を進めているが、電力需要の増加が速く、送電網、投資環境、電力市場制度、既存の長期電力購入契約等が移行の制約となっている。
インドネシアとフィリピンでは地熱発電の存在感も大きい。2024年のインドネシアでは地熱を含むその他再生可能エネルギーが約4.5%、2025年のフィリピンでは約8.2%を占めた。両国は環太平洋火山帯に位置し、天候に左右されにくい地熱を国産の安定電源として活用できる。一方、開発初期の地下資源リスクや高い掘削費用が導入拡大の課題となる。
オーストラリアでは、石炭火力が42.7%、天然ガスが16.4%、その他化石燃料が2.2%となり、化石燃料は合計61.3%。2021年の73.3%から大幅に低下した。一方、太陽光は19.6%、風力は13.7%、水力は4.3%、バイオエネルギーは1.1%となり、再生可能エネルギーは38.7%に達した。家庭用屋根置き太陽光、大規模太陽光、陸上風力の普及が進む一方、石炭火力閉鎖に合わせた送電網、蓄電池、揚水発電、需給調整力の整備が重要となっている。
欧州:再エネが主力化、原子力は「撤退」と「再評価」に二極化
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
欧州では、再生可能エネルギーの導入が実証・普及段階から、電力供給の中核を担う段階へ移行した。EUの発電量に占める再生可能エネルギーの割合は2025年に47.7%へ上昇。風力と太陽光だけで30%に達し、石炭、天然ガス等の化石燃料発電を初めて上回った。
一方、2025年の欧州では、水力と風力の発電条件が悪化した。IEAは、欧州の水力発電設備が2024年と同程度に稼働していれば、追加で75TWhを発電し、化石燃料発電による二酸化炭素排出量を約4,500万t回避できたと試算。風況が2024年並みであれば、さらに2,000万t以上を回避できたとしている。
変動性のある太陽光・風力が増えるほど、発電設備容量だけでなく、地域間連系線、蓄電池、揚水発電、需要調整、柔軟に出力を変えられる発電設備が重要となる。欧州の2025年の動向は、再生可能エネルギー割合の上昇と、天候による発電量変動への対応を同時に進める必要性を示した。
EUは改正再生可能エネルギー指令で、2030年の最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギー割合を法的拘束力のある目標として42.5%に設定し、45%の達成に努める方針を掲げている。これは電力だけでなく、熱、産業、建物、交通等を含む目標であり、電力部門では同水準を大きく上回る再生可能エネルギー導入が必要となる。
エネルギー安全保障政策でも進展があった。EU理事会は2026年1月、ロシア産天然ガスの段階的輸入禁止を定める規則を採択。ロシア産LNGは2027年初頭から、パイプラインガスは2027年秋から全面的に禁止する。EUの天然ガス輸入に占めるロシアの割合は2021年の約45%から2025年には約13%まで低下しており、ロシア産天然ガスが西欧の安定電源を支えるという構図はすでに過去のものとなった。
国毎に見ると、ドイツは2023年4月に原子力発電を終了した一方、2025年には風力27.2%、太陽光17.9%、バイオエネルギー10.1%となり、再生可能エネルギーが59.1%を占めた。但し、石炭20.6%、天然ガス16.5%が残り、低排出電源への移行過程では、送電網増強、蓄電池、需給調整力、電力価格の安定が課題となっている。
フランスでは、原子力発電が68.8%を占め、再生可能エネルギー26.1%と合わせた低排出電源は94.8%に達した。原子力発電所の設備不具合や保守によって発電量が落ち込んだ時期から回復し、欧州最大の電力輸出国としての地位も取り戻しつつある。欧州では、ドイツが脱原子力を完了した一方、フランスは原子力を長期的な中核電源に位置付けており、原子力政策の違いが鮮明となっている。
スペインでは、太陽光21.9%、風力20.4%、水力11.4%となり、再生可能エネルギーが55.9%に達した。原子力も18.8%を占めるため、低排出電源は74.6%。イタリアでは原子力発電はゼロだが、再生可能エネルギーが48.8%まで拡大した。一方、天然ガスが47.2%を占めており、ガス火力依存の低下が今後の課題となる。
英国では、2024年9月に国内最後の石炭火力発電所が閉鎖し、産業革命以来約140年間続いた石炭火力発電を終了した。2025年の石炭火力の割合は、統計上も0.1%まで低下した。一方、風力29.5%、太陽光6.6%、バイオエネルギー14.1%、水力1.9%を合わせた再生可能エネルギーは52.1%。英国政府は「Clean Power 2030 Action Plan」を通じ、洋上風力、太陽光、送電網、蓄電池、長時間エネルギー貯蔵等への投資を進めている。
