
企業の自然関連対応が、方針策定や情報開示から、場所と数値を特定した目標設定へと移行し始めている。その中核的な枠組みの一つが、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)が開発する自然(ネイチャー)分野の目標設定手法「SBTs for Nature(ネイチャーSBT)」だ。
ネイチャーSBTは、企業活動が自然に与える圧力を、地域の生態系の状態や環境上の閾値を踏まえて削減するための目標設定手法である。気候変動分野のSBTでは、世界共通の気温上昇目標との整合性を基に温室効果ガス排出削減量を設定する。一方、自然の状態は流域、生態系、原材料生産地毎に異なるため、企業には「どの場所で、自然に与えるどの圧力を、いつまでに、どれだけ減らすか」を特定することが求められる。
【参考】【環境】SBTN、自然資本の科学的根拠に基づく目標設定ルールを策定 〜TNFDと両輪の存在〜(2023年4月16日)
現時点では、ネイチャーSBTを実際に設定し、第三者検証を経て公開している企業は5社と極めて少ない。本稿では、この5社を中心に、検証済みの進捗を開示した14社の構成や初期パイロットの結果も踏まえ、検証・公開まで到達した企業の共通項を分析する。
ネイチャーSBTの仕組み
SBTNのプロセスは、「分析・評価(Assess)」「理解・優先順位づけ(Interpret & Prioritize)」「計測・設定・開示(Measure, Set & Disclose)」の3ステップでネイチャーSBTの設定と開示を行い、「行動(Act)」「追跡(Track)」と併せた計5つのステップを通じて、目標の設定、実行、進捗確認及び継続的改善を進める。
目標設定に関しては、例えば分析・評価では、自社の直接操業と上流バリューチェーンを対象に、土地利用、水利用、水質汚染、天然資源利用等の自然への圧力を評価。理解・優先順位づけでは、自然への影響の大きさと、地域の自然の状態を組み合わせ、目標設定や行動を優先すべき場所と事業活動を絞り込む。計測・設定・開示では、優先地域について、科学的根拠や地域の自然状態を踏まえ、必要な圧力削減、自然生態系転換の回避、地域協働等を、期限を伴う目標に落とし込む。
目標設定手法が整備されている自然領域は、「淡水」「土地」「海洋」の3つ。淡水では、流域毎の水使用量と水質汚染に関する目標を設定する。土地では、自然生態系の転換ゼロ、農地フットプリント削減、ランドスケープ・エンゲージメントの3種類の目標手法があり、企業のマテリアリティと業種適格性に応じ、必要な目標を設定する。海洋では、天然漁業及び養殖を対象に、過剰利用の回避・削減、構造的生息地の保護、絶滅危惧種等へのリスク削減の3種類の目標手法が用意されている。
SBTNが掲げるネイチャーに関連するテーマは本来、「淡水」「土地」「海洋」に、「生物多様性」「気候変動」を加えた5つだが、生物多様性については、独立した単一の目標を設定するのではなく、種の絶滅リスクや生態系の健全性等を考慮し、優先地域を選定する等の形で、各目標に横断的に組み込まれている。また、気候目標については、SBTN独自の目標設定手法ではなく、温室効果ガス排出がマテリアルな場合に、科学的根拠に基づく削減目標イニシアチブ(SBTi)を通じて設定することを求めている。
また、ネイチャーSBTについて「検証を受けた」「科学的根拠に基づく自然目標を設定した」と対外的に主張するには、SBTNの独立検証機関を担うAccountability Acceleratorによる検証を受け、定められた範囲と表現で公開することが求められる。主張できる内容は、検証を受けた組織境界、バリューチェーン、自然領域、対象場所に限定されることにも留意しなければならない。
先行企業の選定とSBTNでの位置づけ
SBTNは、目標承認企業だけでなく、目標設定に向けた途中段階の企業もデータベース「ターゲット・トラッカー」で公開している。2026年7月31日時点では、ステップ1の分析・評価及びステップ2の理解・優先順位付けまでの検証済み成果を公開している企業が9社、ステップ3まで進み承認済み目標を公開している企業が5社。非公開までも含めると目標承認を受けた企業は11社あり、目標数の単位では50件超が承認されている。
承認済み目標を公開したのは、ケリング、グラクソ・スミスクライン(GSK)、ホルシム、H&M、ウニベイル・ロダムコ・ウェストフィールド(URW)。ステップ1と2の検証済み成果を公開したのは、キリンホールディングス、ノボノルディスク、エルメス・インターナショナル、ソデクソ、Orkla Foods傘下のスウェーデン事業会社Orkla Foods Sverige AB、Séché Environnement、Arla Foods、KLS PurePrint、Limak Çimento。
