
経済産業省の産業構造審議会と環境省の中央環境審議会の合同会合は10月9日、小型家電リサイクル制度の施行状況に関する評価・検討報告書を取りまとめた。使用済小型家電の回収量が目標を下回り、リチウム蓄電池に起因する発火事故も増加する中、モバイルバッテリー等4品目の対象追加や回収方法の改善、再資源化の高度化を提言。年間14万tの回収目標を維持し、2029年度を新たな目標年度とする方向性を示した。
現行の小型家電リサイクル法は2013年4月に施行。国が認定した事業者が使用済製品を広域的に回収し、解体・破砕・選別を経て、製錬事業者等にリサイクル原料を供給する仕組み。関係者が自主的に回収・処理方法を工夫する「促進型」の制度で、資源確保と有害物質管理、廃棄物削減を目的としている。今回の報告書は、施行から約13年が経過した制度の課題を整理した。
2026年9月時点で認定事業者は60社あり、全都道府県で複数の事業者が収集区域の認定を受けている。2025年6月時点で回収・処理を実施中、または実施に向け調整中の市町村は約86%で、人口ベースでは約95%に達した。一方、年間回収量は2020年度の約10万2,000tをピークに減少し、2024年度は約8万7,000t。報告書は、製品の流通量減少や軽量化等の影響を推察している。同年度の認定事業者による金属等の再資源化量は約4万4,000tだった。
回収拡大の課題は、自治体毎の実績差にある。報告書によると、年間の住民1人当たり回収量が1kg以上の市町村は391で約26%にとどまり、0.1kg未満が約43%を占める。1kg以上を達成した市町村の約78%は、ごみ集積所で資源回収と合わせて集める「ステーション回収」か、清掃工場等で収集ごみから選別する「ピックアップ回収」を実施していた。
公共施設や店舗に設置するボックス回収は、持ち込みの手間や投入口の大きさが制約となる。ボックス回収を実施する615市町村のうち、この方法による年間1人当たり回収量が0.1kg未満だったのは482市町村で約78%。報告書は、地域の実情に応じて複数の方法を組み合わせ、対象品目も可能な限り広げるよう求めた。ピックアップ回収等が難しい自治体には、小売業者との連携や認定事業者の直接回収の周知を促している。
直接回収は2024年度に認定事業者24社が実行し、約3万3,000tを回収した。家電量販店の店頭回収に加え、宅配便や引越し事業者を通じた回収等が広がっている。同報告書は、回収拠点の拡大や方法の多様化を求め、排出時のポイント付与等も回収増加につながる可能性があるとした。小売業者には、購入時の声掛けや啓発に加え、企業ごとの回収実績の公表を期待している。約6割で横ばいの制度認知度を高めるため、回収拠点の情報提供も強化する。
適正な回収ルートへの誘導には、違法回収への対応も欠かせない。同報告書は、無許可の不用品回収業者が集めた廃家電の不法投棄や、不適正なスクラップ処理後の海外輸出を問題視した。2026年6月に成立した廃棄物処理法等の改正で、スクラップヤードへの許可制や一部物品の輸出確認を導入する措置が盛り込まれたことにも言及した。
【参考】【日本】環境省、非常災害廃棄物の迅速処理で自治体と民間業者との協定締結促進。平時の備え強化(2026年9月18日)
事業採算性の面では、制度開始当初は自治体が認定事業者に小型家電を売却する取引が多かったが、処理費を支払う「逆有償」での引き渡しが増えている。中国等による廃プラスチックの輸入規制を背景とする残渣処分費の上昇や、バッテリーの取り外し、火災防止設備の導入等が負担となっている。回収金属の価値は金・鉄・銅の3種類で約9割を占め、資源価格の変動にも左右される。
そこで、同報告書は今回、再資源化の高度化によって事業性と回収資源の質を高める方針を示した。2024年度時点では、認定事業者が選別したプラスチックの約6割が再資源化されず、熱回収されている。自動車向け再生プラスチックの需要拡大等を踏まえ、素材としてのリサイクルを促進する。また、半導体基板や蓄電池に含まれるパラジウム、ニッケル、コバルト、リチウム等の回収に向け、選別技術の高度化を求めた。自治体や認定事業者によるリユースも推進する。
高度化の効果を回収拡大につなげるには、工程をまたぐ連携も必要になる。同報告書は、排出、回収、破砕・選別、再資源化、商品化の各段階で業種間の連携が十分ではないと指摘。技術開発や設備導入とともに、自治体、製造業者、認定事業者、製錬事業者等が安全確保やリサイクルを妨げる要因を共有し、全体の効率を高めるよう求めた。
認定事業者の実践を可視化する提言も盛り込まれた。認定取得後に小型家電リサイクルを実施していない事業者が約1割あり、パソコンやスマートフォン等の特定対象品目だけを扱う事業者が約4割存在する。自治体からの引取実績や対象品目の取扱状況を評価し、国のウェブサイト等で公表することが提案された。個社毎の回収・再資源化実績や個人情報の消去方法も、事業者の同意を得て公表し、自治体等が委託先を選びやすくする。
安全面での最重要課題は、リチウムイオンバッテリーによる発火だ。小型家電リサイクル協会の調査によると、認定事業者での2024年度の発火件数は312件に上った。通常のごみに混入した電池が収集・処理時の圧縮や破砕で損傷する問題は、廃棄物処理システム全体に及ぶ。報告書は、国に電池検知機や発煙・発火の検知消火システムの導入支援を求めるとともに、自治体、製造業者、小売業者等による分別排出の周知を促した。
製造業者には、電池使用製品であることを消費者が判別できるよう、製品本体への表示に努めることを求めた。電池が容易に取り外せない一体型製品は、消費者による解体を推奨せず、電池を取り出さずに排出する考え方を明示。取り外し可能な製品は、電池を外して廃棄することが望ましいとした。いずれも適切な排出ルートへ誘導する情報提供が必要となる。
制度対象の見直しでは、加熱式たばこデバイス、電子たばこデバイス、モバイルバッテリー、ポータブル電源の4品目を追加すべきとした。現在の28品目に該当せず、廃棄量が増加している製品を対象に含めることで、自治体が回収した製品の受け皿を増やす。但し、自治体によっては別の仕組みでバッテリー等を分別回収しているため、全国一律に小型家電回収へ出せると誤解されないよう、慎重な周知が必要としている。
回収目標は、従来の年間14万tを維持。現状の実績を踏まえ、目標値の引き上げは適当ではないと判断した。一方、改正資源有効利用促進法や再資源化事業等の高度化に関する法律による回収ルートの多様化を受け、これらの制度で回収された小型家電も、重複計上を避けた上で合算する。2029年度を目標年度とし、2030年度を目途に制度を再評価する方針。
【参照ページ】産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 資源循環経済小委員会 小型家電リサイクルワーキンググループ 報告書
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