国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は8月31日、金融機関での国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)遵守に関し、有価証券の保管・管理を行うカストディアンも、投資先企業への人権責任を負うとの立場を示した。これにより、名目株主であったとしても、投資先の人権侵害に関しては、責任が及ぶことが明らかとなった。
今回の見解は、NGOのバンクトラックとOECD Watchが、OHCHRに対し回答を要求した書簡を送り、OHCHRが公式見解を公表したもの。元々の事案では、Society for Threatened Peoplesが、中国の監視カメラ大手ハイクビジョン(海康威視数字技術)の名目株主となっているUBSに対し、同社の新疆ウイグル自治区内でも監視カメラを提供が人権侵害に加担していると主張したことが発端。
【参考】【スイス】政府、UBSがETF投資先中国企業の人権侵害を追及するNCP案件を受理。NGOが提訴(2021年2月9日)
UBSの事案では、Society for Threatened Peoplesが、経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針に基づくスイスの連絡窓口(NCP)に提訴。しかしNCPは、UBSとのビジネス関係は実質的株主との間にとどまり、投資先企業との直接的な関係性は認められないとの判断を下していた。それを不服としたバンクトラックとOECD Watchが、OHCHRに見解を照会していた。
今回OHCHRは、UNGPは、業界や企業規模を問わず、「ビジネス関係」のある企業は同様に責任を負っていることを強調し、それによって名目株主だとしても、株主とのビジネス関係は認められ、UNGP上の責任を負うとの見解を下した。
その上で、カストディアンには、人権への負のインパクトを特定、評価、回避するためには、実質的株主や、投資先企業の双方へのアプローチが可能と説明した。