14社を分析すると、現時点の先行企業には4つの特徴が浮かび上がる。
特徴1:制度形成段階から参画した欧州企業が目標公開で先行
ターゲット・トラッカー掲載14社の本社所在地は、フランス5社、デンマーク3社、日本、スウェーデン、スイス、英国、ノルウェー、トルコが各1社。承認済み目標を公開した5社は全て欧州企業となっている。
一方、キリンホールディングスが2026年7月、APAC地域に本社を置く企業として初めてステップ1と2の検証済み成果を公開し、地域的な広がりも始まった。日本はTNFDに基づく開示を表明した企業・金融機関が世界でも特に多いが、ネイチャーSBTでは、ようやく検証済みの分析・優先順位付けを公開する段階に入った。
公開5社のうち、ケリング、GSK、ホルシム、H&Mの4社は、SBTNが2023年から2024年に実施した初期企業パイロットの参加企業だった。正式な検証サービスが一般企業向けに整備される前から、ステップ1から3までの手法を試行し、実務上の課題をSBTNと検証機関へフィードバックしていた。
【参考】【国際】SBTN、SBTs for Natureのメソドロジー発表。まず17社が実証。2024年から全面展開(2023年5月24日)
特にケリングは、2020年の発足当初からSBTNの企業エンゲージメントプログラムに参加し、自然への影響を金額換算する環境損益計算書(EP&L)や、同年に策定した生物多様性戦略を基盤に初期パイロットへ進んだ。つまり、パイロットを契機に取り組みをゼロから開始したのではなく、それ以前から蓄積してきた自然影響評価、原材料データ、専門人材、社内体制をSBTNの手法に接続した形だ。
公開企業の多くは、手法完成後にゼロから対応を始めたのではない。制度形成の過程で方法論を試行し、必要なデータや社内資源、検証上の論点を把握したことが、正式な検証・公開への移行を早めたと考えられる。早期参画そのものより、試行を通じて社内実装能力を蓄積できた点が先行要因となっている。
特徴2:自然影響を流域・原材料生産地まで追跡できる
ネイチャーSBTでは、「水を使用している」「農産物を調達している」という把握だけでは足りない。取水流域、原材料の生産地域、土地転換が発生する可能性のある場所を特定し、その場所の自然状態と企業活動による圧力を重ね合わせる必要がある。
例えばケリングは、イタリアのアルノ川流域にある自社及びサプライヤーの皮革加工拠点を特定し、直接操業と上流の双方で取水量を2030年までに21%削減する目標を設定した。土地分野では、モンゴルのカシミア、南アフリカの羊毛・皮革、インドの綿花等、原材料と生産地域を結び付けている。H&Mも、綿、羊毛、皮革、木材由来繊維等の対象コモディティを明示し、インド及び南アフリカの生産地域でランドスケープ・エンゲージメント目標を設定した。
ホルシムは、事業所毎の取水量データや、世界資源研究所(WRI)の水リスク評価ツール「Aqueduct」等を用いて水リスクの高い地域を選定し、統合生物多様性評価ツール(IBAT)で生物多様性上重要な採掘拠点を把握。現在公開している淡水目標も、ベルギー、ギリシャ、スペイン、メキシコの4流域に分けて設定している。
ウニベイル・ロダムコ・ウェストフィールド(URW)も、スペインのTer Llobregat流域にある直接操業を対象とする等、事業拠点と流域を結び付けて目標を設定。グラクソ・スミスクライン(GSK)も、インドのUpper Godavari流域にある直接操業を対象に、2030年までに淡水純取水量を100%削減するとしている。
これらの事例では、企業単位の総取水量や原材料調達量だけでなく、どの流域、どの生産地域、どのバリューチェーン段階で圧力が発生しているかを特定している。先行企業に共通するのは、自然への依存度が高いことだけでなく、主要な拠点や原材料について、自然への圧力を場所別に把握できることだ。
反対に、初期パイロットでは、上流原材料の採取地・生産地について、ほとんど、あるいは全くトレーサビリティを確保できないケースが確認された。そのため企業は、ステップ3で目標設定に必要な情報を確保できる流域や原材料に対象を絞らざるを得なかった。直接操業では拠点の位置と水使用量を把握できても、原材料が集荷・加工段階で混合される上流では、生産地域まで遡ることが難しい。場所別データの有無が、自然影響の評価だけでなく、目標設定へ進める範囲を左右している。
特徴3:取水量や土地転換等、測定可能な圧力から目標化
