
国連環境計画(UNEP)は10月24日、国連気候変動枠組条約第29回バクー締約国会議(COP29)に先駆け、温室効果ガス排出量現状評価報告書「排出ギャップ報告書」の2024年版を発行した。気温上昇の見通しでは、現状の政府コミットメントレベルでは、2100年頃の世界気温は産業革命前から3.1℃上昇するペースと見通した。
【参考】【国際】UNEP、排出ギャップ報告書2023年発行。2100年頃に2.5℃から2.9℃上昇の見通し(2023年11月21日)
同報告書では、異なるシナリオでの将来気温上昇を予測。各国政府が現行の無条件及び条件付き排出削減目標(NDC)を完全に履行した場合、66%以上の確率で2.6℃上昇、無条件のNDCだけを履行すると同2.8℃上昇、現在の政策のみを継続した場合には同3.1℃の上昇となる。現在の政策のみを継続した場合の気温上昇予測は昨年よりも悪化しており、NDCの履行が遅れていることもうかがえる。

(出所)UNEP
一方、同報告書では、無条件及び条件付きNDCと各国政府のカーボンニュートラル宣言を完全に履行すれば、地球温暖化を1.9℃に抑えることができるが、これらのカーボンニュートラル宣言の実施に対する信頼性は現在のところ低いと見立てた。
今回UNEPは、最新の見通しとして、1.5℃目標を達成するためには、各国政府は現在進められている排出削減目標の見直し(ストックテイク)作業について、2030年までに年間温室効果ガス排出量を42%削減し、2035年までに57%削減が必要と説明。また、2℃未満目標の達成水準では、2030年までに同28%削減し、2035年までに37%削減することが必要となる。
温室効果ガス排出量は2023年には過去最高の57.1Gtにまで増加。このように対策が遅れていることにより、今後必要となる排出削減ペースは傾斜的に高まっていく。現時点では、1.5℃目標の場合は2035年まで毎年7.5%、2℃目標の場合は4%の排出削減が必要となる。
削減ポテンシャルとしては、温室効果ガスの二酸化炭素換算1t当たり200米ドル以下のコストに限定した現時点でのテクノロジーでも、2030年には31Gt(2023年比52%)、2035年には41Gtの削減が可能。再生可能エネルギーで2030年には削減ポテンシャルの27%、2035年には38%を達成でき、それに森林アクションが加わると、両年とも潜在的削減量の約20%を達成できる可能性がある。他には、省エネ、電化、燃料転換等がある。
2021年から2050年までのカーボンニュートラルに向けた追加投資額は、年間0.9兆米ドルから2.1兆米ドルにとどまっており、世界経済と金融市場の全体規模年110兆米ドルからすると非常に小さい。UNEPは、特に、アフリカ連合(AU)以外のG20加盟国の排出量は世界の77%を占めるため、G20加盟国が対策を大幅に強化すべきとした。AUはわずか5%のシェアしか占めていない。
同報告書は、主要国別の政策評価も公表。日本に関しては、二酸化炭素除去の情報の透明性が落第点と評価し、G7の中では唯一の落第点だった。すでに排出量が総量で削減に転じているG20の国は、米国、カナダ、EU、英国、日本、オーストラリア、ロシア、ブラジル、南アフリカ、アルゼンチン。一方、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、サウジアラビア、トルコはまだ総量が増え続けている。
【参照ページ】Nations must close huge emissions gap in new climate pledges and deliver immediate action, or 1.5°C lost
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