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【日本】経産省、「GXリーグ基本構想」発表。詳細内容が見えず、最初から茨の船出

 経済産業省は2月1日、カーボンニュートラルを目指す企業の参画を募る「GXリーグ基本構想」を公表。今後、詳細設計を進めつつ、同時に賛同企業の募集も開始した。しかし、GXリーグを通じて実施する内容が最初から不鮮明になっている。

 今回の構想は、経済産業省の「世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会」から誕生。同研究会は2021年8月に中間整理を発表し、「GXリーグ」の創設も盛り込んでいた。当時はGXリーグの中身が不鮮明であったため、今後の議論に注目が集まっていたが、今回のまとめられた基本構想でも内容は鮮明にはならなかった。

 中身では、GXリーグの基本構想として、「GX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む『企業群』が、官・学・金で GX に向けた挑戦を行うプレイヤーと共に、一体として経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場」と設定した。

 それをもとに「参画企業に求めること」としては、1つ目が、自主的な1.5℃と整合性のある努力目標の設定とアクションの公表。こちらはスコープ1とスコープ2のみが念頭に置かれている模様。2つ目が、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル化に向けたアクション。こちらは、目標へのコミットではなく、あくまで何らかのアクションをとればよい内容。サプライチェーンでの1.5℃目標整合は任意とした。3つ目が、グリーン製品の積極・優先購入。カーボンクレジットでオフセットするタイプの製品も対象とした。

 ここまでは、GXリーグは企業に自主的な宣言を求めるイニシアチブのようにみえるが、最も不透明なのは、1.5℃と整合性のある努力目標の設定に関し、努力目標を超過した排出分は、Jクレジット等のカーボンクレジットや、「企業間での自主的な超過削減分の取引」によってオフセットすることを求めている点。同様に、努力目標より削減できた「超過削減分」については他者に販売できるという。

 この内容は、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引制度を「企業の自主運用」で行う内容にみえるが、二重計上の問題や、国際算出ガイドラインやイニシアチブとの整合性に関しては設計がされていない。日本国内の温暖化対策推進法(温対法)との整合性にも言及されていない。

 経済産業省は、「GXリーグ基本構想」と「GXリーグ」の実装に向けた詳細設計の議論と取組の実証を2022年度に進める計画。今後、GXリーグ設立準備事務局を立ち上げ、基本構想に初期賛同企業とともに、2023年4月以降のGXリーグ本格稼働を目指した準備を進めるという。そのため、2022年秋以降に、日本独自のカーボンクレジット市場も含む実証事業を実施する考え。

 今回のGXリーグは、リーグ参加者での排出量取引がユニークな内容だが、ほとんど中身が詰まっていない。参画の判断は、ルール作りに参加したいかがカギとなる。但し、同研究会の最終回となった2021年12月の会合では、日本鉄鋼連盟から、GXリーグの基本構想に異を唱える文書が提出されたままの状態。詳細設計に大きな課題が残っている。同研究会には、国際イニシアチブに詳しい委員が入らなかった。

 排出量取引制度に関しては、整備されていない国・地域に対し、EUが国境調整税を課すルール整備を進めている。但し、日本では国内に反発の声が大きく、導入議論が進んでいない。経済産業省は、EUと交渉する材料を作るためだけに、自主的に排出量取引制度の導入を急いでいるようにも思える。

【参照ページ】「GXリーグ基本構想」を公表し、賛同企業の募集を開始します

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株式会社ニューラル サステナビリティ研究所

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