
EU司法裁判所(CJEU)を構成する一般裁判所は9月10日、EU気候タクソノミーに原子力発電と天然ガスを含めるよう容認した欧州委員会の委託法令(政令に相当)の無効を求める訴訟に関し、有効との判決を下した。オーストリア政府が提訴していたが訴えを棄却。欧州委員会が勝訴した。
同委託法令は、2022年2月に制定。但し、立法審議中から意見の対立が激しく、制定後も欧州委員会の審議の中では撤回を求める決議が可決されたが、本会議で撤回案が否決され、最終的に撤回されずに成立した経緯もあった。また、制定直後にオーストリアが無効を主張し、ルクセンブルクも支持する形でECJに提訴していた。一方、ブルガリア、チェコ、フランス、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、スロバキア、フィンランドは被告の欧州委員会側を支持していた。
【参考】【EU】欧州委、EUタクソノミーで原子力と天然ガスに厳しい条件設定。今後、異議申立期間(2022年2月3日)
【参考】【EU】EUタクソノミー、ルクセンブルクとオーストリアが欧州司法裁に提訴へ。ドイツも反発(2022年2月4日)
【参考】【EU】欧州議会委員会、EUタクソノミーに原発・ガスを加える委託法令に異議。今後本会議採決(2022年6月15日)
【参考】【EU】欧州議会本会議、EUタクソノミーで原発と天然ガスを厳しい条件の中で容認。異議動議を否決(2022年7月7日)
EU機関の行為に関しては、EU加盟国、EU機関、個人は、一定の要件を満たした場合に、行為の取消を求める訴訟をEU司法裁判所を構成する一審の一般裁判所に起こすことができる。同裁判所が妥当と判断すれば、当該行為は取消される。また一般裁判所の決定については、決定の通知から2か月10日間以内であれば、
欧州司法裁判所(ECJ)に上訴することができる。
今回の判決では、委託法令の根拠法となるEUタクソノミー規則では、技術的スクリーニング基準を定める委託法令を制定する権限を欧州委員会に付与しており、実際に制定された委託法令の内容は、同規則が授権した範囲内と判断した。具体的には、欧州委員会は、原子力発電は温室効果ガスの排出がほぼゼロであり、再生可能エネルギー等、技術的・経済的に実現可能で、継続的かつ確実にエネルギー需要を賄える十分な規模の低炭素代替エネルギー源は現時点では存在しないと判断する権利が欧州委員会にはあるとした。
また、欧州委員会は、委託法令の中で、原子力発電所の通常運転、重大な原子炉事故、高レベル放射性廃棄物に関連するリスクを十分に考慮しており、オーストリアが主張していた旱魃や気候災害が原子力発電に及ぼす悪影響に関する議論は受け入れられるには推測的すぎると評価した。さらに、発電部門における他の経済活動と同様に、上流または下流の活動であるウラン鉱石の採掘・加工、ウラン精製、転換・濃縮、燃料集合体の製造・輸送、あるいは武力紛争、妨害工作、民生用・軍事用途の乱用・拡散リスクを考慮する義務を欧州委員会は負っていなかったと判断した。
加えて、原子力発電と天然ガス分野における経済活動が、一定の条件下で気候変動緩和及び気候変動適応に実質的に寄与し得るという見解を支持。2022年委任規則が採用したアプローチは、供給の安全性を確保しつつ、段階的に温室効果ガス排出量を削減する漸進的アプローチと伝えた。
原告のオーストリア政府は、今回の判決に対し不服を表明している。オーストリア政府が上訴する可能性はある。
【参照ページ】Austria’s action against the inclusion of nuclear energy and fossil gas in the sustainable investment scheme dismissed
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