【ランキング】2017年 ダボス会議「Global 100 Index: 世界で最も持続可能性のある企業100社」 2017/01/19 体系的に学ぶ

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 毎年恒例の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)。2017年は1月17日から20日までスイス・ダボスで開催されました。今年のダボス会議は、中国の国家主席が市場初めて参加する一方、米次期トランプ政権の主要メンバーがほぼ出席しないなど、昨今の政治状況を反映する場ともなりました。ダボス会議のの目玉のひとつは、サステナビリティの観点で世界各国の企業を評価する”Global 100 Most Sustainable Corporations in the World” (Global 100 Index)のセッション。ここで発表された結果は、カナダの出版社Corporate Knights社によって「世界で最も持続可能性のある企業100社」(ランキング)として発表されます。それでは今年も2017年の顔ぶれを見ていきましょう。

Global 100 トップ10

順位 企業 業界
1 シーメンス ドイツ 電機
2 ストアブランド ノルウェー 金融
3 シスコシステムズ 米国 ハードウェア
4 ダンスク銀行 デンマーク 金融
5 INGグループ オランダ 金融
6 オーストラリア・コモンウェルス銀行 オーストラリア 金融
7 フィリップス オランダ 電機
8 ジョンソン・エンド・ジョンソン 米国 医薬品
9 DSM オランダ 化学
10 エナガス スペイン エネルギー

(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成

昨年に引き続きトップ10にランクインしたのは、

  • オーストラリア・コモンウェルス銀行
  • エナガス
  • ダンスク銀行

の3社。後述するように、今回はランキングの評価方法に大きな変更がありましたた。これまでは全業界一律の評価項目でランキング付がされていましたが、業界ごとに優先順の高い項目のみを評価するものに変更されましたた。これはGRIスタンダードの「マテリアリティ」の概念に似ていますが、GRIではマテリアリティは企業が自身で設定するのに対し、Global 100では業界に応じて一律に設定されるため、むしろSASBの「マテリアリティ」概念に近いと言えます。また、評価項目単位でも、再生可能エネルギーが考慮され、さらに金額のドル換算でも従来は名目為替レートが使われていましたが、今回は購買力調整為替レートが用いらるなど、細かい変更点も多数あります。その結果、昨年はトップ10から姿を消した米国企業が2社トップ10入りし、一方昨年は2社トップ10入りしたシンガポール企業がゼロとなりました。

 また、日本でも知名度の高い以下のような企業も11位から100位の間にランクインしています。

18位 ノキア(フィンランド ハードウェア)
27位 シュナイダーエレクトリック(フランス 電機)
35位 ポスコ(韓国 鉄鋼)
38位 ロレアル(フランス 化粧品)
42位 BNPパリバ(フランス 銀行)
43位 プジョー(フランス 自動車)
49位 アディダス(ドイツ アパレル)
53位 コルゲート・パーモリーブ(米国 消費財)
54位 H&M(スウェーデン アパレル)
57位 アクセンチュア(アイルランド IT)
63位 インテル(米国 半導体)
66位 LG電子(韓国 電機)
67位 武田薬品工業(日本 医薬品)
68位 ノバルティス・ファーマ(スイス 医薬品)
70位 シスメックス(日本 医療機器)
74位 ダイムラー(ドイツ 自動車)
75位 マイクロソフト(米国 IT)
82位 HP(米国 ハードウェア)
84位 アップル(米国 ハードウェア)
85位 アステラス製薬(日本 医薬品)
86位 日本電気(日本 ハードウェア)
91位 メルク・アンド・カンパニー(米国 医薬品)
92位 ゼネラル・ミルズ(米国 食品)
98位 レノボ(中国 ハードウェア)
99位 GE(米国 電機)

 日本からは、武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬、日本電気の4社が入りました。2015年まで毎年数を減らしていた日本企業は、2015年の1社から2016は4社へと挽回、2017年も4社を維持しました。武田薬品工業、シスメックス、アステラス製薬の3社は昨年に続くランクイン。一方、昨年ランクインしていた日産自動車が外れ、日本電気(NEC)が今年はランクインしました。

 また、一般的には日本で知名度が低いものの、Sustainable Japanで度々取り上げている企業では、

32位 マークス・アンド・スペンサー(英国 小売)
47位 スタトイル(ノルウェー エネルギー)

が高位にランクインしています。

Global 100 地域別社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
ヨーロッパ 44 59 55 49 52 53 59
北米 21 14 20 31 32 27 25
アジア・太平洋 31 23 18 18 15 18 14
中南米 3 3 5 2 1 2 2
中東・アフリカ 1 1 1 0 0 0 0

global100-2017-by-region
(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成

ヨーロッパ企業が再び数を挽回し、ヨーロッパと北米を合わせた企業で84%を占めました。一方アジアは順位を落としています。

Global 100 アジア内国別ランクイン社数ランキング

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
アジア 31 23 18 18 15 18 14
 日本 19 12 4 5 1 4 4
 シンガポール 1 2 3 4 4 4 3
 韓国 1 2 1 3 4 4 3
 オーストラリア 6 6 9 5 4 5 2
 中国 0 0 0 0 1 1 1
 香港 1 0 1 1 1 0 1
 インド 3 1 0 0 1 0 0