ベルギーは、かつて全原子力発電所を段階的に閉鎖する方針を掲げていたが、ロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー危機を受け、Doel 4とTihange 3の運転を10年間延長することで政府と事業者が合意した。2025年の原子力発電割合は33.1%、再生可能エネルギーは38.9%。欧州の原子力政策は「縮小の一方向」ではなく、エネルギー安全保障、電力価格、温室効果ガス排出量削減を踏まえて再評価する段階に入った。
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
北欧諸国は、豊富な水資源、風況、地熱資源に加え、原子力発電を組み合わせることで、世界で最も低排出電源比率の高い地域を形成している。一人当たりの電力消費量も高いが、これは寒冷な気候だけでなく、暖房の電化や、アルミニウム、鉄鋼、パルプ・製紙、化学等の電力多消費産業が立地していることも要因となっている。
ノルウェーでは、水力発電が90.0%、風力が8.4%を占め、低排出電源は99.0%。石油・天然ガスの主要輸出国でありながら、国内の発電では化石燃料をほとんど使用していない。資源輸出国であることと、国内電力の脱炭素化が必ずしも同じ方向に進むわけではないことを示す代表例だ。
アイスランドでは、2024年の水力発電が70.7%、地熱を中心とするその他再生可能エネルギーが29.2%で、発電量のほぼ100%を再生可能エネルギーで賄う。火山活動が活発な地理的条件を活用し、地熱を発電だけでなく、地域暖房、温室農業、産業用熱源にも利用している。
デンマークは、水力資源をほとんど持たない一方、風力発電が57.7%に達した。太陽光13.4%、バイオエネルギー20.1%を合わせると、再生可能エネルギーは91.2%。変動性再生可能エネルギーの割合が高いため、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ等との国際連系線、地域熱供給、需要調整を活用して電力システムを運用している。
スウェーデンでは、水力40%、原子力27.6%、風力22.8%となり、低排出電源は98.8%。フィンランドでも、原子力40%、風力27.5%、水力15.2%、バイオエネルギー12.6%を中心に、低排出電源が96.3%を占めた。北欧では、再生可能エネルギーか原子力かという二者択一ではなく、国毎の資源条件に応じて両者を組み合わせる構造が一般的となっている。
その他新興国:資源賦存と電力系統制約で構造が大きく分かれる
(出所)Ember「Yearly Electricity Data」をもとにニューラル作成
ロシア、南アフリカ、メキシコ、中東諸国では、自国で産出する化石燃料を中心とした電源構成が続いている。ロシアでは、天然ガスを中心とする化石燃料が64.3%、原子力18.3%、水力16.7%。原子力と水力を一定規模保有する一方、太陽光と風力の割合は合わせても1%未満となっている。
南アフリカは石炭火力が81.4%を占め、低排出電源は17.8%。老朽化した石炭火力発電所の設備不良による電力不足が長期化してきた。太陽光8.0%、風力4.7%まで拡大しているものの、石炭産業に依存する地域経済や雇用への対応、送電網への投資、国営電力会社の財務再建を同時に進める必要がある。
メキシコでは、天然ガスを中心とする化石燃料が74.1%、再生可能エネルギーは23.1%。米国からパイプラインで輸入する天然ガスへの依存度が高く、価格面では有利である一方、越境供給途絶への脆弱性を抱える。水力8.1%、太陽光7.4%、風力6%と再生可能エネルギー資源は多様だが、投資制度と送電網整備が導入速度を左右する。
中東では、サウジアラビアの化石燃料割合が97.8%、イランが94.3%、エジプトが86.6%。サウジアラビアでは太陽光と風力の大規模開発が始まっているものの、発電量ベースでは依然として石油と天然ガスが圧倒的だ。中東諸国にとって再生可能エネルギーの導入は、温室効果ガス排出量削減だけでなく、国内発電で消費している石油・天然ガスを輸出や化学産業向けに振り向ける経済政策としての意味も持つ。
一方、ブラジルでは低排出電源が88.7%に達した。水力が51.8%と最大だが、風力15.7%、太陽光11.8%、バイオエネルギー7.3%へと電源の多様化が進んでいる。従来は降水量変動による水力発電量の減少が電力供給上の大きなリスクだったが、風力と太陽光の拡大によって、水力単独依存から複数の再生可能エネルギーを組み合わせる構造に移行している。
2025年は再生可能エネルギーの転換点