先行企業は、自然全体を一つの指標で測定しようとするのではなく、比較的測定可能性の高い圧力から目標化している。公開されている淡水目標は、ホルシムの4流域と、ケリング、GSK、URWの各1流域の合計7件で、いずれも取水量に関するもの。窒素やリンによる水質汚染については、公開された具体的目標が確認できない。
初期パイロットでは71件の目標が提出され、48件が承認された。承認率は淡水の取水量目標が90%だったのに対し、水質汚染目標は40%。土地では、自然生態系の転換ゼロが88%、農地フットプリント削減が86%、ランドスケープ・エンゲージメントが52%だった。
取水量は直接操業であればメーターや請求記録等から把握しやすく、流域の水利用可能量を推計する既存モデルも利用できる。一方、水質目標では、拠点毎の窒素・リン排出量だけでなく、流域で許容される汚染負荷を把握する必要がある。ケリングも、流域レベルの栄養塩データが限られていることを水質目標設定の課題に挙げている。
ランドスケープ・エンゲージメントも、対象面積や削減率の計算だけでは完結しない。地域の生産者、住民、行政、NGO等との協働体制を構築し、生態学的条件と社会的条件の双方を改善する必要がある。目標設定の難易度は、数値計算の複雑さだけでなく、利用可能な地域データと既存の協働関係にも左右される。
従って、現時点では、取水量、自然生態系の転換、農地面積等、データと算定手法が比較的整った圧力から実装が進んでいる。これは水質汚染や生態系の状態改善が重要でないという意味ではなく、企業データと方法論の成熟度が、目標の設定可能性を左右していることを示している。
特徴4:限定された対象から段階的に検証・公開
公開5社は、企業全体について包括的な自然目標の承認を得たわけではない。ホルシムとURWは淡水目標、H&Mは土地目標のみを公開。ケリングとGSKは淡水と土地の双方で公開しているが、淡水目標はそれぞれ特定の1流域に限定されている。複数の場所別・圧力別目標のうち、検証を通過した範囲を公開していることになる。
14社のうち9社は、定量目標の設定前に、ステップ1と2の影響評価と優先順位付けを独立したマイルストーンとして検証・公開した。これは目標承認と同義ではないが、対象とした組織範囲や自然領域について、重要な圧力と優先場所を科学的手法で特定したことを示す。最初から淡水、土地、海洋の目標を全て揃えるのではなく、現在到達した段階を外部に示しながら次へ進む方法が制度化されつつある。
この段階的な進め方は、2025年にSBTNが導入した「Accelerated Pathways」によって制度上も明確化された。企業は高水準セクター・スクリーニング後、特定の事業単位、自然領域、直接操業または上流という範囲を選び、詳細評価と目標設定を始められる。作業を実行可能な単位へ分解するもので、目標水準を引き下げる仕組みではなく、その後の対象拡張を前提としている。
但し、限定範囲の検証を企業全体の成果として主張することはできない。SBTNの主張・開示ガイダンスでは、全てのマテリアルな自然領域について目標バウンダリー全体をカバーして初めて、ネイチャーSBTの要件を包括的に満たしたと主張できる。それ以前は、検証を受けた事業単位、自然領域、バリューチェーン段階、流域等に限定した中間的な主張となる。
2026年に浮上した制度上の論点
2026年の制度上の焦点は、段階的な着手を可能にしながら、限定された検証範囲を企業全体の成果と誤認させない仕組みを確立できるかにある。今後は、検証済み範囲だけでなく、全社の自然影響に対するカバー率、未対応の自然領域や事業部門、対象拡張の工程を併せて開示することが重要になる。投資家や取引先も、ターゲット・トラッカーに企業名があるかだけでなく、検証を受けたステップ、自然領域、場所、直接操業・上流の別を確認する必要がある。
また、現行の企業分布や公開目標が、手法の整備順序に大きく左右されていることも指摘されている。2026年7月時点で公開されている具体的目標は淡水と土地のみだが、これは企業の海洋影響が小さいためではない。海洋目標は2025年3月に公開され、同年秋には、ウェイトローズ、Orkla Foods Sverige、Seatopia等が、水産物バリューチェーンを対象とする最初の目標設定・検証パイロットに参加した。2026年7月時点では、海洋目標の一般向け検証サービスはまだ開始されていない。
淡水の現行の初版ガイダンスは、表流水及び地下水からの取水と、窒素・リンによる水質汚染を対象としている。2026年に企業パイロットが進む第2版案では、持続可能でない地下水利用を世界的に評価・目標設定する手法と、農薬を中心とする有害化学物質汚染の手法を追加し、対象範囲を拡大する。
