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【戦略】スポーツ界のESG戦略 〜さらなるアクションと責任ある情報開示を〜

【戦略】スポーツ界のESG戦略 〜さらなるアクションと責任ある情報開示を〜 1

 2023年12月、国連気候変動枠組条約第28回ドバイ締約国会議(COP28)が開催され、二酸化炭素排出量を2035年までに2019年比で60%削減することや、エネルギーでの脱化石燃料で歴史的合意がなされた。

 スポーツ界からもCOP28に参加しており、各団体がパネルディスカッション等で発表を行った。スポーツ界が掲げるESG戦略やCOP28で何を主張していたのかをみていこう。

欧州サッカー連盟(UEFA)

 UEFAはCOP28で、2024年6月からドイツで開催されるUEFA EURO 2024を、3,200万ユーロ(約51億円)の投資を通じて、過去最も持続可能な大会にすることを目指していることを表明した。

 UEFAは国連気候変動枠組条約カトヴィツェ会議(COP24)で設立された国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の「スポーツを通じた気候行動枠組み(Sports for Climate Action Framework)」の創設メンバーであり、2022年には国連の気候変動緩和キャンペーン「Race to Zero」に参加している。

【参考】【国際】スポーツ17団体、UNFCCC策定「気候アクションのためのスポーツ原則」に署名。IOC、FIFA等(2018年12月17日)

 欧州グリーンディール戦略への支持も表明。2020年以降、欧州全域で試合放送中に専用のテレビ広告を放送しており、現在のエネルギー危機に対する日常的なアクションをファンに呼びかけ、エネルギー節約に関するメッセージを発信している。

 同大会のESG戦略では、ESGの3分野に、11の行動テーマ、28のトピックを設定。特に注目すべき8つの内容は、

  • 気候変動や廃棄物の分野を含む環境への影響の削減
  • 大会に関連する削減しきれない二酸化炭素排出を緩和するプロジェクトに特化した基金への投資
  • あらゆる差別を防止し、すべての人の人権が尊重され、保護されるようにする
  • 運動を推奨し、スタジアムや大会会場で健康的な飲食を提供する
  • フットボールとのつながりを醸成し、ヨーロッパ社会全体での一体感を促進する
  • 透明性が高く、説明ある大会運営の実施
  • ステークホルダーに対するナレッジとグッドプラクティスの共有
  • 持続可能な文化を形成するため、開催都市、パートナー、その他のサッカー関係者と協力しイノベーションを起こす

【戦略】スポーツ界のESG戦略 〜さらなるアクションと責任ある情報開示を〜 2
(出所)UEFA 「EURO 2024 ESG strategy」

 UEFAは同大会だけではなく、2021年12月に発表した2030年サステナビリティ戦略に則り、スタジアムのケータリングを健康的で持続可能なものにするためのガイダンスを発行。サッカーを通じて、気候変動、差別撤廃、健康等の課題にチャレンジを行っている。

【参考】【ヨーロッパ】欧州サッカー連盟、イベント時ケータリングで環境・栄養ガイドライン発行(2023年9月13日)

国際ヨットレースシリーズ「SailGP」

 国際ヨットレースシリーズ「SailGP」は2021年10月、CDPとのパートナーシップを発表。SailGPのパートナーやサプライヤー、大会開催都市に対し、CDPの情報開示に参画するよう促すパートナーシップを締結した。2022年にCDPに情報を開示することを約束していた。

【参考】【国際】CDP、世界の都市自治体に気候変動対策強化要請。国や県の強力も必要。SailGPはスポーツ界から援護(2021年10月11日)

 実際にSailGPは 2022年6月から2023年3月まで実施されたシーズン3に関して、CDPに情報を公開。CDP情報開示を行った初めてのスポーツ団体となり、評価はB-を得た。SailGPは、2025年までに2019年を基準として二酸化炭素排出量を55%削減し、2040年にカーボンニュートラルを達成することを掲げている。

 シーズン3では、10イベント中5イベントで100%クリーンエネルギーを使用し開催し、シーズン2と比較して236tの二酸化炭素を削減した。また、運営モデルの最適化を行い、現地採用やリモートワーク等の導入により、スタッフの移動に関わる二酸化炭素排出量も1イベントあたり22%減少した。

