欧州委員会のサステナブルファイナンスに関するテクニカル専門家グループ(TEG)は3月9日、EUタクソノミーの最終報告書と、EUグリーンボンド基準ユーザビリティ・ガイドを発表した。EUタクソノミーとEUグリーンボンド基準は、EUサステナブルファイナンス・アクションプランの4つの柱のうちの2つ。
EUタクソノミーは、EUの公式目標である2050年二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)のために必要な投資分野にフラグを立てる試み。EUは、タクソノミーの分野のみを「低炭素」や「グリーン」と認める動きを強めており、環境に良さそうだが実際には2050年カーボンニュートラルに資さない分野を「グリーン」と呼ぶグリーンウォッシングを防ぐ狙いがある。
【参考】【EU】欧州委TEG、サステナブルファイナンス「タクソノミー」等4分野最終発表。CCS付石炭火力、ガス火力、原発除外(2019年6月19日)
EUタクソノミー最終版では、「テクニカル・アネックス(専門附属書)」を同時に今回発行し、細かい基準や考え方が書かれている。その中で、原子力発電については、二酸化炭素排出量の観点からは排出量削減ができること確かとしつつも、タクソノミーの重要な要件となっている「No Harm」と言うことは現時点ではできないとし除外。今後の議論が必要とした。
炭素回収・貯蔵(CCS)については、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)も含め、電力分野で活用するためには、二酸化炭素排出量を100g/kWh以下にできなければタクソノミー基準を満たさないとする閾値を最終決定した。ガス火力についてもこの閾値が適用される。鉄鋼、セメント、アルミニウム、水素の製造でCCSを用いる場合にも、各分野に設定されている二酸化炭素排出量基準を満たす場合においてのみタクソノミー基準を満たすことを決めた。
またEUタクソノミー最終版では、企業と機関投資家に対する新たな情報開示を課す。企業に対しては、非財務情報開示指令(NFRD)の開示義務適用企業に対し、タクソノミーに該当する売上比率、タクソノミーに基づく設備投資額(Capex)とコスト(Opex)の開示が義務化される。2021年6月1日までに正式に委託法令という形で制定する。また、プロジェクトレベルやアセットレベルでも、自発的な開示を推奨した。細かい計算方法についても規定している。
【参考】【EU】欧州委、非財務情報開示指令の改正検討開始。EUタクソノミー影響も(2020年2月17日)
それ以外でも、2019年6月に最終版発表から、気候変動適応に関する基準を設定するとともに、林業、製造業、不動産では気候変動緩和の基準を変更した。
機関投資家では、運用会社と年金基金、保険会社に対する同様の情報開示を課す。まず、投資意思決定におけるタクソノミーの考慮具合の開示。次に、金融商品毎の投資が貢献する環境目的。そして、金融商品毎のタクソノミーに整合性のある投資割合。機関投資家については、投資割合は、脱炭素に向かう「Enabling」と、低炭素に貢献する「Transition」に分けて開示することが求められる。
EUグリーンボンド基準では、2019年3月に原案を発表し、2019年6月に最終版を発表している。その上で今回、ユーザビリティ・ガイドを発行した。同ガイドは、グリーンボンド基準に関する市場関係者向けのガイダンスや、第三者認証機関の市場ベースの登録スキームを推奨したもの。
今回発表されたEUタクソノミーの最終版により、TEGが進めていたEUサステナブルファイナンス・アクションプランに対する提言が全て完了した。4つの柱ごとに最終報告書の発表時期は、EUグリーンボンド基準が2019年6月、EUベンチマークが2019年9月、気候関連開示が2019年12月、そしてタクソノミーが2020年3月。今後、提言を受け、欧州委員会、欧州議会、EU閣僚理事会で必要な立法作業が進められることになる。
【文書】EUタクソノミー最終版
【文書】EUタクソノミー専門附属書
【文書】Usability guide for the EU green bond standard
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