【参考】【国際】SBTN、淡水域目標設定ガイダンス第2版に向けパイロット企業8社選定。アディダス、ダノン他(2026年6月29日)
目標承認後の実装制度も整備途上にある。ステップ4には、自然への圧力の回避・削減、再生・回復、システム変革に向けた初期的な行動選択肢が用意されているが、実行可能性の評価や行動計画の策定を支える追加資料は2026年中の公表を予定している。ステップ5についても、影響評価やベースライン測定に関する指標は既存ガイダンスに含まれる一方、目標実行中の詳細なMRV(測定・報告・検証)ガイダンスは開発中だ。
ネイチャーSBTの価値は、目標が調達基準、設備投資、製品設計、サプライヤーとの契約、地域協働へ反映されて初めて生まれる。特にランドスケープ・エンゲージメントでは、企業単独の活動量ではなく、地域全体の生態学的・社会的条件の改善が問われる。今後は承認企業数だけでなく、圧力が実際に減少し、地域の自然状態が改善したかが評価の中心となる。
日本企業への示唆
日本企業にとって重要なのは、自然保全活動の量を増やすことだけではなく、企業全体の自然への圧力を評価し、なぜ特定の流域や原材料生産地を優先するのかを科学的に説明できる体制を整えることだ。「森林を何ha整備したか」「水を何m3削減したか」という活動実績だけでは、企業全体の自然影響の中で、その場所と施策を優先する根拠を示したことにはならない。
日本企業による対応は、実証から第三者検証を伴う公開へ進み始めた。キリンホールディングスは2026年7月、SBTNのステップ1と2について第三者検証を受け、APAC地域に本社を置く企業として初めて、ターゲット・トラッカーで検証済み成果を公開した。企業全体の直接操業と上流サプライチェーンを対象に、淡水と土地に関する自然への圧力を評価し、地域の自然状態と組み合わせて、優先的に対応すべき流域や原材料生産地を特定した。
同社は、スリランカの紅茶生産地や、水ストレスの高いオーストラリア、米国の醸造拠点等で、従来から水利用や土地、生物多様性に関する施策を進めてきた。今回の検証は、これらの施策そのものをネイチャーSBTとして承認したものではなく、企業全体の自然影響を分析した上で、既存の重点地域が科学的な優先順位とも整合することを確認した段階に当たる。
キリン以前にも、日本企業によるSBTN手法の実証は進められていた。サントリーホールディングスは、2023年から2024年の初期企業パイロットに日本企業として唯一参加。ステップ1では直接操業の100%と、調達原材料全体の68%に相当する高インパクト・コモディティの100%を評価した。直接操業の水使用量には主に一次データを用いる一方、一部拠点の水質汚染等には二次データを用いて推計している。
【参考】【国際】SBTN、SBTs for Natureパイロット企業17社のインサイト紹介。6月までに目標承認へ(2024年1月23日)
同社は、熊本地域等の直接操業、国内の緑茶、ブラジルのコーヒー等について優先地域や目標候補を検討した。一方、上流原材料の生産場所を特定するトレーサビリティ、地域の状況を反映した水文モデル、ローカルモデルを構築するための費用等を実装上の課題として挙げている。
キリンの公開によって、日本企業によるSBTN対応は、手法の実証から、第三者検証を受けた分析・優先順位付けを公開し、具体的な目標設定へ進めるかが問われる段階へ移った。キリンとサントリーの事例は、既存の自然関連施策、TNFD分析、調達データをSBTNの方法論に接続できる一方、上流のトレーサビリティや場所別データの整備が、目標設定に向けた重要な条件になることを示している。
日本企業にとって現実的な入口は、最初から全社の淡水、土地、海洋目標を揃えることではない。まず、既存のTNFD分析や原材料調達データを活用し、ステップ1で自然への圧力を評価し、ステップ2で優先地域を特定する。その上で、直接操業の取水量、主要農産物や森林資源、データを確保できる事業部門等から検証を受け、ステップ3の場所別・圧力別目標へ進むことが現実的となる。
但し、データを取得しやすい範囲だけを目標化し、重大な自然影響を先送りしてはならない。最初の目標は限定的であっても、未対応の重要な自然領域、原材料、事業部門を特定し、対象を拡張する工程を示す必要がある。SBTNへの対応は、自然保全施策を新たに一つ追加する取り組みではなく、調達、生産、設備投資、データ管理、地域連携を横断して、既存の自然戦略を検証可能な形へ再構築する作業となる。
今後の焦点
