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【日本】特別チーム、ジャニーズ事務所性加害で報告書。メディアも適切に人権デューデリすべき

【日本】特別チーム、ジャニーズ事務所性加害で報告書。メディアも適切に人権デューデリすべき 1

 ジャニーズ事務所の「外部専門家による再発防止特別チーム」は8月29日、故ジャニー喜多川氏の性加害事案に関し、調査報告書をジャニーズ事務所に報告すると同時に、内容を公表。記者会見も実施した。

 外部専門家による再発防止特別チームは、ジャニーズ事務所が5月に任命。林眞琴・元検事総長、飛鳥井望・公益社団法人全国被害者支援ネットワーク理事兼公益社団法人被害者支援都民センター理事長、齋藤梓・公認心理士の3名が就任。アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業の弁護士6人が調査補助者として特別チームの事務局を務めた。

【参考】【日本】ジャニーズ事務所、性加害事案で、社外取締役新任や外部チーム発足を発表。人権問題(2023年8月29日)
【参考】【日本】国連人権理事会作業部会、日本企業の課題を多数指摘。記者質問はジャニーズ問題に終始(2023年8月5日)

 調査は5月26日から8月29日まで実施。関係資料の精査の他、被害者23人(そのうちジャニーズJr.経験者が20人、残り3人はジャニーズ事務所以外での被害者)、ジャニーズ事務所関係者等18人の合計41人へのヒアリングを実施。また、2023年7月18日に性加害に関する情報を収集するために「専用窓口」を開設し、ジャニーズ事務所の在籍者に限らず、退所者からも被害申告や被害に関する情報提供を求めた。

 同報告書は、ヒアリングの結果として、「ジャニー氏が、自宅や合宿所や公演先の宿泊ホテル等において、ジャニーズ Jr.のメンバーを含む多数の未成年者に対し、一緒に入浴したり、同衾した上、キスをしたり、身体を愛撫したり、性器を弄び、口腔性交を行ったり、肛門性交を強要したりする、などの性加害を行っていたことが明らかとなった」と明言した。

 ヒアリングの結論としては、「性加害が長期間にわたり繰り返された」「性加害が多数のジャニーズ Jr.に対して広範に行われた」「ジャニーズ Jr.の間では、ジャニー氏から性加害を受ければ優遇され、これを拒めば冷遇されるという認識が広がっていた」「ジャニーズ Jr.には性加害の被害申告をする機会がなかった」「性加害後に現金を渡していた」と整理した。

 性加害のを受けた身体的及び精神的影響としては、トラウマ反応や、過呼吸、同性不信、恐怖心、鬱等の症状が出た、もしくは今でも出ているとの証言が得られた。

 関係者の認識では、故メリー喜多川元代表取締役はジャニー氏の性加害を認識していたと推認するのが合理的かつ自然であると考えるとしつつ、藤島ジュリー景子代表取締役に関しても、すでに暴露本等が出ていたことから、取締役就任時頃には、ジャニー氏によるジャニーズ Jr.に対する性加害の疑惑について認識していたと認められるとした。さらに、「ジャニーズ事務所のマネージャーやスタッフ等の関係者中にもジャニー氏の性加害の事実を認識している者が相当数いたと考えられる」とも伝えた。調査では、ジャニーズ事務所の社員による性加害があったことも確認された。

 過去の裁判等の後の対処では、ジャニーズ事務所側から裁判に関する情報共有はなく、また証言から、ジャニー氏とメリー氏以外の従業員が、当該事案の話題をすることも社内の権力構造としては難しい状況だったことも紹介。また、両氏の死去後に、ジュリー現代表取締役が、性加害の事実関係を調査して適切な対応を行うことはなかったと言及した。また、2023年1月に設置された「コンプライアンス委員会」でも当該事案の議題や話題はなかった。

 これらを受け、性加害の原因については、「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係者における権力構造」の4つを挙げた。さらに問題の背景としては「同族経営の弊害」「ジャニーズJr.に対するずさんな管理体制」「ガバナンスの脆弱性」「マスメディアの沈黙」「業界の問題」の5つを指摘した。

 このうち、マスメディアの沈黙については、ジャニー氏の性加害の問題については、過去にいくつかの週刊誌が取り上げてきたものの、2023年3月にBBCが特集番組を報道して、その後、元ジャニーズJr.が性加害の被害申告の記者会見を行うまで、多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかったことを問題視。ジャニーズ事務所に忖度した姿勢が、被害を拡大させたと考えられるとした。

 業界の問題では、エンターテインメント業界は、従来、性加害やセクシュアル・ハラスメントが発生しやすい土壌があると言われていることや、韓国でも性虐待で女優が自殺した事案等を挙げ、性加害やセクシャル・ハラスメントを生じやすい権力構造があると考えられるとした。

 ジャニーズ事務所に対する再発防止策の提言では、まず、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づき、補償のため、外部専門家からなる「被害者救済委員会」を構築し、救済のための被害者との対話を速やかに始めるべきとした。補償金額等の判断では、補償に関して知見と経験を有する民法学者等の外部専門家からあらかじめ意見を聴取した上で「判断基準」を策定しておくべきとした。被害者に法律上の厳格な証明を求めることも慎むべきとした。

 さらに同じく国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に基づき、人権方針の策定、特に、人権方針の中に、エンターテインメント業界には性加害やセクシュアル・ハラスメントが生じやすい構造が存在しているとの人権リスク認識を明記すべきとした。マスメディアとのエンゲージメントに関しても、ステークホルダー・エンゲージメントとして特記すべきとした。
 
 ガバナンスの強化では、「ジャニーズ事務所が解体的な出直しをするため」、ジュリー氏が代表取締役社長を辞任すべきと提言。また社外取締役に関しても、5月に3人が選任されたが、依然として取締役会は開催されておらず、取締役会を定期的に開催すべきとした。加えて、人権に関する専門家をチーフ・コンプライアンス・オフィサー(CCO)として設置、内部監査室の設置、社内規定の整備、内部通報制度の活性化、相談先の拡充とアドボケイトト(権利表明が困難な人に代わり、その権利を代弁・擁護する者)の配置も提言した。

 メディアとのエンゲージメントでは、メディアとの関係を、人権デューデリジェンスを通じて相互監視する関係へと再構築するため、すみやかにメディアとのエンゲージメントを開始すべきと提言。また、付随して、メディア自身が、適切な人権デューデリジェンスを実施することも求めた。

【参照ページ】外部専門家による再発防止特別チームに関する調査結果について

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