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(出所)SailGP

 現在開催されているシーズン4では、移動式バッテリープロバイダーの米Aggrekoとともにバスケットボールコート6面分の仮設ソーラー発電システムの設置、女性アスリートのみで構成されるチームの結成等に取り組んでいる。

 また、スイスの海洋生物保護団体「OceanCare」の2018年の調査では、水中の騒音によりクジラやイルカのコミュニケーションが低下し、繁殖に悪影響があること等が報告されている。これを受け、SailGPはブリストル大学、カディス大学、エクセター大学と連携し、レース中に発生する騒音が海洋生物に与える影響に関する研究への協力を開始した。

 シーズン2からは、シーズン中の勝ち点を競う以外の仕組みとして「地球のための表彰台」制度を開始。環境に関する新技術の取り組み、プラスチック利用量の削減、ダイバーシティ&インクルージョン等、合計10のサステナビリティに関する基準に関して得点が高いチームが勝利し、賞金とトロフィーが与えられる。COP28では、他のスポーツ団体に対して変化とインパクトをもたらすためのさらなるアクションの必要性を訴えた。

リバプールFC

 英国のプロサッカーリーグ1部「プレミアリーグ」に所属するリバプールFCは、2021年1月に気候変動、公平性、ダイバーシティ、インクルージョン等の重要な問題に関するコミットメント「The Red Way」を発表した。人、地球、コミュニティの3つのテーマに関して、ISO20121(イベントサステナビリティ)を活用した明確な目標を設定し活動を行っている。

 同クラブは二酸化炭素排出量の目標として、2030年までに50%削減、2040年までにカーボンニュートラルを達成することを掲げている。拠点全体で再生可能エネルギーを100%導入し、チームバスに水素化植物油(HVO)燃料を利用し、通常の燃料と比較して二酸化炭素排出量を90%削減した。

 スタジアムでは、植物性の食事を提供し食品廃棄物と二酸化炭素排出量を削減、ペットボトルのリサイクル率は2021年の25%から2022年には86%へと向上、再利用可能なカップの返却率も98%を達成した。生物多様性の移行計画も策定し、スタジアム内の植樹や野生動物の保護を実施している。

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(出所)リバプールFC「THE RED WAY」

 COP28では、フットボールクラブとして唯一の参加者としてパネルディスカッション等に参加し、サステナビリティに関する取り組みに関して強調し、SailGP等の他のスポーツ団体と、スポーツ業界が与える影響に関して議論を行った。

国際自動車連盟(FIA)

 モータースポーツの国際業界団体である国際自動車連盟(FIA)は2023年12月、COP28の場で、モータースポーツとモビリティ分野におけるFIAと加盟メンバーの取り組みに関する報告書を発表した。
 
 FIAには、147カ国、243団体が加盟。2026年までに持続可能な燃料を使用した世界選手権の実現、2030年までにカーボンニュートラルの達成を目標として掲げている。同報告書では、FIAが取り組むEVを利用するユーザーの調査、バイオ燃料の研究、モータースポーツへのサーキュラーエコノミーの導入等の活動に関してまとめた。

 8,000万人以上の会員の力を利用し、モータースポーツとモビリティのナレッジの共有、イノベーションの相互作用を起こし、政府、企業、消費者それぞれに対してアクションを促すとした。

まとめ

 COP28では産業界だけではなく、スポーツ界も多くの取り組みを発表し、他業界と連携しより大きなインパクトを生み出すための議論が実施された。世界陸連(World Athletics)の調査では、アスリートの75%が気候変動の影響をアスリート自身が受けており、85%がスポーツ全体に影響を与えていると回答。スポーツ界、アスリートにとってもサステナビリティへの取り組みが非常に重要となってきている。

 スポーツ界にはますます、サステナビリティに関する取り組みへの優先順位を上げ、責任ある情報開示を行う姿勢が求められている。

【参照ページ】COP28: The sporting perspective

[2024.3.12修正]
一部内容を修正した。

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