2025年は、再生可能エネルギーと石炭火力がほぼ同水準となり、再生可能エネルギーが「補完的な電源」ではなく、世界最大の電源になりつつあることが示された年となった。再生可能エネルギーが石炭火力を上回り、太陽光発電も風力発電を初めて上回った。低排出電源が世界の電力需要増加量を上回り、化石燃料発電量の増加を止めたという意味では、世界の電力転換における重要な節目となる。
しかし、石炭と天然ガスは依然として世界最大の二つの電源であり、化石燃料は発電量の過半を占める。地域別では、アジアの石炭、中東の天然ガス、米国の天然ガス、アフリカの石炭・天然ガス等、依存構造は大きく異なる。
再生可能エネルギーの設備増加だけでは、電力システムの転換は完了しない。太陽光と風力の割合が高まるにつれ、送電網、蓄電池、揚水発電、需要調整、国際連系線、容量市場、出力抑制対策が重要となる。発電設備の建設から、系統全体の設計と運用へと政策の焦点が移っている。
また電源構成は、気候変動政策だけでなく、経済安全保障、産業政策、AI・データセンター需要、燃料輸入リスクと強く結び付くようになっている。米国では連邦政府の政策転換が起き、EUではロシア産ガスの全面的な段階廃止が決まった。原子力政策も一方向ではない。ドイツや台湾は商業用原子力発電を終了した一方、フランス、日本、韓国、ベルギー、スウェーデン、フィンランド等は、エネルギー安全保障と脱炭素電源確保の観点から、原子力を維持または拡大する方向にある。世界の原子力発電量も2025年に過去最高を更新した。
世界の発電量割合は、単なる環境指標ではない。各国がどの資源を保有し、どの産業を育成し、どの国から燃料を輸入し、どの程度の電力価格と供給リスクを受け入れるのかを示す、経済・産業・安全保障政策の結果と言える。
企業にとっては、年間平均の再生可能エネルギー割合だけでなく、事業を行う国・地域の限界電源、時間帯毎の電源構成、送電網の制約、電力価格、出力抑制、系統接続期間を把握する必要性が高まる。電源構成の脱炭素化は進んでいるが、電力需要もデータセンター、電動車、冷暖房、産業電化によって増加している。今後の焦点は、再生可能エネルギーの導入量から、増加した低排出電力を実際の安定供給へ繋げる電力システムの実装力へ移る。
【参照ページ】Global Electricity Review 2026
【参照ページ】Global Energy Review 2026
【参照ページ】Global electricity generation by source, 2015-2025
【参照ページ】Renewable capacity highlights
【参照ページ】RENEWABLE CAPACITY STATISTICS 2026
【参照ページ】Declaring a National Energy Emergency
【参照ページ】ENDING MARKET DISTORTING SUBSIDIES FOR UNRELIABLE, FOREIGN CONTROLLED ENERGY SOURCES
【参照ページ】Renewable energy explained
【参照ページ】Clean Electricity Regulations
【参照ページ】Powering Canada’s Future—Canada’s final Clean Electricity Regulations
【参照ページ】2025 Marks Highest-Ever Renewable Energy Expansion in India’s Energy Transition Journey
【参照ページ】第7次エネルギー基本計画が閣議決定されました
【参照ページ】第2節 主要10か国・地域のGHG排出削減とカーボンニュートラル実現に向けた動向
【参照ページ】「제11차 전력수급기본계획」 확정
【参照ページ】114年全國性公民投票第21案投票結果
【参照ページ】核三廠2號機將於114年5月18日進入除役期間,核安會持續監督台電公司落實除役計畫及安全要求
【参照ページ】Energy Trends March 2026
【参照ページ】Clean Power 2030 Action Plan: A new era of clean electricity – main report
【参照ページ】DESNZ annual report 2024 to 2025: Performance report
【参照ページ】ACCORD DE COALITION FÉDÉRALE 2025-2029
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菊池尚人
チーフコンサルタント 兼 事業開発室長
2016年新卒から10年コンサルティング業界に従事。2019年より現職。
大手企業・金融機関向けESG戦略・投資アドバイザリーのリードに加え、 サステナビリティ経営に関する研修講師、Sustainable Japan編集も務める。