(出所)CorporateKnights社の発表を基にニューラル作成

 今年はオーストラリアのランクイン数が大きく減ったことにより、アジア・太平洋の数も減少しました。日本企業は、かつてほどのランクイン数はありませんが、今年はアジア・太平洋地域の中でトップの4社となりました。しかし、日本企業の中で最高位であった武田薬品工業が67位であったのに対し、韓国は、ポスコ(35位)、新韓フィナンシャルグループ(40位)、LG電子(65位)といずれも日本企業より上位につけています。また、シンガポール勢は、シティ・ディベロップメント(30位)、シンガポールテレコム(52位)、スターハブ(69位)とこちらも順位で健闘しています。香港唯一の恒生銀行も59位と武田薬品工業より上につけました。このようにアジア地域の上位企業は着実に力をつけてきています。

ランキングの評価方法①(4つのスクリーニング)

 Global 100の選出方法は、昨年から大きな変更がありましたが、評価方法の第1段階である「4つのスクリーニング」では、変更はありません。まず、毎年10月1日時点において時価総額20億米ドル以上の企業が自動的に評価対象となります。その後に4段階のスクリーニングが行われ、そのスクリーニング基準を満たさない企業はその時点でランキング対象から除外されます(但し、昨年のGlobal 100ランクイン企業は、制裁スクリーニングに引っかからない限り、自動的にランキングの対象となります)。それを通過した企業のみにスコアリングが為され、ランキングされていきます。スクリーニングは以下の4点により行われます。

  1. サステナビリティ情報開示
  2. 財務状況
  3. 製品カテゴリー
  4. 制裁

1. サステナビリティ情報開示

 まず最初にスクリーニングがなされるのは、サステナビリティ情報の開示の有無によってです。開示情報は以下の12項目に分類されます。

  • エネルギー生産性
  • 炭素生産性
  • 水生産性
  • 廃棄物生産性
  • リーダーシップ多様性
  • 役員報酬制度
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 年金保護
  • 離職率
  • 安全生産性
  • イノベーション能力
  • 税納付

 この12項目のうち業界ごとに「優先的KPI」が定められており、その優先的KPIを75%以上開示していれば、このスクリーニングを突破することができます。業界ごとに定められる「優先的KPI」は、業界内に属している企業のうち最低でも10%の企業が開示しているものが選定されます。

2. 財務状況

 情報開示のスクリーニングを通過すると次は財務状況でスクリーニングされます。具体的には以下の要件のうち5つ以上満たす必要があります。

  1. 純利益が黒字であること
  2. 営業キャッシュフローが黒字であること
  3. (純利益/期初総資産)が前年度の数値を上回っていること
  4. 営業キャッシュフローが純利益を上回っていること
  5. 長期負債÷総資産の年平均額が増加していないこと
  6. 流動比率が高まっていること
  7. 前年に普通株式発行を行っていないこと
  8. 粗利益が前年より増加していること
  9. 総資産回転率が向上していること

3. 製品カテゴリー

 財務状況のスクリーニングを通過すると次は製品カテゴリーのスクリーンが行われます。以下のいずれかに該当する企業はランキング対象から除外されます。

  1. GICS業界分類でタバコ業界に属する企業
  2. GICS業界分類で宇宙・防衛業界に属し、かつ防衛事業が売上の半分以上を占める企業

4. 制裁

 最後に、2016年9月30日までの過去12ヶ月の間に、サステナビリティに関する問題で罰金等を受けていないかがチェックされます。罰金額が総収益に占める割合の大きさが業界内で上位(ワースト)25%以内にいなければ、このスクリーニングを通過します。

ランキングの評価方法②(スコアリング)

スコアリングする際の評価基準は、「サステナビリティ情報開示」のスクリーニングで使用した優先的KPIが用いられます。優先的KPIごとの数値の平均がその企業のスコアとなり、そのスコアに準じて順位が決まります。今回は大きな変化がありました(赤字の箇所が変更あり)。

  • エネルギー生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷(直接的および間接的なエネルギー消費量ー再生可能エネルギー消費量)
  • 炭素生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 二酸化炭素排出量(スコープ1とスコープ2)
  • 水生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 水使用量
  • 廃棄物生産性: 売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 廃棄物排出量
  • リーダーシップ多様性: 女性役員の割合(業界内評価ではなく全業界評価)
  • 役員報酬制度:サステナビリティ指標に連動した報酬制度の有無
  • CEO報酬と従業員平均報酬の比率
  • 年金保護: 75% ×(DB及びDC年金掛金total ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)+ 25% ×(DB年金資産の公正価値 ÷ フルタイム当量従業員パーセンタイルランク)− (1-(DB年金資産の公正価値 ÷ 負債パーセンタイルランク)
  • 離職率: 離職者数 ÷ 総従業員数
  • 安全生産性: 事故死者数+20万人時間当りの労働喪失時間数
  • イノベーション能力: R&D投資 ÷ 売上
  • 税納付: 税金納付額 ÷ EBITDA

(今年度から2項目が新規追加)

  • サプライヤー:ブルームバーグのデータをもとに企業の最大サプライヤーを特定。そのサプライヤーをGlobal 100と同じ評価方法でスコアリングした際のスコア
  • 大気浄化生産性:売上(購買力調整後米ドル換算)÷ VOC排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 窒素酸化物排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ 硫黄酸化物排出量、売上(購買力調整後米ドル換算)÷ PM排出量の4つをそれぞれ25%ずつ

最終ランキングの作成

 最終ランキングは全業界横断での評価ではなく、まず業界ごとのスコアランキング表が作られます。そして、ベンチマーク指標であるMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)でのセクター(業界)割合を用い、各業界からの最終ランキングに入ることができる業界ごとの企業数を割り当てます。そして、その業界割当数を用い業界ランキングの上位企業から最終ランキングに入れられていきます。

【ランキング】Global 100 2017
【評価方法】The 2017 Global 100: Overview of Methodology

著者プロフィール

夫馬 賢治

株式会社ニューラル サステナビリティ研究所所長

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