普及に向けた焦点は、科学的厳格性を維持しながら、企業が入手可能なデータで着手できる仕組みを整えられるかにある。承認取得を左右するのは、企業規模や自然保全活動の量だけではない。自然影響を場所に結び付けるトレーサビリティ、部門横断のデータ管理、段階的な目標設定を受け入れる経営判断、外部専門家や地域関係者との協働が重要となる。
欧州では、自然関連情報開示や生物多様性戦略に加え、企業がSBTNの手法を実務に落とし込むための政策、NGO、専門家による支援基盤が形成されつつある。
例えばフランスでは、企業向け生物多様性プログラム「Entreprises engagées pour la nature(EEN)」を展開しており、企業の生物多様性への影響・依存の分析、重要課題の特定、行動計画の策定、進捗報告という一連の取り組みを、仏生物多様性庁(OFB)が審査し、政府が認定・可視化する仕組みを整備している。2026年5月には、SBTNをEEN初の「同等性経路」として認定。SBTNのステップ1と2について第三者検証を受け、2年以内に目標を設定することを約束した企業は、EENの初期段階の認定対象となり、その後、目標設定と検証を通じて継続的改善を進める経路が用意される。
英国では2026年3月、国連グローバル・コンパクト(UNGC)英国ネットワークが、環境コンサルティング大手Ramboll UKと共同で、6カ月間の「Nature Ambition Accelerator」を開始。同プログラムでは、ステップ1、2に加え、淡水及び土地の目標設定、行動計画、進捗追跡までを扱うワークショップや個別相談等を提供している。類似した取り組みとしてドイツでも2026年6月、環境財団Global Nature Fund(GNF)と、WWFドイツの企業向けプログラム「One Planet Business」が共同で「SBTN Accelerator」を展開している。
こうした支援制度やAccelerated Pathwaysは2026年以降、検証申請に進む企業の裾野を広げる可能性がある。一方、対象範囲を狭めて着手しやすくなるほど、企業全体の自然影響とのギャップを明示する必要性も高まることに留意しなければならない。
ネイチャーSBTは、企業全体を一度に「ネイチャーポジティブ」と認定する制度ではない。企業が自然への影響を場所別・圧力別に分解し、科学的に必要な目標を一つずつ設定し、実行と追跡へ繋げるための仕組みである。その実効性は、承認企業数だけでなく、最初の限定的な目標から、企業の全ての重要な自然影響へ対象を拡張できるかによって評価されることになる。
【参照ページ】Our target-setting process
【参照ページ】Target tracker
【参照ページ】APAC初、自然資本取り組みをSBTNのターゲットトラッカーで公表
【参照ページ】TNFD Adopters
【参照ページ】SBTN Pilot: Kering
【参照ページ】SBTN Pilot: Holcim
【参照ページ】SBTN Validation Pilot Summary Report
【参照ページ】Accelerated Pathways
【参照ページ】SBTN Claims and Disclosure Guidance
【参照ページ】Measure, Set, & Disclose Ocean targets
【参照ページ】At Climate Week NYC, Leading Companies Step Up for Nature
【参照ページ】Freshwater V2 Public Consultation
【参照ページ】Step 4 Act
【参照ページ】Step 5 Track
【参照ページ】SBTN Pilot: Suntory
【参照ページ】France recognizes SBTN as a route for credible corporate nature action
【参照ページ】May 2026 Newsletter
【参照ページ】Nature Ambition Accelerator
【参照ページ】Anchoring nature strategically: with the SBTN Accelerator
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菊池尚人
チーフコンサルタント 兼 事業開発室長
2016年新卒から10年コンサルティング業界に従事。2019年より現職。
大手企業・金融機関向けESG戦略・投資アドバイザリーのリードに加え、 サステナビリティ経営に関する研修講師、Sustainable Japan編集も務める。