
欧州委員会と外務・安全保障政策上級代表は10月16日、南地中海パートナー国に対する外交・通商政策の柱として、強靭で持続可能かつ統合された経済、人材開発、安全保障・防災・災害対策・移民管理の3つの強化を掲げる「地中海協定」を策定した。
南地中海パートナー国とは、「欧州近隣政策(ENP)」枠組みで位置づけられているモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト、イスラエル、パレスチナ、ヨルダン、レバノン、シリアのことを指す。
【参考】【EU】欧州委と上級代表、グローバル気候・エネルギー・ビジョン発表。EU域外での再エネ促進(2025年10月17日)
強靭で持続可能かつ統合された経済の分野では、貿易・投資関係の近代化、エネルギー・クリーン技術、水資源レジリエンス、ブルーエコノミー・農業、デジタル・交通コネクティビティ、雇用創出に関する施策を盛り込んだ。特に、地中海横断再生可能エネルギー・クリーン技術イニシアチブ(T-MED)とStartUp4Medを旗艦プロジェクトと位置づけた。また、医療・農業分野を含むサプライチェーン統合や重要原材料の分野でも協力する。
【参考】【EU】欧州委と上級代表、グローバル気候・エネルギー・ビジョン発表。EU域外での再エネ促進(2025年10月17日)
人材開発の分野では、高等教育、職業訓練、技能・雇用、若者と市民社会のエンパワーメント、移動性、文化、観光、スポーツの促進に関連する行動を盛り込んだ。特に若者に重点を置き、「地中海大学」を旗艦プロジェクトと位置づけ、地中海沿岸全域の学生をつなぐ。既存の技術・職業教育訓練エコシステムや、遺産メカニズム、文化遺産の振興、芸術家の支援、持続可能な観光復興も進める。
安全保障・防災・災害対策・移民管理の分野では、共通の安全保障課題への対応、地域の防災・災害対策能力強化、移民問題への包括的アプローチに関する協力を盛り込んだ。優先イニシアチブとして、地中海地域の防災・災害対策とレジリエンス強化を設定。また、移民管理への「ルート全体」アプローチの推進に加え、移民密輸対策のための運用面での連携を含めた統合的な国境管理・安全保障への共通アプローチも検討する。その一環として、EUと南地中海諸国による平和・安全保障に関する地域フォーラムも設立する。
EUは、南地中海パートナー国を重要協力地域と定め、1995年にはバルセロナ宣言、2021年には地中海アジェンダを発表。今回の地中海協定は、地中海南部パートナー国、EU加盟国・EU機関、広域の近隣国に加え、市民社会、民間セクター、アカデミア、シンクタンク、文化・経済組織の代表者等、幅広い関係者を巻き込んだ包括的かつインクルーシブな協議プロセスを経て策定された。また、ガバナンス、具体的行動、共同オーナーシップを強化し、総合政策枠組みとの連携を確立することを掲げている。
同協定は、バルセロナ宣言の30周年を記念する2025年11月に、EUと南地中海パートナー国の調印を行う予定。また、南地中海地域以外の湾岸諸国、サブサハラ・アフリカ、西バルカン諸国、トルコ等にも連携を拡大していくことも視野に入れている。
欧州委員会は、クリーンエネルギーを含むサステナビリティの観点を対外的に進める動きを加速させている。背景には、EU域内での内政に行き詰まる中、対外的環境を整備することで、EU政策を対内的にも進めやすくする狙いがあるとみられる。
【参照ページ】Pact for the Mediterranean – One Sea, One Pact, One Future – a shared ambition for the region
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