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【オーストラリア】リオ・ティント、46000年前の先住民族の遺跡を爆破。BHPは採掘計画を一時停止

 資源採掘世界大手英豪リオ・ティントは5月24日、先住民族アボリジニの一派、プートゥ・クンティ・クラマとピニクラ族の46,000年前の遺跡を、鉄鉱石採掘のため爆破。世界中から大きな批判を浴びている。また同業の英豪BHPは5月29日、バンジマ族の15,000年前の遺跡を鉄鉱石採掘のため破壊する許可を政府から取得した。いずれの開発案件でも、オーストラリア法に則って行われているが、同法が先住民族の権利を十分保護していないことが批判の原因となっている。

 リオ・ティントが破壊した遺跡は、ハマーズリー山地のジューカン渓谷にある洞窟遺跡。西オーストラリアのアボリジニの聖地とされていた岩屋で、氷河期を乗り越えながら46,000年前から人類が住み続けてきた痕跡があり、遺物からは現在の所有者であるプートゥ・クンティ・クラマとピニクラ族との間で遺伝的な繋がりも確認されている。人類の継続的な生活が確認されている遺跡としては、オーストラリアの内陸部では最古だった。

 1993年に連邦政府が制定した先住権法では、未利用の政府所有地及び放牧リース地内にある土地や水域等に対しては先住権を主張できるが、私的保有されている土地や公共機関用地等では公的機関が保有している土地は先住権が消滅しており、またアボリジニ所有地についても同様に先住権が消滅しアボリジニによる強力な土地所有権が認められる形となっている。そして、西オーストラリア州政府が1972年に制定したアボリジニ遺産法では、アボリジニ所有地では、法的な所有者もしくはリース権保有者にしか声を上げる権利がなく、団体としての先住民族には抵抗権がない。

 リオ・ティントは2011年に、アボリジニの土地所有者から所有権を購入し、州政府から2013年に開発許可を取得した。2014年からは遺物保存のための発掘調査が行われ、当時2万年前からの遺跡だと思われていたが、46000年前からの遺跡ということがわかった。重要な遺物も7,000点以上出土し、保存価値が非常に高いことがわかった。とりわけ4000年前の髪の毛工芸品が出土し、遺伝子判定の結果、プートゥ・クンティ・クラマとピニクラ族と同じ種族ということが判明した。特に、23000年前から19000年前のまでの氷河期では、オーストラリア内陸の遺跡では遺跡が放棄されているが、同遺跡では定住が続いたこともわかった。

 但し、同法では、発掘の発見により開発を再考する義務はなく、遺跡そのものはそのまま破壊されることとなった。リオ・ティントは、プートゥ・クンティ・クラマとピニクラ族と協議を継続的に実施していたが、開発を止めるまでには至らなかった。同法は、2012年から先住民族の権利を強化する法改正が検討されているが、審議が難航し今まで改正には至っていない。リオ・ティントは、法改正に賛意を示しているが、あくまで法改正はまでは現行法のもとで判断すべきとの立場を採っている。

 リオ・ティントは爆破後の5月31日以降、プートゥ・クンティ・クラマとピニクラ族へ謝罪をしているが、実際には悪びれていないことを示す録音テープが出てきており、メディアはリオ・ティントの非を主張し続けている。リオ・ティントは、今回の一件について、先住民族側からは遺跡保護の要望を聞かされていなかったと主張。一方先住民側は、2013年以降、協議の中で重要性を伝え続けており、5月15日に発覚するまで、同遺跡を爆破する計画を知らされていなかったと反論している。

 州政府は5月29日、爆破されたピルバラ地域で、今後はBHPに対し南フランク鉱区での採掘を許可した。同地区はバンジマ族が生活をしてきた地域で、BHPは15年以上バンジマ族との協議を実施してきた。鉱区にある遺跡は15000前からのもので、86以上の価値の高い遺跡群だという。

 しかしBHPは6月11日、バンジマ族との強化協議を実施する前では、同鉱区での資源開発を停止すると表明。バンジマ族の遺跡に対する文化的敬意を示し、科学調査や、影響の緩和や保全措置に関する協議を行うとした。しかし、西オーストラリア州のアボリジニ遺産法では、先住民族に協議権は認めているが、先住民族の合意が資源採掘の条件にはなっていない。今後の展開に注目が集まる。

【画像】PKKP Aboriginal Corporation

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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