EU理事会議長国のフィンランドは12月17日、租税に非協力的な「租税回避地ブラックリスト」8ヵ国・地域に対し、2020年末までに各加盟国が経済制裁を科す政策が、EUの全加盟国で承認されたと発表した。同ブラックリストは、租税回避・税源移譲(BEPS)対策のため2017年に作成。2年以上をかけ、経済制裁の是非や手法が検討されてきた。2020年1月に発効する。
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EU理事会に対し、2017年に報告されたブラックリストでは、世界約60ヵ国が候補として挙げられていたが、その後、EU理事会の会合を重ねる毎に削減され、現在は、オマーン、フィジー、バヌアツ、サモア、トリニダード・トバゴ、米領サモア、米領グアム、米領ヴァージン諸島、8ヵ国・地域。当初は、EU加盟国も複数リスト入りし、国際通貨基金(IMF)も9月、オランダ、ルクセンブルク、アイルランド、香港、シンガポール、スイス、英国海外領土も多数、IMF独自のブラックリストに指定したが、最終的にEUのリストからは除外された。
EU理事会は、11月に経済制裁ガイダンスをまとめた文書を発表し、12月のEU理事会で採択。その後、各加盟国での承認手続きに入り、12月17日までに全加盟国が承認した。経済制裁の内容は、全部で4つで、全加盟国は2021年1月1日からいずれか一つ以上の制裁を行うことが義務化された。
- ブラックリスト国・地域の法人または個人に対し支払われた費用による所得控除を拒否
- 租税回避防止指令(ATAD)の下、ブラックリスト国・地域での居住個人や恒久的施設を置く法人の所得に課税する
- ブラックリスト国・地域で受領した利息、ロイヤリティ、サービス料、報酬等について、高税率で源泉徴収を行う
- ブラックリスト国・地域で受領した配当やその他の利益に対する税控除を、拒否または制限する
今回の規制では、法人税率0%や知的財産権収入への免税措置は、リスト入りの要件とはなっていない。しかし、租税回避や脱税の定義は、2020年1月以降に見直しの対象となるとした。また、各加盟国が、今回の決定事項以上の経済制裁を科す権利や、独自のブラックリストを作成する権利も認められた。EU理事会は、2021年末までに経済制裁の状況をレビューし、2022年にEU理事会に設置されている欧州行動規範グループ(CCG)は、追加制裁の要否を評価するとした。
閣僚会議の報告書によると、EU加盟国は2021年1月1日より最低1本の制裁を行う必要がある。さらに、各国独自の追加制裁を実施する権利や独自のブラックリストを保有する権利も認められた。2021年末までに制裁が課された後、2022年に欧州行動規範グループ(CCG)は、追加制裁の要否を検討する。
【規制内容】FISC 444 ECOFIN 1005
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